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<起業家だらけの卒業生> Vol.1 「今やりたい」を大切に。株式会社うぃるこ 取締役 鬼澤 知裕さん

ケイスリーの卒業生をインタビューする企画、「起業家だらけの卒業生」。今回は、その第一弾として、株式会社うぃるこの取締役を務める鬼澤知裕(おにさわともひろ)さんにインタビューをさせていただきました。

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鬼澤さんは、2018年6月から約1年間、ケイスリーでコンサルタントとして活躍しました。インタビューでは、取締役を務めるうぃるこの「野生動物と人間の共存について」や、「直感に従って生きる」ことについて、語ってくれました。プロフィールだけでは語り切れない鬼澤さんの魅力、卒業生の活躍についてご紹介していきます。

鬼澤知裕さんプロフィール
大学在学中に代表取締役の山本麻希氏とともに獣害団体(現NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ)を立ち上げ、会計税務カウンセルとして従事。大学卒業後に公認会計士試験に合格。
2012年、新日本有限責任監査法人に入社後、資産運用業・投資ファンドの会計監査、資産運用会社のディスクロージャー支援業務を担当。
2018年、ケイスリー株式会社にて社会的インパクト評価やソーシャルインパクトボンド組成業務に従事。
同年、山本麻希らと株式会社うぃるこを設立し、ビジネス/ファイナンスによる社会課題解決の可能性を日々模索している。
また、フリーランスの公認会計士としても活動中。

うぃるこウェブサイトより

ー 鬼澤さん、今日はよろしくお願いします。まず、株式会社うぃるこについて、とても面白い会社ですね。どのようなことに取り組んでいるか、教えていただけますか?

うぃるこでは、「野生鳥獣害コンサルティング」を行っています。
人間と動物の軋轢をなくす仕事です。野生動物による害と言っても、色々あるんです。農業被害だけじゃなく、交通事故などの課題もあります。このような課題を解決する仕事です。
具体的な解決の方法としては現状、自治体の支援をしており、主に農作物被害支援が中心となっています。いわゆる被害対策として使われる電気柵の取り扱いもしますが、維持管理、指導や調査など、ハード面、ソフト面含めて支援しています。最近では、地域で鳥獣の捕獲を担う人を育成するニーズもあります。

ー もともと鬼澤さんは、公認会計士の資格も持っていて、大手監査法人で働いていましたよね?なぜ、鳥獣被害に情熱を注ぐようになったのですか?

実は、大学三~四年生のころがきっかけなんです。公認会計士の資格の勉強も始めていた頃、うぃるこの代表の山本 麻希さんを友だちから紹介されました。任意団体を始めるので、経理の出来る人を探しているということだったんです。それで、まずは経理のボランティアを引き受けました。
大学の周りは就活が終わって遊び始めている中、自分は会計士の勉強していたので、社会に早く還元していきたいという想いもあったのかもしれません。無償でも嬉しいなと思っていましたし、最初は、やってみようっていう単純な気持ちで引き受けました。
その後会計士の資格を取って、監査法人に就職した後も土日や夜の時間を使って、ずっとボランティアをしていました。そんなに大変と言う感じはありませんでした。気づいたら、5,6年続けていましたね。

ー それでその後、今の株式会社の形になったのはどういった経緯があったのでしょう?取締役としてやっていこう!というのには何かきっかけがあったのですか?

ボランティアをして6年くらい経った時にNPOを株式会社にするという話になりました。「株式会社にしませんか」とVCの方から言われ、その際に、CFOとして入りませんかとお声がけいただいたんです。
社会課題解決を目的にしている会社だから、普通のCFOじゃないよなぁ、面白そうだなぁと想いつつ、色々とネットで調べていたら、社会的インパクト評価というものに出会ったんですね。

ー おぉ、ここで社会的インパクト評価に出会うのですね。ケイスリーを知ったのではなく、先に社会的インパクト評価だったのですね。

はい。その後で、ケイスリーさんを知りました。多分その頃、代表の幸地さんが色々なイベントに登壇されていたりして、ケイスリーに社会的インパクト評価の伴走支援をお願いしてみようかと、まずは話を聞きに行ってみました。それで、結局会社に評価をお願いするのではなく、「自分で働いてみたほうが早いのでは?」と思い至り、ケイスリーで働けないかと、幸地さんに直談判するに至りました(笑)

ー そうか、それは知りませんでした。本当は仕事として依頼しようかと思って、結果的に就職してしまったと(笑)。行動力がすばらしいですね!

自分が学んで確実にうぃるこに持ち込む、ということができるとよいなぁと思いました。後日談として、ケイスリーを卒業後、実際にうぃるこのインパクトレポートのレビューを頂くことができています。

ー そうですよね。うぃることのインパクトレポートのレビュー、楽しかったです(笑)。それで、ケイスリーでは社会的インパクト評価を含めて様々な案件に携わっていったと思うのですが、特に心に残っていることはありますか?

そうですね。まずは、社会的インパクト評価などのテクニカルなことを学んだというのはあります。同時に、一番学びになったのは、評価は実は自由だ、ということですね。評価学という分野はありますが、確立された手法があるわけではなく、みんな結構悩みながら、あぁでもないこうでもないと壁にぶち当たっている姿を見て、評価はまだまだ試行錯誤でやっているというところが最も学びになりました。インパクト志向というコアはあるけれど、それ以外は自由だ!という印象でした。

ー たしかに、評価学といいつつも、細かい手法が確立されていてそれに準拠しなければならないというよりも、まだまだハンドメイドで進めているところがあったりもします。具体的な案件などで、特に印象深いものはありますか?

案件としては、中央省庁のSIBに関する提案でしょうか。しっかりスキームを考えて提案した、というのが今でも色々思い出深いです。特に、事業者との調整や考え方が勉強になりました。再犯防止など新たな領域について、本をたくさん読んで勉強したのも覚えていますね。新たな分野のことを知れる、というのは楽しかったです。
それから、軽井沢合宿はとても楽しかったです(笑)。コロナ前でしたし、みんなでクルマに乗って行ったのは学生ノリがあって。大人になっても楽しく仕事ができるんだ、遊びと一緒に仕事ができるのか、というのは新鮮でとても楽しかったですね。

ー はい、あれは楽しかったです(笑)。みんなでバーベキューしたりですね。写真が残っていないのが惜しい……

それから、「組織とは」ということについても、ケイスリーに入ってすごく考えました。メンバーはみなさん専門性も持っていて、エッジの効いた面白い組織だったなぁと思います。それから、他人の価値観を尊重する文化があって、度量の広さを感じていましたね。

ー おぉ、それは嬉しいですね。ケイスリーのValueには、Impact First, Be the Change, Respectの三つがありますが、その内のRespectに当たる部分だと思います。鬼澤さんが意識している「Respect」って、今でも何かありますか?

今ですと、言葉にして説明することを大切にしています。うぃるこに関わっている人は、若い方も多く、20代が半分くらいを占めているんです。新卒の方もいますので、暗黙の了解というのは、なしにしようとしていますね。なんというか、空気読めよ、というのは馴染まない世代と言うんでしょうか。しっかりお願いして、しっかり説明することの大切さを実感しています。それをやらないと、パフォーマンスが出ない部分もある。本当は世代なんて関係ないんですよね。きっちり言葉にして伝えなければいけないことは多い。会計士同志だと、言葉にしなくても伝わる部分があったりもしますが、専門領域含めて多様な方が関わっているので、細かい話も含めて、丁寧にしています。

ー たしかに、改めて言葉にするってとても大切ですよね。社会的インパクト評価も実は、きちんと言葉にする、伝える、ということとつながると思います。メンバー含めて、うぃるこも成長している中で、色々な動きがあると思うのですが、先日、1,200万円を超える株式型クラウドファンディングを成功されましたよね。おめでとうございます!あれもまさに、共感型のお金の流れだなぁと感じたのですが、背景などについて、教えてもらえますか?

ありがとうございます。資本を入れたいなぁと思っている中で、どういう投資家がよいのだろうかと考えていました。エンジェル投資家やVCの方にプレゼンもしたのですが、「それだったら株式型クラウドファンディングとか合うんじゃない?」と言われて(暗に断られて…w)、たしかにそうかも、と思って株式型のクラファンを調べていったんですよね。逆に言えば、普通の機関投資家よりも、より応援してくれる、共感してくれる株主がよいなと思ったんです。結果的に、クラウドファンディングを成功することができました。その時、募集ページにもインパクトレポートの話も書いていたので、社会的インパクト評価の影響があったんじゃないかと思っているんです。うぃるこのユニーク性はアカデミック性、インパクトレポートを出していることと、(難易度が高い)鳥害に取り組んでいることだと考えています。うぃるこの独自性として、今後も社会的インパクト評価はやり続けていこうと思っています。

ー それは、ケイスリーでの経験が直接に活きているところで嬉しく思います。鳥獣害対策の中でImpact Firstを担っていく鬼澤さんに、これからも期待ですね。うぃるこの取り組みを超えて、鬼澤さんが考えるImpactって、他にどんなものがあるでしょうか?

元々会計、ファイナンスを一つの軸にしているので、僕だから出せる価値、というところまではあまり自信がないですが、ファイナンスと社会課題解決の両立というところは、面白いと思っています。ファイナンスの教科書にはまだない、チャレンジングなところなので。監査法人の時にはアセットマネジメントをクライアントにしていたこともあり、いかに効率的にお金を増やすかということを考えていましたが、その点、社会課題解決の軸だと考え方が真逆なところがあって、最初からとても面白いと思っているんです。

ー 財務の専門家でもあり、社会的インパクト評価も身に付けて、うぃるこという現場を担っているのは、まさにBe the Changeではないかと思います。全部Valueに結び付けているわけですが……笑 鬼澤さんのお話を聞いていると、意外と、興味の赴くままに、やってみよう! というところがあるのかなぁと感じました。最後に、今後、鬼澤さんが目指していることについて教えていただけますか。

ずっと自分のキャリアを頭の中で考えていますが、やっぱり、やりたいと思った直感を大事にしたいと思っています。思えば、ケイスリーで働こうと思ったのも直感だったんですよね。普通、「働かせてください」という形で門戸を叩くことも、あんまりしないのかな? と思います。もちろん、王道のキャリアプランもあるけれど、それよりも「今やりたい」という気持ちを大切にしたいと思っています。実は、ケイスリーの前、監査法人で正社員をしていた時に、社会人で言えば五年目くらいの時ですかね。勉強したいな、とふと思って正社員を辞め、契約社員になったことがあるんです。それで、一年間くらい専門学校に通っていました(笑)。結局途中でうぃるこの株式会社をつくることになったので、そこからはCFO業務に専念することになったのですが。あの時も、楽しかったです。会社は週一くらいで行って、学生時代は叶わなかった、大学の側に一人暮らしをして、図書館に通ったりして。貯金はほとんどそこで使ってしまいました(笑)。どこまでいったら貯金がなくなるか、うーん、予備校と生活費と家賃と……と計算したりしていました。やっぱり、直感に従ってやりたいことをやる、というのを大事にしているんだと思います。

ー それはまさに、Be the Change的な話じゃないですか……!これからも「今やりたい」と言う気持ちを大切にしながら活躍される鬼澤さんを、ケイスリーメンバー一同、応援し続けます。今日は本当にありがとうございました。


ケイスリーに仕事を依頼するか迷って、直感に従って自らケイスリーにジョインした鬼澤さん。卒業してからは、一緒に仕事をするということもできて、メンバー一同とても嬉しかったことを覚えています。今は社会的インパクト評価を自ら社内で取り入れながら、CFOとしてうぃるこの「野生動物と人間の共存を目指す」というミッションに取り組んでいます。これからも、「意思決定を革新し、よりよい社会をつくる」をミッションに、ケイスリーは卒業生を応援してまいります。

(インタビュー・文 落合千華)



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