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かぶきDOU其の14アフタートーク

皆様今回もコミてんラジオ「かぶきDOU」をお聴きいただきありがとうございました。九州では大雨の被害が出ております。福岡市内は7/3の午後に雨はあがりましたが九州地方はまだまだ油断出来ないということでこれ以上の被害が出ないことを祈るばかりです。



一連の報道に思うこと

前回のかぶきDOU生放送終了後に市川猿之助氏の一連のニュースが報じられました。
一つ思うことは、座頭役者さんは「究極のワンオペ」だということです。出演する舞台のすべての裁量を任されます。先々の(人によっては一年以上先の)スケジュールも埋まっている状態で、大半の準備は公演中の舞台の合間と数日の休演日の間だけです。
それでも長く培ってきた歌舞伎のノウハウと、共演される役者さんや裏方さんの経験と技術のおかげでこのような過密スケジュールが成立してきました。
特にスーパー歌舞伎はストーリー、スピード、スペクタクルの3つの要素があるのが魅力ですがコロナ禍でこの演出にも制約が出たため、あえてスーパー歌舞伎と名乗らず内容を変更して今年2月博多座大歌舞伎は上演されたそうです。舞台を実際に観た皆様はお分かりかと思いますが、そんなことは一切感じさせない心震わすような舞台を猿之助氏はみせてくださいました。
さらに過去の歌舞伎作品の復活や新作の脚本を手掛けたりメディアへの出演と、恐らく体力的、精神的にも極限の状態でコロナ禍を乗り切ろうとしていたのではないでしょうか?
歌舞伎役者さんが、より働きやすい環境や相談機関などを今後、検討してみる必要があるのではないかと感じました。
私たち歌舞伎ファンが安心してご贔屓の役者さんの舞台を楽しむためにも、そういった改革を進めていただきたいです。



松竹座船乗り込み

7月に入りまして様々な劇場で歌舞伎公演が始まっております。
大阪では、6/29に道頓堀で船乗り込みが開催されました。梅雨時期ということで当日朝の予報ではお天気は不安定とのことでしたが晴天に恵まれ、まさに船乗り込み日和となりました!
船乗り込みは、歌舞伎役者とその一行が江戸や京都から大坂へ到着する際に行われていました。
途絶えていた時期もありましたが1979年(昭和54年)に復活して以来、大阪に夏の訪れを告げる季節の風物詩として親しまれています。
そして今年5/17に大阪松竹座が100周年を迎えました!昭和20 年の大阪大空襲でも松竹座は持ち堪えたそうです。大正から令和の激動の時代の中、上方の芸能を支え続けています。
松竹座の船乗り込みは2020年と2021年はコロナ禍で行われませんでした。昨年は歌舞伎役者さんがマスク着用の上で乗船という形で開催されましたが、今年は公募で選ばれた一般の方の乗船も含めて通常開催となりました。

船乗り込み 博多座と松竹座比べてみると

ちなみに博多座では1999年(平成11年)の開業の年から始まっています。博多座の船乗り込みは、松竹座を参考にしたといわれています。
違いを比較してみましょう!

博多座船乗り込み
博多川およそ800mをどんこ船で進みます。口上はキャナルシティでの式典と川端ぜんざい広場の2回行われます。今年は13名の歌舞伎役者の皆さんが乗船され4年ぶりの開催となりました。

松竹座船乗り込み
道頓堀川をおよそ2.5km下ります。戎橋のたもとで船上での口上が行われました。船が大きい分、参加役者さんも19人と多いです。
乗船されたのは、片岡仁左衛門さん、中村雁治郎さん、中村扇雀さん、坂東彌十郎さん、大谷廣太郎さん、中村米吉さん、中村隼人さん、片岡孝太郎さん、松本幸四郎さん、尾上菊之助さん、中村虎之介さん、片岡千之助さん、市川染五郎さん、中村亀鶴さん、嵐橘三郎さん、片岡松之助さん、上村吉弥さん、中村寿治郎さん、中村吉之丞さんでした(太字は博多座船乗り込みにも参加された方です)

さすが上方!笑い溢れる楽しいご挨拶が多かった印象です。役者さんがスタンドマイクを次のご挨拶の方の高さに調整する所作も楽しませていただきました♪

乗船された歌舞伎役者の皆さんと歌舞伎ファンの皆さんの待ちに待ったという思いが一つになった素敵な船乗り込みでした!


大阪松竹座7月大歌舞伎演目かぶきDOUぽち解説

大阪松竹座の7月大歌舞伎昼の部は「吉例寿曽我」から始まります。5月明治座公演で大奮闘の中村隼人さんと中村虎之介さんが共に工藤祐経家臣として、謀反の企てが書かれた巻き物をめぐって奪い合いの大立ち廻りを繰り広げます。
舞台の鶴岡八幡宮の石段前の背景が90度倒れてガラッと変わるがんどう返しが見どころです。舞台は大磯の廓前に変わり、中村亀鶴さん演じる朝比奈の手引きで、曽我十郎(片岡千之助さん)、曽我五郎(松竹座初お目見え市川染五郎さん)兄弟が父の仇、坂東彌十郎さん演じる工藤祐経たちと暗闇の中で巻物を探すだんまりとなります。曽我物の登場人物揃い踏みで、歌舞伎ならではの演出をお楽しみいただけます。

そして女方の最高峰「京鹿子娘道成寺」を尾上菊之助さんが勤められています。
お一人での白拍子花子役は5度目(歌舞伎公演データベースより)
です。安珍清姫伝説としても有名なこの演目ですが、美しさと可愛らしさ、そして女の業を披露されています。

昼の部最後は義太夫狂言の名作「沼津」です。東海道の沼津にある宿場を舞台に、生き別れの親子、兄妹が偶然出会うところから始まります。父の平作を中村鴈治郎さん、その娘を片岡孝太郎さん、呉服屋として成功した息子十兵衛を中村扇雀さんが勤められています。

夜の部はじめは「俊寛」です。
松竹座では20年ぶりに片岡仁左衛門さんが主人公の俊寛僧都を勤められています。  

夜の部もう一つは「吉原狐」です。松本幸四郎さんが吉原で芸者屋を営む三五郎役を勤められています。その娘で、ダメ男をみると狐がついたように惚れてしまう、ダメンズ好きの芸者おきち役は中村米吉さんです。
吉原狐は2006年歌舞伎座で公演以来17年ぶりの上演です。
そして17年前は幸四郎さんのお役だった、旗本男の貝塚采女役を市川染五郎さんが勤められています。
江戸の吉原遊廓を舞台にした人情噺で「関西の方々にも面白さを知っていただきたくて」と幸四郎さんは産経新聞のインタビューで話されています。

見所目白押しの大阪松竹座開場100周年記念七月大歌舞伎は今月25日千穐楽です!


中村京蔵さんの挑戦〜フェードル

番組最後のめでてえなあでもご紹介いたしますが、6/30は中村京蔵さんの68歳のお誕生日でした。おめでとうございます!京蔵さんといえばTVCM「勘定奉行」にご出演中で「勘定奉行におまかせあれ!」のセリフでも大変お馴染みですね。
4代目中村雀右衛門丈に従事し女方として幅広いお役を勤められている京蔵さんですが、これまで30を超える国で歌舞伎の普及に尽力されています。現在は歌舞伎座の七月大歌舞伎にご出演中の京蔵さんは自主公演で大きなプロジェクトを進めていらっしゃいます。
フランスの古典悲劇の名作「フェードル」を歌舞伎をベースとした和洋式での上演に挑戦されます。台本は翻訳本そのままの言葉を使い、人名や地名も原作のままで、衣装やカツラ、舞台や小道具などは歌舞伎の物を用いるそうです。

簡単なあらすじをご紹介しますと…
主人公、アテネ国王夫人フェードルは、夫テゼと先妻との間の息子イポリットに恋してしまいます。しかしイポリットには思い人がおり、フェードルが告白するも拒絶されてしまいます。フェードルの許されない恋が嫉妬へ変わり大きな悲劇へと繋がっていく…という物語です。

フランス古典劇と歌舞伎、共通点がないように思えますが劇作家ジャン ラシーヌが制作したこの「フェードル」の初演は1677年で当時、江戸では初代市川團十郎が活躍、上方では人形浄瑠璃が盛んで近松門左衛門がこの7年後に「世継曾我」で大評判となります。
今なお語り継がれる不朽の名作が歌舞伎とどのようにシンクロするのか大変楽しみです。
京蔵さんは「中村京蔵の挑戦」と銘打ちお誕生日の6/30までクラウドファンディングを行い目標金額を上回っての終了となりました!

支援金は
■本公演にかかる劇場使用料(会場費、音響費、照明費など) 
■リターンアイテムの制作費
■グッズの送料
■クラウドファンディング手数料に活用されるそうです。
返礼品も金額ごとに細かく分かれていて上演DVDがついたコースは特に良いなあと思いました。

4月のクラウドファンディングのプロジェクトスタートからコラムも掲載されています。京蔵さんのお言葉で「フェードル」プロジェクトのルーツともいえる蜷川幸雄さんの「NINAGAWAマクベス」との出会いや、これまでの海外公演のお話、舞台の進捗状況などを分かりやすい文章で綴られておりとても面白いです!クラウドファンディングのサイト、CAMPFIREでこの連載は現在もご覧いただけます。
出演者も様々なジャンルから集まり、松竹が主催しているこども歌舞伎スクール寺子屋の第一期生、醍醐晴(だいご はる)さんもご出演されます!

「中村京蔵 爽涼の會 フェードル」
8月19日20日と東京国立劇場小劇場で開催されます。
作:ジャン·ラシーヌ
翻訳:岩切正一郎
演出:大河内直子 

主な出演

  • フェードル(アテネ王妃)中村京蔵

  • テゼ(アテネ国王フェードルの夫)池田努

  • イポリット(フェードルの義理の息子)須賀貴匡 

  • パノープ(フェードルの侍女)中村梅乃 高砂屋

  • テゼの太刀持 醍醐晴

クラウドファンディングは終了しましたが機材設置エリアを開放しての若干の追加座席の販売が行われています。「新たな演劇の地平に向かって模索して参ります!」と京蔵さんはコメントされています。気になる方は中村京蔵さんの公式HPでぜひチェックしてみてください!

https://www.kyozo.jp/

縁の一曲 鎌倉殿の13人

歌舞伎役者さんにゆかりの曲をご紹介する、えにしの一曲のコーナーです。今回はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でした。諸事情でNHKでの再放送、オンデマンド配信が急遽見合わせとなった影響でDVD Blu-rayのセールスが急上昇し品薄状態だそうです。
7/4のAmazonの状況は…3巻共に1,2ヶ月待ちでした!
私も大好きな大河ドラマで全巻Blu-rayで持っており壇ノ浦の戦いが最高で何度も見返しています!
ドラマのメインテーマ♩エバンコールで「鎌倉殿の13人」お届けしました。


めでてえなぁ 6/28〜7/4

お誕生日を迎えられる歌舞伎役者さんをご紹介する「めでてえなあ」のコーナーです!
お名前と、所属 屋号をご紹介します。五十音順となっておりますのでご了承ください。6/28から7/4がお誕生日の皆さんです。

6/29市川青虎さん
澤瀉屋

6/29大谷桂太郎さん
大谷桂三一門

6/29坂東彦三郎さん
音羽屋

6/30中村京蔵さん
京屋

7/1片岡千藏さん
2代目片岡秀太郎一門

7/3 市川郁治郎さん
市川段四郎一門

7/4 中村富志郎
日高屋

以上7名の皆さんでした。お誕生日おめでとうございました!


次回のかぶきDOUは7/11㈫午前10:00〜10:25生放送でお届けします。お楽しみに!
番組のYou Tubeアーカイブはこちらからご覧いただけます↓

※権利の関係でYou Tubeには音楽BGMが入っておりません。
ミキサールームからのトークの為スタジオは無人で音声だけの配信となっております。ご了承くださいませ。

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