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Web3 システムを構成する要素を俯瞰してみた

Web3 システムを構成する要素について、4つのレイヤーに分けて説明する記事がコインベースから出されていました。技術寄りの内容を具体例ベースで説明していて、読みやすく良い記事だなと思い日本語訳してみました。原文は下記のリンクから閲覧可能です。

ちなみに元記事のタイトルは「A simple guide to the Web3 stack」ですが、そのまま日本語訳しても意味が通じないかなと思い、本記事のタイトルはかなり意訳したものになっております。

A simple guide to the Web3 stack

Web3 について多くの定義が飛び交っていますが、コインベースではWeb3のことをブロックチェーン技術を利用した trustless, permissionless, decentralized なインターネット と捉えています。

Web3 の決定的な特徴はそのオーナーシップ、即ち所有できることです。最初の商用インターネット(Web1)では多くの利用者は閲覧するだけでしたが、Web2 では利用者が中央集権的なプラットフォーム(例えば Twitter や Facebook, YouTube など)でコンテンツを閲覧し、さらに制作することもできました。Web3 ではそれらに加えてユーザーは自分自身のコンテンツやその他データ、資産などの全てを、ブロックチェーンを介して所有することができるのです。

つまり
Web1: read-only
Web2: read & write
Web3: read-write-own
ということですね。

Web2 の世界では、Facebookのようなサードパーティは利用者の個人情報や趣向などのデータを保有しています。一方で、 Web3 ではサービスプロバイダーに保有されたりマネタイズされることなく、それらのデータを各プラットフォーム間で移動することができます。Web2 のアプリは中央集権的に運営されていましたが、Web3 ではプラットフォーム自体の所有権を構成するトークンが存在します。そして、トークンが利用者に自身が使用しているサービスを支配する権利を与えます。

以上の概観を踏まえた上で、Web3 Stack を見ていきましょう。

The Web3 Stack

Web3 Stack(上図の4つの層のこと) はまだ出来たばかりで未完成の部分も多くありますが、世紀のイノベーションであり、注目され始めています。以下に述べることは互いに排斥されるものでもないですし、完璧に網羅しているわけでもありません。進化を続ける Web3 世界を考えるためのフレームワークです。

それでは一番下の層から見ていきましょう。

Protocol Layer

一番下にはプロトコル層があります。これはブロックチェーンアーキテクチャの基礎を構成しています。

Bitcoin は最も古く、現在は Web3 の主要プレイヤーではなくなったものの、人々が希少なデジタル資産を公開鍵暗号と秘密鍵暗号を使用して保有するということを開拓しました。Bitcoin に続いて、多くの Layer 1 スマートコントラクトプラットフォーム(L1)が登場しました。Ethereum, Solana, Avalanche, Cosmos などです。今日では、これらの L1 サービスは多数の Web3 アプリのためにアーキテクチャの基礎部分を提供しています。

Bitcoin も Ethereum も自身の上にプロトコルを作ることができます。Bitcoin には早くて手数料も低い Lightning Network などの独自ネットワークなどがあります。Ethereum では自身の容量の制限を少しでも緩和するために、スケーリングした layer 2 プロトコル(L2)が複数開発されています。

また、多くの L1 および L2 ネットワークの台頭に伴い、それらの間の価値を橋渡しする必要が生じました。クロスチェーンブリッジ(cross-chain bridge)は、利用者がこっちのチェーンからあっちのチェーンに資産などを移動させるための橋のような役割を果たしています。(ここここに用途に応じたクロスチェーンがすぐにわかるようにまとめられています。)

Infrastructure / Category Primitives

インフラ層はプロトコル層の一つ上に存在し、特定のタスクについて信頼できる相互運用可能なブロックで構成されています。(このブロックのことをコインベースでは "category primitives" と呼ぶそうです。カテゴリーの最小単位みたいなイメージでしょうかね。)

インフラ層は密で多様です。スマートコントラクトの監査からデータストレージ、通信プロトコル、データ分析のためのプラットフォーム、DAO運営ツール、IDサービス、金融など多岐に渡ります。

例えば、Uniswap はある資産を別の資産に変えることができます。Arweave はデータを分散化された方法で保存することができます。 ENS はWeb3 の世界でユーザーにIDを提供しています。これらについて、利用者はどれか一つのアプリケーションだけではほとんど何もできません。しかし、Web3 の開発者はこれらを融合させて利用することでアプリを作ることができます。その様子はまるでレゴブロックのようです。

Use Case Layer

さらにその上にユースケース層があります。ここで全てが一つになります。

例えば Axie Infinity などのブロックチェーンベースのゲームです。このゲームでは Ethereum トークンと Ronin と呼ばれる安価で処理能力が高いサイドチェーンをブリッジできる NFT を使用することができます。ゲームプレイヤーは Uniswap で ETH とゲームで必要なトークンを交換します。同様に、分散化されたブログサービスである Mirror はデータを保存するためにストレージプロトコルである Arweave を使用しています。そしてこれらのサービスは暗号資産で支払いをするために Ethereum を利用しています。支払い時には ENS アドレスにトークンが直接送られることがしばしばあります。

ここまで読むと、Uniswap はインフラ層にもユースケース層にも見えるのではないかと思います。これは本質的には Uniswap は単なるスマートコントラクトの連なりである一方で、利用者が直接関われるインターフェースも提供しているからなのです。別の言い方をすれば、ユーザーのためのアプリとしても、Axie Infinity のような他の Web3 アプリのためのインフラとしても機能しているということになります。

Access Layer

最上位に存在するレイヤーがこのアクセス層です。あらゆる種類の Web3 での体験の入り口となるアプリです。

Axie Infinity で遊びたいと思った時や、Mirror 上の自分のコンテンツへの収益を受け取りたいと思った時はありませんか?まず最初に、ウォレットが必要になります。そしてそれはほとんどの Web3 アプリへの主要な入り口でもあります。MoonPay や wyre のような Fiat onramp(ドルや円などと暗号資産を交換できるサービスの総称)や、 コインベースのような取引所は、利用者が Web3 アプリを始めるために自身のお金を暗号資産に交換できる場所です。

ウォレット内に暗号資産があれば、利用者は DappRadar のようなDappまとめサイトにアクセスし、好みのアプリを探してあらゆる種類のアプリに接続することができます。他にも Rabbithole のような利用者が様々な Web3 のアプリを見つけ、その使い方を学べるプロジェクトも存在します。ZapperZerionDebank など、利用者が様々なアプリの使用履歴やそれら分散した資産を追跡するためのアプリも存在します。

最後に、Web2 のプラットフォームにも注目しましょう。Reddit や Twitter などでは暗号資産関連のコミュニティが既に形成されており将来的には Web3 の入り口として機能する可能性があります。待望されていた Reddit の暗号資産を利用した報酬システムは、貢献度が高いユーザーにトークンや NFT のようなものを報酬として与え、コミュニティをトークン化させるかもしれません。 Twitter は既に Bitcoin の Lightning Network と統合されており、ユーザーは BTC で他の人にチップを渡すことができます。

The ever-evolving stack

これまで見てきた4つの層は初期の、しかし進化している Web3 の世界を構成しています。Web3 の世界ではインターネットは利用者が所有しています。そして、所有を超えて、 Web3 の力はそのモジュール性と相互運用性にあります。本質的に、これはこれまで見てきたそれぞれの層が新しく面白い利用方法を創り出すために結びつくことができる無限の方法を示しているのです。私たちは新しく、そして世界を変えるアプリのカンブリア爆発が起きることを期待しています。

私たちが焦点を当てたフレームワークとレイヤーはおそらく変わらないであろう一方で、今後数年の間にそれらに関するプロジェクトや機会が劇的に進化することを期待しています。


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