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友達とかわいい女の子の話。

午前9時。

相変わらず朝は頭が痛い。

それでも今日は、いつもより何倍も体が軽い。

その理由は、友達(加湿器くん)に会いに行くから!

他県に住んでいるため頻繁に会うことはできないが、月1くらいのペースで食事会を設定している。

今日はいつもより長く時間を確保し、昼食から夜まで一緒にいる予定にした。

昼食は1時間ほど並んで有名なカレー屋さん。

多量のご飯に罪悪感を感じないように、ナスをトッピングした。

1時間という待ち時間に見合う味かと問われると、少し疑問が残るが、それでも友達と食べるご飯は最高だ。

昼食後のデザートは、以前から僕が行きたかったカフェ。

このカフェは珍しいコーヒーの抽出方法を提供しており、なんとお湯ではなくミルクでコーヒーを抽出するのだ。

ミルクブリューと呼ばれるそのコーヒーは、上品な豆乳版のコーヒー牛乳のようで、新しい味わいだった。

以前から行きたかったことを店長さんに伝えると、すごく喜んでくれた。

「愛と感謝は人を笑顔にするな」と改めて感じている僕の横で、加湿器くんは可愛いカフェ店員さんに見とれている。

「これサービスしてもらった。」

小さなカップに入ったコーヒーを指さしながら、幸せそうな顔をしている。

“僕にとって特別だったお店”が、これからは“彼にとって特別な店”に変わりそうな予感がする。

一段落して次はラウンドワンでスポッチャ!
を予定していたのだが、店の前に着いたところでやる気を失った。

時間があまりないことに気づいたのだ。

予定を変更し、有名な神社にお参りに行く。

道中であんこの入ったもちを買い、食べながら本堂への橋を渡る。

そして気づいた。

本堂の門が閉まっていることに。

行き当たりばったりの旅なんてこんなもんだ。

1人ではさすがに落ち込んでいたかもしれないが、友達がいれば笑い飛ばすことができる。

夜ご飯は、TVに出演していた鳥の鉄板焼き屋さん。

この場所でも、加湿器くんは運命の出会いを感じていた。

順番待ちのボードを眺める店員さんは、暗めの金髪で、お客を呼び込む声から明るさが伝わってくる。

「可愛い人がいるな。」

そう思った僕の横で、彼は鼻の穴を膨らませてにやけていた。

注文の際には、

「おすすめなんですか?」
とわざとらしい質問を投げかけ、きっちりとおすすめを注文していた。

「その鳥の骨の食べ方わからんやろ?どうやって食べるか聞いてあげる!」

どうにかしてその店員さんと話したい彼は、20代とは思えないほど少年の目をしている。

別れが恋しくなるであろうお会計を済ませると、何故か彼は目がとろーんとなり、全身の力が抜けてクラゲのようにふわふわしていた。

理由を聞くと、なんと意中の店員さんに「また来てくださいね」と手を振られたらしい!

「まじ可愛い。やばい。」

語彙力などとうに失った彼は、心地の良い放心状態に浸っている。

帰りに飲み屋に立ち寄り、今日の出来事を振り返る。

相変わらず店員さんとの出会いを何度も話す彼に、もう黙ってくれと愛想笑いを返す。

ジョッキ1杯で酔い始め、さぞかし今日の出会いが彼の心を動き出させたのだろう。


そんな彼には、彼女がいます。

馬鹿が早く夢から覚めるように、僕が思い切り彼の頬をぶっておきますね。

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