ふと手に取る一冊の数行(アレキシス・カレル『改訂新版 人間 この未知なるもの』渡部昇一 訳 三笠書房)

第1章での数行。

もはや、科学技術によって引き起こされた環境の変化が、私たちに深い影響を及ぼしたことは明らかである。その結果は思いもかけないものであった。私たちの住居、生活様式、食事、教育、知的環境は変わったが、当然期待できるはずのものとは、あまりにもかけ離れていた。どうして、こんな逆説的な結果がもたらされたのだろうか?
この問いに対しては、簡単に答えることができよう。現代文明は、人間の本質に合っていないから、困ったことになっているのだと。現代文明は、私たちのことを何も知らずに打ち立てられてしまったのである。それは科学的な発見の気まぐれであったり、私たちの持っている欲望、幻影、理論、要求から生まれたものである。私たちが努力して作ったものではあるが、真の人間の姿に合っていないのだ。
物理学、天文学、化学、機械学などの素晴らしい進歩に比べて、人間に関する知識がずっと遅れているのは、先人に時間的余裕がなかったのと、人間が複雑でありすぎるのと、私たちの心がそれに向くようにできていないせいなのである。

私はどきどき、なぜわざわざ哲学や人間について学んでいるんだろう、と、疑問に思うことがありました。

まだ序盤ですが、この本を久しぶりに読んでみて気づかされたのは、

科学の発展というのは、科学者たちの発想や偶然から生まれたもので、人間の幸福へのベクトルとは違う方向に延び、科学に比べ、人の幸福については研究が少ない、ということ。

「こんなに豊かで便利な社会で、なぜ幸福ではないのか?」


それらは、同じものではない、から。

哲学を学ぼうとすることは、とても自然なことに思えるようになりました。

(以前、読んだはずなの本なのにどうしてこんな大本の部分を忘れていたのか疑問です。手にとるタイミングによって気づかされるものが違うのかも知れません)

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