八ヶ岳美術館 1979 村野藤吾

最初に目に入るのは、天井全面をカバーするカーテンのような布だと思いますが、この美術館の本質は、カーテンの形状の複雑さや線の多さにあるのではなく、もっと深いところに求められるべきだと思います。

それは、外観のこじんまりとした印象と、内部に足を踏み入れたときに感じる空間の広がりとのギャップです。

この感覚の背後には、開口部を意図的に制限することで、自然光で建物の奥を明るくして、視線を奥深くまで誘い込み、訪れる人々を自然と内部へと導くよう設計思想があるきがします。

特筆すべきは、深い窓辺のデザインであり、両サイドの窓と中央の収納の高さに微妙な差異が見られますが、その理由は不明です。また、正面の窓はもう少し大きい方が望ましかったとの考えもあります。

建築物の立面においては、軒や庇がなければ、平坦に見えることがありますが、大規模なガラス窓を設けることで、内部が垣間見え、奥行きの感覚を生み出しています。照明計画については、改善の余地があるものの、大きすぎる器具が光の均一性を損なっていると言えるでしょう。

何点かの指摘を行いましたが、八ヶ岳美術館は建築としての価値が高く評価されるべきです。外観の印象と内部の広がりの対比、自然光の扱い方、そして空間の導き方には、訪れる者を魅了する力があります。美術館としての機能を超え、その空間自体が芸術作品のように感じられる瞬間がありました。

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