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行き着く 旗の先は

ステージにメンバーが登場して横一列に並んだ。

「始まる」と思った瞬間「最後だ」とも思った。

わたしは遊び人としての現場デビューでいて、ラストでもあった。
ファンにしては歴も短くて、とってもとっても短くて。
何せ去年の頭に好きになったばっかり。ホールツアー、地方でも良いから行こうと仕事のスケジュールとカレンダーとにらめっこしている内に、コロナの蔓延とグループの分裂が発表になった。

分裂は寂しくて一度で良いから、GANG PARADEが見たかった。

去年、緊急事態宣言が発令され、わたしは休業を余儀なくされた。不安な中、元気をくれたのがGANG PARADEだった。
GANG PARADEのライブ動画はとても楽しくて、その場にいる遊び人たちもとても楽しんでいて、見ながら振りやダンスを覚え、コールも言えるようになった。
それらは実家にも帰れず、独り暮らしのわたしの小さく狭い自宅でのことで、丸でライブハウスかのように楽しんでいた。
だからクラウドファンディングが始まった時には真っ先に参加した。
本当は失業したらどうしようと心配で、お金を使うことに躊躇っていた時期だったけれど、そこは譲れなかった。
GANG PARADEを見られる、遊び人になれるのなら、と。

分裂したGとP。
わたしは大好きなココちゃんのいるGO TO THE BEDSメインに応援していて、GTTBのライブは参加したことがある。
GTTBの楽曲も大好きだし、メンバーも大好き。だが、GANG PARADEのココちゃんに会ってみたかった。
それが、2021年5月22日に叶うことになった。
三度目の緊急事態宣言が東京都に発令され、わたしは縋るように開催を願っていた。

女性アイドルをこんなに好きになったのも初めてで、友だちも知り合いも1人もいない。それでも、GANG PARADEは大好き、その気持ちだけで会場に向かった。
中野サンプラザ。曇り空だったけど、なんだか煌めいて見えた。

席は想像以上にステージが見やすくて、興奮を隠すのに必死になる。
GTTBライブの時に回りが男性だらけの時があり、少しの寂しさを感じたこともあるけど、今回は左右共に女の子だった。
話すことはおろか、目を合わせることすらしないのに何でか少し安心した。男性の遊び人の方々ごめんなさい。別に怖いとかはないのだけどね。マイノリティの不安てやつか。

ステージを見上げて、宙にぶら下がる「G」のデコレーションを眺めた。
GANG PARADEのステージがそこにある。
1年間楽しみに励みにしていたライブが幕を上げる。
こんな私の想いなんて、昔からそれこそBiSからサキちゃんを応援してきた方やプラニメ、POP、GANG PARADEが出来たばかりの初期から見て来た方々や、ツアーやイベントを回り、メンバーにも覚えてもらっているような方々と比べたら屁みたいなもんだと自嘲する。

けれど、目の前にメンバーが現れて、恋い焦がれたGANG PARADEを見られた感動は自分だけのものだ。
きっと、他の方々の想いや思い出の数には敵わないし、張り合うことなんてしないけれど、未経験だったからこそ、渇望してやまなかった瞬間があって、それを体感できた感動もまた特別なのだ。

GANG PARADEだ。本物だ。
GANG PARADEが目の前にいる。GANG PARADEのライブが始まるんだ。
ユユちゃんだ、ナルハだ、ユアちゃん、ミキちゃん、ドちゃん!サキちゃん!!ココちゃんにツキ!マイカちゃん!!!GANG PARADEだ!!

興奮は既に早すぎる最高潮で、凛としたメンバーの姿にふと、このメンバーのGANG PARADEも最後なんだと胸がキュッとした。

Plastic2Mercy
かっこ良いメンバーがそこにいた。
まだサキちゃんがボブヘアで、マイカちゃんもロングヘアで前髪がある時代のGANG PARADEのライブ動画を前日、不意に見た。
まだまだ初々しくて、どこかたどたどしいけど溌剌として可愛い可愛いアイドルだった。
そんな彼女たちは、かっこいいアイドルになった。時折見せるとびきり魅力的な笑顔たちは可愛い女の子なのだけど、かっこいい。
わたしより全然年下の女の子たちなのだけど、憧れるくらいのかっこ良さだ。キラキラ輝いていて尚且つシャープで強い。そんなGANG PARADEの強さが好きだ。

着いて来いよ!!と言い放たれるような。腕を引っ張られるような。
そんな彼女たちの虜だった。

遊び人デビューを飾ったことに感慨無量になってる内に2曲目のUNIT。
この曲自体、大好きで音源を聴いてるだけで涙ぐむこともある。
だから生で聴けてウルウルしていたのだが、まだ2曲目!!と自分を叱咤激励した。
だが、後半にサキちゃんとミキちゃんが2人並んで歌うシーンで、ミキちゃんが涙を見せた。
サキちゃんは諭すように優しくミキちゃんの頭に触れていた。
そこで、堪えていた涙が溢れてしまった。
ミキちゃんの「(泣いては)いけない!」と自制する気持ちや、堪えられない感情が顔を覆うかわいらしい指の隙間から零れて見えた。

サキちゃんはいつも凛々しくかっこ良かった。
ピシッと背筋が伸びて、毅然と前を向いて。お姉さんだからとか経験豊富とか坊主キャラだとか、そんなのとは別に冴えわたる凛々しさがあった。
けれど、その日のサキちゃんは驚くくらい大きな優しさを湛えていた。
女神のような母のような、メンバーを遊び人を包み込むような優しい表情だった。
表舞台から退いたことも要因かもしれない。

ステージに立つサキちゃんは厳しさと緊張感を携えていて、それすらも自分の武器で、それもまた役割のように見えていた。
それが今日はとても柔和で穏やかだった。
もちろん、凛とした最高にかっこいいサキちゃんに代わりはないのだけど、嬉しいような少し寂しいような。それが最後を浮かばせるから。
MCでもひたすら穏やかで優しくて神々しく見えた。慈愛とかって言葉がよく似合って見えた。色んなことを乗り越えたからこその愛だ。その表情で、歴の浅い浅いわたしでも彼女に刻まれた歴史を垣間見れた気がする。とても烏滸がましいけれど。

背後で揺れる白いドレープの儚い揺らめきが、なんだか余計に切なかった。たくさんの拍手に蕩けそうだと微笑んだサキちゃんの笑顔は一生懸命忘れない。
もっと見たかったな。
もっと早く知られれば良かったな。

感動だけでなく、ココちゃんの華麗な側転に喜んだり、弾けんばかりの笑顔につられたり。ユアちゃんの真っ直ぐな歌声に酔いしれたり、ナルハの小さい体から溢れるパワーに圧倒的されたり、ユユちゃんのお人形みたいな可愛さにうっとりしたし、ドちゃんの伸びやかな歌声、マイカの滑らかでキレのあるダンス、ミキちゃんのくしゃりとした笑顔、ツキのパワフルでしかない大きな声、シルエットですらかっこ良いサキちゃんのポージング。楽しくて素敵で夢のようだった。遊園地みたいに目まぐるしく愉しさが次々迫り来る、本当に其処は此所は「遊び場」だった。

アンコール最後の2回目のP2M。
生でずっと聴きたかったココちゃんの「飛ぶよ!!!!」
全身で受け止めて、めいっぱい飛んだ。回りもこんなにジャンプしてるかわからなったけど、そんなの気にすることなく飛んだ。
終わらないで欲しいのと、ありがとうと大好きと色んな気持ちがごちゃ混ぜになってた。顔は涙にまみれてたけど拭くこともせずにマスクの中で歌いながら、赤に光るLEDバンドの腕を振り上げ、夢中で飛んでいた。
歌うと言ったって込み上げる涙のせいで、ほとんど呻き声だったけれど。

終わらないで。終わらないで。

この瞬間瞬間を心に体に全て焼き付けたかったから、そう思ってしまいながら、精一杯楽しんだ。

嗚咽と涙と溢れる歌声にまみれて、このマスクの中は混沌の世界なんじゃないかと思うくらいぐちゃぐちゃだった。
GANG PARADEが姿を消したステージを茫然と見上げて放心した。
終わった。終わってしまった。
そう思って、また泣きそうだった。
だけど、楽しかった。遊び場で遊ぶ遊び人になれた。その喜びが染みだして、わたしの心はとてもしあわせに満たされた。このしあわせは畢境忘れない。宝物のようにずっと胸にしまって大切にする。

ギャンパレよ、永遠に。



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