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かぶきDOU其の17アフタートーク

皆様今回もコミてんラジオかぶきDOUをお聴きいただきありがとうございました!
タイトル画は、番組で「暫」の絵てぬぐいを展示させて頂いております麻布十番 麻の葉 さまの新作の扇子を、コミてんカフェテラス席で撮影したものです。
この放送の前日7/24に私は東京 国立劇場へ観劇に行きましたが、麻の葉さまの麻布十番の直営店にも伺いました。その際に頂戴した扇子です。歌舞伎の隈取があしらわれたデザインで渋みのある色合いも素敵です!手に馴染みやすく機能的で長時間あおいでも疲れにくいです☆

そしてこちらも頂戴しました絵てぬぐいです↓

「見返り」高橋宏光作

大胆な構図で勢いを感じるクールなデザインですが、切絵の雰囲気がノスタルジックな気持ちも呼び起こしてくれます。
こちらを制作されたのは世界でご活躍の原画作家の高橋宏光さんです。高橋さんの作品は現在イギリスのアッシュモリアン博物館で展示されているそうです!


歌舞伎をはじめすべての絵てぬぐいに作家さんがいらっしゃいます。須﨑和子社長から作家さんの想いを直接伺って、奥深さや魅力をより感じられました。
素敵なお話に帰りの地下鉄の車内もずっとその余韻に浸っておりました…須﨑社長お忙しい中、本当にありがとうございました!
お店はガラス張りで、通りからも店内の素敵な絵てぬぐいや扇子のディスプレイに心惹かれます。
東京 麻布十番に行かれる機会がありましたらぜひお立ち寄りくださいませ。あなたの推し絵てぬぐいがきっとみつかると思います♪



さよなら国立劇場 歌舞伎鑑賞教室千穐楽観劇レポ

今回のかぶきDOUは久しぶりの観劇レポでした。
東京の国立劇場は老朽化による建て替えのため今年10月で閉場となります。国立劇場の開場は1966年昭和41年、その翌年1967年に歌舞伎鑑賞教室がはじまりました。
夏休みにお手頃な価格で親子で気兼ねなく劇場デビュー出来るということで人気を博し、国立劇場のパンフレットによりますと歌舞伎鑑賞教室と文楽の鑑賞教室を合わせて、のべ680万人以上の動員を誇るそうです!
この歌舞伎鑑賞教室がきっかけで舞台関係のお仕事に就かれた方も多いそうです。
最近ではアフターファイブに開催の「社会人のための歌舞伎鑑賞教室」も好評でした。
今回 第104回が現在の国立劇場での最後の歌舞伎鑑賞教室ということで千穐楽は別れを惜しむ方々で満員御礼となりました。

無料配布のパンフレット

私も東京在住の頃は国立劇場で何度も観劇しましたが、現代のお子さんはVRやYou Tubeが当たり前の時代です。そんな世代に響くのはどんな解説なのか?コミてんで歌舞伎の番組を始めたこともあり勉強も兼ねて足を運びました。


歌舞伎鑑賞教室 歌舞伎のみかた オープニング

舞台両サイドには字幕画面がありポイントがわかりやすく表示されます

まずはじめは、お子さんに演目をわかりやすく説明する「歌舞伎のみかた」からです。
オープニングで緞帳があがりますと誰も居ない舞台に、廻り舞台が音楽に合わせて上下しながらグルグル回る演出からはじまりました。子供たちは興味津々です!
そして花道のすっぽんから今回解説を勤められた澤村宗之助さんが見得で決まりながらの登場でした。


ミスター歌舞伎鑑賞教室 3代目澤村宗之助さん

今回「歌舞伎のみかた」の解説を勤められたのが3代目澤村宗之助さんでした。
子供たちを前に宗之助さんは大変慣れたご様子でステージをバリバリ仕切っていらっしゃいました!
トークと仕切りの上手さから、これまで何度も国立劇場の歌舞伎鑑賞教室で解説を勤められているそうです。

3代目澤村宗之助さん 紀伊國屋は1972年昭和47年5月6日生まれ。
幼い頃から児童劇団に所属し6歳で歌舞伎の初舞台を踏みます。
3年後には子役としての活躍を認められ9代目澤村宗十郎の部屋子(へやご)となり、9歳で2代目 澤村宗丸を襲名。
そして1998年平成10年26歳で名題昇進し3代目 澤村宗之助を襲名されました。
宗之助さんの女方のお役は、観ている女性をキュンとさせる魅力をお持ちです。「和事 わごと」と呼ばれる、はんなりとしたイケメン男性の恋愛模様や心の機微を表現する芸も得意とされています。
和事は上方歌舞伎の芸という印象がありますが、江戸和事では紀伊國屋さんの唯一無二の芸を当代の宗之助さんは継承されています
まさに国立劇場 歌舞伎鑑賞教室のラストにふさわしい役者さんの解説でありました!


趣向を凝らした演出


宗之助さんのすっぽんからの登場の後、床と呼ばれる舞台向かって右側上手の御簾内(みすうち)から義太夫節「語りと三味線」の方々が登場しました。
宗之助さんの動きに義太夫節を合わせてみることになり、歌舞伎の有名なセリフに合わせるのかな…と思っていたら「暑くてアイス食べたい」と現代語の義太夫の語りと三味線!
そして宗之助さんが暑さに悶え舞台に倒れ込む動きが絶妙にマッチしていて会場は大ウケでした!

その他、ツケ打ちにあわせての動きや男女の走り方の違い、女方の基本姿勢まで宗之助さんがレクチャーしてくださいました。
観客の皆さん宗之助さんの所作を真似て素敵な女方になりきっていらっしゃいました。3階席でよくその様子が観えました!


引窓とは〜双蝶々曲輪日記

そして今回の歌舞伎演目、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)にちなんだエピソードも盛りだくさんでした。
この演目はストーリーが9段に分かれています。今回上演されたのはエンディングから一つ前の8段目「引窓」というお話でした。

この作品が作られた江戸時代の引窓とは、屋根の上に設置されたスライド式の屋根板のことを言います。長く垂らした縄をひっぱると、屋根の板がスライドするという仕組みです。
そもそも歌舞伎では、夜のシーンでも役者さんが見えるよう明るい状態で演じられています。
今回の歌舞伎鑑賞教室の舞台では昔の夜の暗さが再現されました。この物語の頃は中秋の名月、旧暦で8月15日の前日ということで、満月くらいの明るさが再現されました。
行灯(あんどん)だけのあかりから、引窓を開けるとかなり明るい月の光が差し込んで来る様子がとても良く分かりました。当時引窓からの光で本も読めたそうです。夜には電気がつくのが当たり前の現代社会にこのデモンストレーションはさすがです!
全体の流れのテンポが良く、実験的要素もあったりと子どもたちも興味津々であっという間の30分でした。 

国立劇場が建て替えのため歌舞伎鑑賞教室は幕となりました。
10月の歌舞伎公演をもって初代国立劇場は役目を終えます。新しい国立劇場は2029年秋以降に完成予定で、それまでのあいだ歌舞伎鑑賞教室は外部の施設を利用しての開催となるそうです。これからも伝統芸能 歌舞伎をより多くのお子さんに気軽に触れる機会を作って頂くことを期待しております!


かぶきDOU解説 双蝶々曲輪日記〜引窓〜


国立劇場歌舞伎鑑賞教室 双蝶々曲輪日記〜引窓〜(ふたつちょうちょうくるわにっき ひきまど)について、かぶきDOU解説をお届けいたします。

配役

•南与兵衛後ニ南方十次兵衛
(なんよへえ のちに なんぽうじゅうじべえ)中村芝翫(成駒屋)

•女房お早(おはや)市川高麗蔵 高麗屋

•平岡丹平(ひらおかたんぺい)中村松江 加賀屋

•三原伝造(みはらでんぞう)坂東彦三郎 音羽屋

•母お幸(おこう)中村梅花 京扇屋

•濡髪長五郎(ぬれがみちょうごろう)中村錦之助 萬屋

作者は 竹田出雲 三好松洛 並木千柳の合作です。人形浄瑠璃の初演で寛延2年1749年7月 大坂竹本座に初演され、歌舞伎では翌月の寛延2年8月に上演されました。

南方十次兵衛は地方代官の息子でしたが、落ちぶれて南 与兵衛と名を変えて笛売りを生業としていました。しかし再び代官として父の名の南方十次兵衛を継ぐことを許されました。その最初の仕事として命令されたのは濡髪の逮捕でした。
濡髪長五郎は相撲で最も強い位を持つ人気力士。濡髪が大変世話になっているスポンサーの山崎屋与五郎のトラブル解決のために尽力しますが、結果としてライバル関係の贔屓筋を殺してしまい、罪人として追われる身です。

濡髪と母お幸の再会

捕まる前に実の母に一目会いたいと母が再婚した先の京都 岩清水八幡宮のそばにある八幡(やわた)の里を訪れます。
濡髪の実母 お幸(おこう)の嫁ぎ先は与兵衛の父でした。与兵衛は義理の息子になります。
母子の再会を喜んだのも束の間、与兵衛が客を連れて帰宅したため濡髪は2階の部屋に身を潜めます。
再び代官として父の名・南方十次兵衛を継ぐことを許された与兵衛はそのことをお幸と妻 お早に報告します。
与兵衛が自宅に招いた2人の侍、丹平と伝造は、濡髪が殺害した相手の兄弟でした。
濡髪の人相画、今で言う指名手配のポスターを与兵衛に手渡すと「夜の見張りを頼む」と依頼されました。
 与兵衛の出世を心底喜ぶ お幸とお早でしたが、最初の任務を聞いて絶句します。

丹平と伝造が帰ったあと、2階から様子を伺っていた濡髪の顔が偶然家の軒先にある手水鉢に反射し与兵衛は驚きます。それに気づいたお早は、引窓を閉じて光を遮りました。
与兵衛は「夜に捕えるのが使命」と濡髪を捕まえようとしますが、お早は引窓を開いて月の光を取り入れて「まだお昼です!」と阻止しようとします。  

思い詰めた様子のお幸は手箱を取り出してきて、コツコツ貯めてきたお金を与兵衛に差し出し「人相画を買い取らせて欲しい」と懇願します。
しばらく無言で考え込む与兵衛。
このシーンの芝翫さんの間合いは素晴らしかったです。   

二人の息子 母への思い

全てを察した与兵衛は「私はあなたの子でござりますので」と母が差し出したお金を袂に入れて人相画を手渡し「右へ渡って山越えに」と濡髪に聞こえるように逃走ルートを教え、外へ出かけます。
その間に何とかして濡髪の逃亡の手助けをしようと、お幸は濡髪の前髪を剃り落とすことを提案します。
額の形を変えることは男子にとって一人前になる為の大切な儀式です。拒む濡髪を必死で説得して涙ながらに前髪を剃り落とします。しかし濡髪の右目下にある特徴的なホクロだけはどうにも出来ません。
玄関横の窓からその様子を見ていた与兵衛が、隙間からお金の入った袋を濡髪の顔に投げつけると、ほくろが綺麗に取れるという奇跡が起きます!(手裏剣を投げる演出もあるそうです)
与兵衛の情けに心打たれた濡髪は「義理の息子を大切にせよ」と、自分を差し出すようお幸を説得します。
お幸は引窓の縄で濡髪を縛り、与兵衛に差し出しますが、どうしてか与兵衛はその縄を切りおとします。

月が照らす双蝶々 

引窓が開き、月光で昼の様に明るくなった部屋に例えて与兵衛は「自分の役目は夜だけ」と濡髪を逃すことにしました。
与兵衛と濡髪は、しばし義兄弟で手を握り合います。題名の双蝶々(ふたつちょうちょう)は与兵衛と濡髪のことを表しているのです。
母や与兵衛、お早への感謝の気持ちを噛み締めながら、濡髪はゴザを頭から被り花道を去っていくのでした。

…切ないお話ですが、登場人物皆が誰かのことを思って行動する。ステップファミリーが当たり前になりつつある現代に、このお話は観客のお子さんたちの心にも響いたのではないでしょうか?
国立劇場 歌舞伎鑑賞教室ラストの舞台「双蝶々曲輪日記〜引窓〜」のかぶきDOU解説をお届けしました。


めでてえなぁ 7/19-7/25

お誕生日を迎えられる歌舞伎役者さんをご紹介する「めでてえなあ」のコーナー!お名前と、所属 屋号をご紹介します。五十音順となっておりますのでご了承ください。今回は7/19から7/25がお誕生日の皆さんでした

7/19 中村梅蔵さん
高砂屋

7/20尾上松三さん
尾上松緑一門

7/20坂東彌紋さん
坂東彌十郎一門

7/21大谷廣松さん
明石屋

7/21中村蝶紫さん
萬屋

7/21坂東八重之さん
坂東楽善一門

7/22岩井義太郎さん
10代目岩井半四郎一門

7/24片岡佑次郎さん
片岡我當一門

今回は8名の皆様がお誕生日でした。お誕生日おめでとうございました!


今回、縁の一曲はお休みさせていただきました。
次回のかぶきDOUは8/1㈫午前10:00〜10:25生放送でお届けします!番組のYou Tubeアーカイブはこちらからご覧いただけます↓

※権利の関係でYou Tubeには音楽BGMが入っておりません。
ミキサールームからのトークの為スタジオは無人で音声だけの配信となっております。ご了承くださいませ。





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