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【心に残る一冊】風よあらしよ(2020年 村山由佳 著)

どんな言葉でも言い足りない、表現しきれないような、魂が宿った作品だった。

最後の1ページが結ばれ、まるで一年間欠かさず見続けた大河ドラマが完結したときのような、茫然とした気持ちで余韻に浸っているときに考えたのは「幸せ」についてだった。

伊藤野枝の生涯が、いつも貧しい生活を強いられ、最後は残酷な仕打ちによって終わりを迎えるものであっても、やはり幸せな人生だったんだろうなと思えてしまう。

ひとがどれだけ幸せかというのは「どれだけ自由でいられるか」と同義なのかもしれない。

彼女が歩んだすべての道は、自身が強い意思のもとで選び、突き進んだもの。まわりに何を言われても、どう思われても、惑わされることなく、掴み取った運命ともいえる。
そこには圧倒的な精神の自由があった。その強さはとても真似できるとは思えないけれど、羨ましさや憧れを感じずにはいられない。

全679ページ。荒れ狂う竜巻のような人生を猛スピードで駆け抜けた野枝の物語は、読者さえも巻き込んで、心にあるいろんなものをグルグルとかき混ぜ、野ざらしにしてしまうような破壊力のあるものだった。

すべての未読の人に言いたい。この本を読まないまま過ごす人生はもったいないです。

と、おせっかいなことを言いたくなるほどの気持ちになったのは初めてかもしれない。

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