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子育てと、小人プロレスラー

こんにちは、枯木屋ユージンです。

noteを始めて二ヶ月ちょっと。
なのでまだ、他のクリエイターさんの記事もそんなに読んではいません。

しかし、子育てに関する内容の投稿が多く感じるのは私だけでしょうか?

「親はなくても子は育つ」なんて言葉は、現代にはまったく当てはまりませんよね。
熟年越えの私なんかは、確かに放っておかれたのに、育ちましたが。
今は社会のシステムや構造がガラッと変わっています。

自分の子供時代と同じだろうと高を括ってもいたからなのですが、養育費でも進学でも大変でした。一人っ子だったのにです。
娘が小中学生の時に住んでいたある地域では、無駄だと思える塾にも、100%子供を通わせる風潮で、小中学校の先生がそれを推奨しているのです。
日本は、やはり何かおかしい。

それに娘は気難しくてやりにくい子供で、ホラー映画「エクソシスト」のようにさえ思ったくらいなんです。
一人っ子を育てるのに大袈裟だと思われるでしょう。
しかし、保育園に迎えに行くと、保育士の先生から「他の子の三倍パワフルです」と言われたことがあります。
要は、面倒を見るのに他の子の三倍大変、だと言うことなのです。
先生には、いつも申し訳なく思っていました。

もし子育てが順調だとしても、自分の子供というものは、どこまでも心配なものです。
大谷翔平や藤井聡太の両親でさえ、いまだに子供のことは心配に違いありません。

子育ての大変さは、(喉元過ぎれば熱さを忘れる)などとは少し次元が違うような気がします。
そんな心配を綴って、友人に送ったメールが残っていました。
いま読み返すと、なかなか新鮮だと思いました。
もう二十数年前の物です。

折角なので? ほぼ、それをそのまま掲載してしまいます。
是非是非、お読みくださいませ。

こびとプロレスラー

うちの娘は何故かぜんぜん背が伸びない。
母子手帳に、子供の年齢に対する身長のグラフが記されているけど、この範囲内なら大丈夫という部分にかすりもしない。

公園に遊びに連れて行ったとき、一歳になるかならないかの男の子がよちよち歩いていた。
その横を10センチ背の低いうちの娘が、ゴムまりのように走り回る。
娘はもう二歳を過ぎている。
ゴムまりだけを見ていると可愛いが、何かふと寂しい。

だがしかし、私は気づいた。うちの娘は力が強い。
検診や予防接種のとき、目一杯抵抗して、医者や看護師から「なんと力の強いよぉ」と、必ず言われる。
チビだけど力が強い! これはひょっとしてアレだ、アレで行けるのではないだろうか。
小人プロレスラー。

娘が病気かどうかは、もう少し長い目で観ないと解らないらしいが、もし病気であっても元気で何らかの職業に付ければいいし、プロレスラーもよい。
この考え方なら、人生そう悲観することもないではないか。
そう思って娘を見ると、頼もしく思えてくるから不思議だ。
リングで、精一杯闘う娘を応援するのは、悪い気分ではなさそうだ。

そんな娘が12月9日、肺炎で入院した。
普段、風邪をひいて40度の熱があっても動き回っているのに、ぐったりしている。
これはもしかしてと思って、紀南病院へ走った。
案の定、気管支炎と肺炎でそのまま入院となった。
点滴も付けたままにしておかなければならず、5分後には引きちぎったり、嚙み切ったりしようとして、お決まりのマンガのような行動で周囲を疲れさせた。
病室内が大騒ぎだ。

レントゲンや血液採取も終わって、少し落ち着いたのが、夜9時。
検査結果を医師から聞いて、また驚かされた。
「CKの値が高い」と言うのだ。2700だと。
CKとは何の事かよく解らなかったけれど、筋ジストロフィーの患者の重度だと〈何万、何十万〉、通常だと〈100〉位らしい。
うちの娘の〈2700〉をどう捉えればいいのか?
「先生、うちの娘は筋ジスなんですか?」
「いや、しばらく入院して検査を続けましょう」

嫌な一晩が過ぎた。
妻も私も、もちろん眠れないし、脳は高速で空回りし続けた。
娘の身長が伸びないのは、このCKの為なのか?
もし重度の筋ジストロフィーだったりしたら、小人プロレスラーという、親の期待どころではなくなってしまう。それどころか「何年生きられるかと言うことやんな」と、妻と話した。

その夜から四日後、娘は無事退院した。
ここまで心配な話をしておいて、ガクッと来たと思うけど、細かい説明をしていると本当に長くなりそうなんで。

結局、何度目かの血液検査でCKの値は正常に戻っていた。

最初に対応してくれた医師の説明では、筋肉組織の検査なども場合によってはあり得るし、事態はなかなか深刻だと感じていた。

次に担当してくれた医師はCKの値が少し下がっていたのもあって、「何の心配もないですよ〜」と言っていた。
CKの検査も最近導入されたものらしい。
患者としては、楽観的な態度をする医師の言葉を信じたかった。

それでも不安で、退院のとき看護師にお礼を言って、今後も筋ジスへの注意などをしておいた方が良いのか、念を押すように聞いてみた。
(怪我や病気で一時的にCKの値が上がるのは珍しいことではない。阪神大震災の時、そんな人が沢山いて、実際に自分が軽度の筋ジスだと知った人もいる。でも震災がなかったら、それを知らずに普通に一生を過ごしただけ)
丸い体型のベテランの女性看護師の説明だった。
「おたくの娘さん、大丈夫ですよ」
きっぱり言い切ってくれた。嬉しかったなぁ。
私たち夫婦は、さらに何度かお礼を言って病院を出た。

車を運転して家に戻る途中に、また思い出した。

かくして、小人プロレスラーの夢は繋がったのだと。

おしまい。

いかがでしたか? 子育て経験のある人なら、経緯の説明だけでも感情を実感していただけるのではないでしょうか。

娘はもう当然大人になっていて、身長はやはり平均より低いままですが、普通に地味に社会人をしています。
プロレスにはまったく興味を示すことはありませんでした。

長文になってしまいました。完読ありがとうございます。



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