春時雨
〜 poemサイド 〜
過去にひねるは煤色の筆
硯に溜まった墨を馴染ませる黄昏時に
一人
未来にひねるは淡い筆先
空に溜まった虹の背を送る彼は誰時に
また一人
贈る言葉は音に滲み
捧げる声音は粒に途切れた
すれ違う時
生き違う熱
互いの指であやとりを
するように
霞む雲間を補うように
それぞれの息を
重ねた
春時雨
end
※自身のX内にて投稿したものを修正して、こちらに投稿しています。
〜 SS(ショートストーリー)〜
・
幼い頃に芽生えた片思い。
一方的な恋をして身勝手に宛てた手紙を書いた。
チグハグな文字に不揃いな言葉が並んでる。
今だに渡せないまま日記に挟んで、引き出しの奥に追いやった。
まるで栞の寝床みたいに。
・
当時の日記はまだ未完成で想いもまだ未完成なまま踏み出せない、一歩ただそれだけなのに。
遊んでいた頃は、きょうだいねって言われたけど嬉しくなんかなかった。
全く。
だって恋人じゃないって、そう聞こえたから。
それから会話がままならなくなって横顔を掠める程度に気持ちを留めているしかなかった。
その時からもう惹かれてたんだ、きっと。
手紙の四隅がセピア色に褪せているのに、なのに気持ちは褪せてくれない。
雪解けが過ぎたら、春からは別々なんだ。
こだまする想いと後悔に焦がした胸が、溢れそうになる。
・・・
・・
・
雨の日。
別々の道、門出の日。
セピア色の栞を持って、呼び止めた。
まだ間に合うかわからない、絡れる足に鼓動がとられそうになる。
声を隔てる雨音に姿を遮る雨粒に、息が途切れそうになる。
水溜りにうつる膝が
痛い。
・
雨音が止まる
雨粒が止む
通る声に
姿に
痛みに熱が
弾けた。
言葉になれない気持ちを
言葉にできない思い出を
滲んだ心音を伸ばすよう
セピア色した栞に委ねた。
・
互い違いに
それぞれの記憶を辿っては
あやとりをするように
思い起こして
胸を寄せ合う
春時雨に耳をたてれば
桜の香り
傘が閉じるまで
まだ
もう少し
あと
もう少し。
〜end〜
by kabocya
今回はpoemとSS(ショートストーリー)を含ませ投稿を試みました。
お付き合いくださいまして、ありがとうございます。失礼します。
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