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其処から|collaboration|詩

【poetry relay collaboration】

「recycle shop/end of autumn」

秋の間だけ店を開けている
リサイクルショップに
旧い知人が売られていた
旧い知人は
とても美しい声を持っていた
十月が置き忘れた
ちいさな陽だまりの窓辺に佇む
旧い楽器のような声帯を持っていた
ぼくは何一つ楽器は弾けないので
彼女の声を耳元で聴くのが好きだった
リサイクルショップに訪れる者たちは
知人の前で一瞬立ち止まるが
慌ただしく入れ替わる
商品の群れに翻弄されながら
通り過ぎるだけの人になる
旧い知人はそこから動けない
ぼくは旧い知人の引き出しを
上から順々に開けてみた
一番下の引き出しに手をかけた時に
彼女は一瞬身をすくめ
羞恥で震える視線をぼくに向けた
ぼくはそれ以上
引き出しを開けられなかった
ぼくは秋が通り過ぎるのを待っていた
またひとつ
秋が通り過ぎてゆきますね
手編みのニットのような秋が、
犬ころの丸い背中に不時着した秋が
交差点で行き交う人たちの肩越しに
破壊と再生の印をつける秋が
旧い知人の秋は、ずっと
動けない風の行方を目で追っていた

by ちぇりこ。

「Coffee Shop」

動けない風の行方を目で追っていた

肩越しに呼びかけてくる古傷は
少しずつ僕の鼓動に色を乗せていく
使えないカーラジオから波の音
見上げた先には切り取られた夜空
月から星が生まれる瞬間をみた
思わず伸ばした指さきで
それを摘まんだ素振りして独り笑う

すべての音が揃った気がした
街の片隅にあるコーヒーショップ
もう店じまいだと微笑む砂時計
このなかでいちばん苦い豆を下さい

きっと其れが似合っているから

by Mg.Asano

「逆回しの時計と君」

きっと其れが似合っているから

君からの風の声に頬を染めた晩秋

季節は秋を呑み込み一時に凍える冬
迎える準備はまだ間に合ってなかったよ

時計を逆回しして君が微笑んだ季節に

冬に似合うマフラーを編んだの
君が柔らかな陽射しで微笑むあの場所

間に合って良かった
きちんと君から受け取る事出来たよ

大切な二人だけの秘密の共有

by Kazu

「Secret base」

大切な二人だけの秘密の共有

そんな事の出来る場所を探していた
お前の好きな十二月が来る前に
季節の門番が仁王立ちする秋の終わり
北の国では初めての雪が降ったらしい

ドーナツの穴を潜り抜けた先には
ホットココアの湯気が揺れている
もう駄目だと思うから そう言って
渡された車の鍵
髑髏の装飾が施された火の鳥
その車にはドアが無かった

結構 楽しいだろう
もうすぐ秘密基地だ
吐き気がする様な電飾で部屋を飾ろう
お前と二人で

by Seiji Arita

collaboration :
 Kazu & Seiji Arita & ちぇりこ。

       Thank you...My friend's

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