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雪国の冬を過ごして

 1ヶ月程前から、仕事で北海道の方に来ています。

 北海道は、以前の職でも何日間か出張で、ちょくちょくは訪れていました。しかし、ひと月以上も、しかも真冬の時を過ごすなんていうのは初めてでした。

 寒さに関しては、冬にも来たことはあったので、知っていましたし、それなりの準備もしていきました。しかし、寒さ以上に想像を絶するのは、雪との闘いでした。

●除雪から始まる1日

 東京で雪と言うと、何となく冬を演出するものとして、どちらかというと良い印象なのではないでしょうか。もちろん、道が滑るとか、解け始めるとぐちゃぐちゃになるというのもありますが、雪かきだってちょっと脇に寄せれば済むくらいです。

 しかし、雪国はまず積雪量が全然違います。今年は特に豪雪に見舞われた地域が多く、ニュースにもなりましたが、1mも積もっていると、まず外に出られませんし、車も出せません。

 そのため、雪が降る季節は、「除雪」から1日が始まります。

 除雪は、雪かきとは違います。雪を寄せるだけではだめで、ちゃんと堆雪場や雪捨場まで持っていかなければなりません。公道に雪を出すと、人や車が通れなくなるので、当然怒られます。

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 上の写真は、朝の会社前の除雪の様子です。スコップなんかでは追い付かず、「ママさんダンプ」なるものが活躍します。また、冬季はエンジン式の除雪機をレンタルするところもあります。

 駐車場が広ければ、このように隅の方に山を作れば済むのですが、山にする場所が無い場合は、近所の公園や空き地に排雪するしかありません。冬の北海道を知らない人は、

「北海道は道も駐車場も広い」

と言いますが、冬は雪でいきなり狭くなります。

●重機やダンプが行き交う

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 公道は、基本的に道や市が業者に委託して除排雪を行います。冬になると、ロータリ式の除雪車が街中を走るようになります。

 そのため、雪が降り続くと、連日道路工事をしているような状態が続きます。特に、夜にかけて雪が降った日は、朝までに除雪を終えるために深夜や早朝に作業することもあります。

 また、住宅街の中の生活道路は市や町が直接行うのではなく、自治会による除排雪を支援するという形で行われます。そのため、自治会から業者を頼むこともあれば、共同で重機等を持つところもあります。

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 そのため。上の写真のような除雪用のホイルローダや、排雪用のダンプを街中でよく見かけます。これは東京では見ない風景です。

●歩くだけで体力を奪われる

 それでも広い道路や生活道路は、このように頻繁に除雪が行われるのですが、私は仕事で発電所を訪れます。そこは周囲に住宅がほどんど無いうえ、構内になると私有地なので、頻繁には除雪が入りません。

 そのような場所では、今年は特に雪が多かったため、積雪高が2m以上になるところもあります。そこで問題になるのは、点検作業です。

 まず、設備のある場所まで歩いていくのが大変です。

「雪の上なら、スキーを履いて滑ればいい」

と思うかもしれません。しかし、スキー場のようにはいきません。

 スキー場の雪は、下の写真のように、予め圧雪車で下を平らに均してあるのです。

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 ただ降っただけの雪は、上に乗るとそのまま沈んでしまい、前にも進めません。そのため、雪の上を歩く際には「スノーシュー」、古い言い方だと「かんじき」というものを長靴の上に履き、沈まないようにするのです。

 さらに、荷物を担ぐと、重みで雪に沈んでしまいますので、ソリに乗せて運びます。これはこれで楽そうに見えるかもしれませんが、起伏のある場所でソリを引くのは、慣れていないと一苦労です。

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●仕事に取り掛かれるようにするまでが一仕事

 設備の場所までたどり着いたら、さあ仕事と言うわけにはいきません。雪で埋まっているので、まずは周囲の除雪から始めます。

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 設備を傷つけないように、重機や除雪機は使わず、スコップで丁寧に掘っていきます。

 しかし、いくら雪とはいえ、それなりの重みはあります。下からすくった雪を、自分の背丈ほどの高さまで持ち上げて放り投げるのは、かなり体力が要ります。

 上の写真の日、外の気温は-5℃くらいで吹雪いていました。しかし、降り積もった雪の上を歩き、スコップで雪を掘っていると、額から汗が垂れてくる程暑くなります。


 この記事を書いている現在は、だいぶ雪も融け、土や芝が見えるようになり、歩きやすくもなってきました。以前、

「北海道の春の色は黒」

と聞いたことがあるのですが、その意味が実感できました。雪の白に覆われていた地面の色が、土やアスファルトの黒に変わってくるのです。

 2月の上旬からという、冬も終わりかけのほんの1ヶ月くらいのことでしたが、雪国での仕事の過酷さを経験出来るものとなりました。

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