【Dead Stock】壁の穴(2019.6.11 Ver.3)

何かに怯えたような靴音が響いた
僕は似たような淋しさを呼び止めた
迷い込んだ向こう側の君の顔は見えない
でも、慰めあえる 僕らの不仕合せを

名前を捨ててしまえば
僕らは記号でしかない
「それでも構わないよ
こうして繋がっている」
消えかかった白熱球の
ような命を
確かめあってはその限りを思い知る

ーーーこの温もりが少しだけ
あと少しだけ続いてほしいーーー

このばしょには
明日には誰1人戻ってこない
このばしょでは
コトバを交わす必要などない
このばしょには
きみのような顔のない人だけがいて
このばしょには
たったひとつの壁の穴だけ

誰にも知られちゃマズイ声出して
きみの欲望と答え合わせをしてるんだ
こぼれ落ちた涙を両手で受け止めて
僕はそれを
口に含んで 天使になった

ーーーできるのなら
このドアを開き 君のいのちを確かめたいー

このばしょには
明日には誰ひとり帰ってこない
このばしょには
このまちに住む人など誰ひとりいない
このばしょには
きみのような顔のない人だけがいて
このばしょには
たったひとつの壁の穴だけ

ーーー壁の向こうのきみは
去って また新しいきみがくるーー

このばしょには
明日には誰ひとり帰ってこない
このばしょで
僕のことを覚えてる人などいない
このばしょには
このまちに住む人など誰ひとりいない
このばしょには
たったひとつの壁の穴だけ

このばしょで
きみのような顔のない人と出会って
このばしょに
きみのことを覚えてる人だけが残って

このばしょで
きみの全ての快楽を処分して

このばしょに
僕だけが 抜け墜ちている

※2019年中の「生きづらいぶ」の最中に作ったのがたぶん第1版で、その後改訂を2回しました。るとのデモもあるけど毎回お蔵入りになる運命です。ハッテントイレをイメージして作った。

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