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【企業分析】ファナック(FANUC)

6954 (東証プライム)
時価総額:4兆600億円
株価:4,000円
売上高:7,330億円
営業利益:1,832億円

事業内容: 工作機械用NC装置、多関節ロボットの製造
設立年:1972年
本社:🇯🇵 山梨県南都留郡忍野村忍草(しぼくさ)字古馬場
代表者: 稲葉善治(代表取締役会長)、山口賢治(代表取締役社長兼CEO兼CIO)
従業員数: 連結:8,675人、単独:4,257人

概要

ファナック株式会社(FANUC CORPORATION)は、日本を代表する大手電気機器メーカー。工場の自動化設備に特化したメーカーで、工作機械用CNC装置で世界首位(国内シェア7割、世界シェア5割)、産業用ロボットでも世界首位(世界シェア2割)。

安川電機・ABBグループ・クーカとともに世界4大産業用ロボットメーカーを構成する。日本ロボット工業会に所属。

山梨県南都留郡忍野村に本社を置き、富士山麓の敷地には本社機能のほか、研究所・工場・厚生施設などを集約している。かつては古河グループに所属していた。日経平均株価およびTOPIX Core30、JPX日経インデックス400の構成銘柄の一つ。

ファナック本社工場群(山梨県忍野村)

ファナックの本社は富士山の麓、広さ54万坪にわたるファナックの森の中にあります。

1955年にNCの開発をスタートさせて以来、ファナックは一貫して工場の自動化を追求してきました。

ファナックは、基本技術であるNCとサーボ、レーザからなるFA事業と、その基本技術を応用したロボット事業およびロボマシン事業を展開しています。

そして、IoT/AI技術をFA・ロボット・ロボマシンの全ての分野に積極的に適用していくことで、顧客がファナック商品をより効率的に利用できるように取り組んでいます。

同社は、富士通信機製造(現富士通(6702))にて1955年に設けられたコントロール(制御装置)のプロジェクトチームを源流とする。このチームを率いたリーダーが後に同社社長となる稲葉清右衛門(せいうえもん;1925~2020 年)氏である。同チームは1956年に日本の民間企業として初めて工作機械向け NC(数値制御装置)とサーボモータの開発に成功し、手動であった位置決め制を自動化した。

そして、同社は1972年に富士通の計算制部がスピンオフする形で「富士通ファナック」として会社設立された。その後、同社はNC からの応用商品へと事業展開しながら、1982 年にファナック(Euji AutomaticNUmerical Control)へ社名変更し、2009年に富士通との資本関係を解消した。

プロダクト・ビジネスモデル

同社は祖業の CNC(コンピュータ数値制御装置:工作機械向けの制御装置で、パソコンのオペレーティングシステム Windowsに相当)を基本商品としながら、産業用ロボットや小型
切削加工機といった応用商品へ事業領域を広げてきた。

経営方針としては”工場の自動化”を追求しており、経営戦略の一つとして「one FANUC(主力事業とサービスが一体となり、製造現場に革新と安心を届けること)」を追求している。

主力商品は、工作機械用CNC装置や産業用ロボットである。研究開発に注力しており、全従業員の約3分の1を研究員が占めている。特許競争力も高い。

「壊れない、壊れる前に知らせる、壊れてもすぐ直せる」というスローガンを掲げており、製品の信頼性の高さを売りにしていて、2016年には面積2万2000平米 (m2)という大規模な信頼性評価施設を新設した。機械が故障する前に保守を行えるようにするために、故障予知技術の開発にも着手している。

また、全ての製品の「生涯保守」を宣言しており、たとえ30年以上前に作られた製品であっても、ユーザが使用を続ける限り修理できる体制を整備している。

ファナックは、以下の4つの事業セグメントに分かれています。

【連結事業】FA 29%、ロボット 42%、ロボマシン 16%、サービス 13%

それぞれの事業について詳しく見ていきます。

FA事業

FA事業はファナックの原点であり、基本技術です。ファナックは、工作機械の動作を数値情報で制御するNC (Numerical Control)とサーボを、日本の民間企業として初めて開発しました。それまで工作機械で精度良く加工するためには、長い修練を積んでノウハウを体得した熟練技術者の存在が不可欠でしたが、NCとサーボで熟練技術者の技術を補完することができるようになりました。

さらに、コンピュータで制するCNCとサーボにより、複雑な形状の加工や異品種を効率よく生産することが可能となりました。現在は、シンプルな工作機械から複雑な構成の複合加工機、ならびに産業機械までを幅広くカバーするCNCとサーボをラインアップしています。

また、加工現場では自動化や省人化のため工作機械へのロボット導入の要望が多くなっています。ファナックでは工作機械とロボットの親和性の向上が重要と考え、これを支援する機能開発を行っています。

ロボット事業

CNCとサーボの基本技術を応用し、アームを自由に制することで、様々な作業を自動化します。3K(危険、汚い、きつい)作業からの労働者解放による労働環境の改善や、長時間の安定連続生産による商品品質の向上・安定化などに貢献します。

産業用ロボットは、用途別に「溶接」「マテリアルハンドリング(物の運搬)」「組立」「塗装」などがあり、自動車、電子部品、物流、食品、医薬品、化粧品等の幅広い産業で使用されています。ファナックの産業用ロボットは汎用ロボットであり、幅広い業種で活躍しています。

また、人と協働で作業するロボットを開発するなど、減少する労働人口を補い、世界中の工場の維持、成長に貢献します。

FANUC Robot iシリーズは、各種知能化機能を搭載した高性能ロボットコントローラR-30iBにより制御される高信頼性インテリジェントロボットです。

ロボマシン事業

CNCとサーボの基本技術を応用した、小型切削加工機、電動射出成形機、ワイヤ放電加工機を開発しています。

ロボマシン事業の商品はファナックのCNCとサーボを搭載した工作機械もしくは産業機械で、顧客の工場で生産に使用されます。

いずれもファナックロボットとの高い融合性を持ち、ロボマシンとロボットを組み合わせることで工場の自動化が促進されます。

高頼、高性能なロボマシン商品をお使いいただくことで、お客様の製品の品質向上と加工時間短縮を実現でき、工場の生産性向上に貢献します。

また、工場全体の稼働状態をリアルタイムで管理できる機能により、より高精度な生産計画の立案や稼働率の向上が可能となります(ROBODRILL-LINKi、ROBOSHOT-LINKi、ROBOCUT-LINKi)。

工場の自動化を支えるファナック

ファナックの歴史はNC (Numerical Control)から始まります。1955年、富士通信機製造株式会社にコントロールのプロジェクトチームが設けられました。そして翌1956年、日本で民間初のNCとサーボの開発に成功して以来、一貫して工場の自動化を追求しています。

ファナックの基本技術であるNC、サーボ、レーザから成るFA事業と、その基本技術を応用したロボット事業およびロボマシン事業を三本柱に、ファナックは国内外の製造業の発展に貢献しています。ファナックのCNC、サーボモータ、サーボ
アンプは工作機械の内部に組み込まれています。

ファナックは、効率的かつ安全に加工作業を行えるよう日々研究開発を行っています。ファナックのFA商品は世界中の工作機械に搭載され、様々な分野で活躍しています。

部品加工に工作機械やロボドリル、組立・搬送・溶接にはロボット、脂成形にはロボショット、金型加工にはロボカットが活躍しています。世界の製造現場には、ファナックの商品が欠かせません。

サービス事業

顧客サポート体制

ファナックは全世界の270カ所以上のサービス拠点から100カ国以上のお客様を全力でサポートしています。

日本国内では、東京都日野市と愛知県小牧市の2カ所にサービスの中核拠点があります。それぞれにコールセンタ、パーツセンタ、海外向け保守部品庫を設置して、より充実したサービスの提供を
可能にしています。

地域別売上高

売上の約85%が海外向けである。

同社は近年サービスにも注力しており、経営戦略として「壊れない壊れる前に知らせる壊れてもすぐ直せる」や「サービスファースト」を掲げながら生産ラインのゼロダウンタイムと修正再生に取り組んでいる。

同社は四半期ごとに開催される決算電話会議(=ラージ・ミーティング)を除けばIR活動を殆ど実施していないため、事業内容は不明点が多い。これを前提に、同社の限界利益率は5~6割と推定する(全社平均と比べると、限界利益率ならびに営業利益率はFA部門が高く、ロボット部門とロボマシン部門が低いと見られる)。

市場動向

ロボット業界の動向と現状(2022-2023年)

2022年のロボット業界は大幅増の7.2千億円 過去最高を記録

下のグラフは産業用ロボットの生産金額の推移を示したものです。経済産業省の生産動態統計(2023年6月末)によると、2022年の産業用ロボットの生産金額は前年比9.3%増の7,254億円でした。

2022年までの産業用ロボットの生産金額の推移を見ますと、中国を中心とした自動化需要の高まりを受けて上昇傾向にありましたが、一転して米中貿易摩擦の深刻化で19年は減少、2020年は新型コロナの影響を受け横ばいとなりました。一方、2021年は一転して大幅増、2022年には7千億を突破し過去最高を記録しています。

2022年のロボット業界は、人手不足を背景に各国で自動化需要が高まっており、好調な一年でした。国内市場のロボット需要においては一般産業向けの需要が堅調となりました。

海外市場では、中国、米州、欧州での需要が好調でした。EV関連は、生産設備の拡大によって中国や米国で好調に推移しました。一般産業向けは人手不足や生産の自動化を目的に米国や欧州で、中国ではロックダウンや景気回復の遅れが建設器機などの一部で影響を受けたものの、物流や再生可能エネルギー関連の需要が堅調となりました。

ロボットには複数の種類があり、「産業ロボット」、「サービスロボット」などがあります。現在の主力は「産業ロボット」で、自動車などで組立、溶接、塗装などを手掛ける多関節ロボットが中心です。「サービスロボット」は物流や警備、医療などで使われており、近年その対象は食品や飲食など様々な産業に広がっています。

ロボット業界 売上トップ5(2022-2023年)

(業界動向サーチ)

※はロボット関連の部門売上高。2022年のロボット業界の売上高を見ますと、首位のファナックが一歩リード、2位以下においては、ヤマハ発動機と川崎重工業がFUJIを追い上げています。

首位のファナックは工作機械用NC装置で世界首位。全売上高の約42%をロボット事業が占めます。海外売上高比率は約85%で中国が24%、米州23.4%、欧州17.2%と続きます。2位の安川電機はサーボモーター、インバータで世界首位。ロボット事業は全売上高の約40%、海外売上高比率は約7割に達します。

2022-2022年のロボット業界の業績を見ますと、5社中2社が増加、3社が横ばいでした。前年比2ケタ増となったのはファナックと安川電機で、約27~28%の大幅増を記録しています。全体では2022年のロボット業界は好調だったことが分かります。

中長期的には底堅いロボット業界 「協働ロボ」にも注目

近年、日本や米国のような先進国は慢性的な人手不足や、それに伴う収益性の低下という問題を抱えています。また、中国のような中進国でも昨今、賃金の上昇が著しく、省人化ニーズは高まっています。

米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの影響により、ここ数年、足踏み状態が続いたロボット業界ですが、こうした世界的な自動化ニーズの高まりを受け、中長期的には拡大してゆくことが予想されます。

こうした動向の中で、近年注目を集めているのが「協働ロボット」の導入です。協働ロボットとは、人とロボットが協働で作業することを想定したロボットで、従来の産業ロボットのように安全柵で囲う必要がありません。設置スペースが小さくてすむことから、導入がしやすく、費用も抑えられるのが特長で、今後、様々な分野で活用されることが期待されています。

業界大手のファナックは、2020年6月から新型協働ロボット「CRX」を発売開始しました。人に触れるとすぐに止まる安全性と使いやすさ、設置のしやすさが評価されています。

ファナックが発売を開始した協働ロボット「CRX」

短期的には、世界経済の先行き不透明感やロシア、ウクライナや中東問題などの地政学リスクなど不確定要素はありますが、世界的な自動化ニーズの高まりは根強く、中長期的には底堅い需要があると考えられます。

従来は自動車や半導体を中心とした「産業ロボット」が主力でしたが、今後は「協働ロボット」や「サービスロボット」など幅広い分野、産業での活用が期待されます。現在、メーカー各社は様々なロボットの開発を手掛けており、人間とロボットの共生の時代が迫ってきています。

業績

2023年4月26日に発表された2023年3月期の決算は以下です。

連結売上高は前期比16.2%増、経常利益は8.4%増の2,313億2,700万円となっています。

売上高営業利益率は前年の25.00%から22.46%と悪化しました。

自動車関連をはじめとして製造業全般において設備投資が活発に行われました。しかし、半導体等の部品不足による生産活動への影響、原材料価格の高騰、急激な為替変動等、先行き不透明な状況が続きました。

このような中、当グループにおいては、新型コロナウイルスの感染拡大防止を図りつつ、顧客への商品の供給とサービス活動の継続しました。特に半導体等の部品不足については、代替品の採用、設計変更等あらゆる対策を行い、影響を最小限にとどめるべく、会社の総力を挙げて対処しました。

また、こうした厳しい状況の中でも、新商品、新機能の開発や工場の生産能力増強など、将来の発展に向けた取り組みを進めました。

・FA部門

FA部門については、CNCシステムの主要顧客である工作機械業界の需要は、横ばいであった中国を除き好調に推移し、当社のCNCシステムの売上も前期比で増加しました。

FA部門の連結売上高は、2.501億13百万円(前期比10.6%増)、全連結売上高に対する構成比は29.4%となりました。

・ロボット部門

ロボット部門については、中国でEV、物流、再生可能エネルギー関連向けを中心に需要が好調に推移し、売上が前期比で大幅に増加しました。米国では一般産業向けおよびEV関連の需要を取り込んだ自動車産業向けの需要が好調で、欧州でも一般産業向けの需要が好調に推移し、総じて売上が大幅に増加しました。国内では一般産業向けを中心に期の後半に入り需要が堅調で、売上が増加しました。

ロボット部門の連結売上高は、3,569億84百万円(前期比33.0%増)、全連結売上高に対する構成比は41.9%となりました。

・ロボマシン部門

ロボマシン部門については、ロボドリル(小型切削加工機)では、好調だったパソコン、タブレット、スマートフォン市場向けの需要が一巡し、売上が前期比で減少しました。ロボショット(電動射出成形機)では、IT関連、医療市場向けの需要が堅調に推移し、前期と同水準の売上となりました。ロボカット(ワイヤ放電加工機)では、自動車部品市場、医療市場向けの需要が堅調に推移し、売上が増加しました。

ロボマシン部門の連結売上高は、1,327億88百万円(前期比8.2%減)、全連結売上高に対する構成比は15.6%となりました。

・サービス部門

サービス部門については、「サービスファースト」をキーワードに、サービス体制の強化、IT技術の積極的な導入による効率アップ等を進めました。

サービス部門の連結売上高は、1,120億71百万円(前期比19.6%増)、全連結売上高に対する構成比は13.1%となりました。

2024年3月期の連結業績予想は減収減益になります。

2023年7月28日に発表された2024年3月期の1Q決算と同時に、2024年3月期の業績予想の修正(下方修正)がありました。

配当性向は引き続き60%を基本方針として実施しています。

・財務・非財務ハイライト(2014〜2023年)

経営者

初代社長

稲葉 清右衛門(いなば せいえもん、1925年〜2020年)

日本の技術者、経営者。工学博士(東京工業大学)、富士通で電気油圧パルスモーターや数値制御器の研究開発に従事し、NC工作機械の黎明期に大きな業績を残す。

富士通の計算制御部から分離独立したファナックでは、経営者として同社をNC装置、産業用ロボットのトップメーカーに育て上げた。

「研究開発と企業経営は不可分」という考えを持つ。社長になってからも、研究員に目標を与え、月に一回の社長主催の技術会議で報告をさせ、指導していた。名誉会長になってからも、2013年まで経営本部長や研究本部長に就いていた。

経営者

山口賢治 社長兼CEO

1968年生まれ。93年東京大学大学院修了、ファナック入社。生産技術畑を歩み、工場自動化を推進。2008年専務、12年副社長、16年社長、19年4月から社長兼CEO。福島県出身。

山口CEOは、1993年の入社で、ロボット研究所や本社工場長などを務めた後、2016年6月に社長兼COOとFA事業本部長に就任した。

山口氏は成長ドライバーかつ競争力の源泉であるロボットの現場に精通していることに加え、創業の祖である稲葉清右衛門、稲葉会長と継がれてきたFA事業本部長を任されていた、たたき上げである。

山口氏はは「協働ロボットを使ったシンプルな自動化がうまくいく」と見通す。これまで多額の設備投資をかけて極限まで自動化率を高めるのが主流だったが、世界経済が減速する中で、投資費用を抑えて、かつ人の密集を避ける生産ラインを構築する動きも出てきているという。

株価推移

10年チャートで見ると、3,000円から6,000円のレンジで推移しています。

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