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全ての子どもを大切に育てられる社会に

この記事は、Kacotam × 寄付月間2023アドベントカレンダーの16日目の記事です。

 一時保護所における学習支援「ポル」で活動するメンバーがポルの活動を通して考えたことについて書きました。

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 昨年から“ポル”という活動に参加している。虐待等で保護された子どものための民間の一時保護所の学習支援ボランティアだ。公共交通を乗り継ぎ、大きめの民家のような施設に通う。児相や警察に保護された子どもたちは、次の行き先が決まるまでの数週間をここで過ごすが、その間基本的に学校に通うことができないため、学習支援が必要となる。学習時間の前後にはゲームやおもちゃで遊んだり、天気が良ければ一緒に公園に行くこともある。

 とても様々な子がやってくる。私達はできるだけ彼らに安心して貰い、信頼関係を築くようにしながら、一人一人の状況に合わせた学習支援をしていく。小学校に入ったばかりの少年とは、一緒に遊んで仲良くなるだけで初日の学習時間が終わってしまうこともある。そういうときは何日もかけて少しずつ勉強に慣れていくようにする。かと思えば、学習初日に大学受験レベルの難しい数学の質問を持ってくる高校生もいる。あまりのギャップに頭の切り替えが追いつかず、眩暈がしそうになることもある。

 子どもたちは、虐待だけではなく、様々な問題を抱えている。生まれつきの障害を持っていたり、虐待によって心身の発達に影響が出ることもある。虐待のために学校に通えなかったり、自宅学習ができなかったりして勉強が遅れている子もいる。不登校の子もいる。母子家庭の困難や貧困の問題もある。彼らの周りには本当に様々な社会問題が凝集しているように見える。子育ての役割の主要部分を家庭が担う社会では、家庭に余裕があれば、子どもが何か困難を抱えてもどうにか対処できるが、家庭に余裕がなかったり、虐待等の問題を抱えるとき、非常に困難な状況に陥ってしまうのだと思う。

 あるとき、とても高い学力を持つ少年が来た。数年間学校へ行けなかったにもかかわらず、独学で勉強を続けていた。数学の教科書を貸すと学習時間以外も一人でどんどん勉強し、メンバーを質問攻めにした。理系出身者でないと答えられないような質の高い質問を連発し、メンバーを困らせた。大学進学の意思も明確だった。裕福な家庭に生まれていれば、スムーズに上位の大学に進学できただろう。でも彼は経済その他非常に大きなハンデを背負いながら、一人で受験に挑まなくてはならない

 もし彼のような人物が、本来の才能に合った大学や大学院に行くことができれば、日本の大学の力となってくれるだろう。長く苦労して独学した分、普通の学生とは違う発想や思考法、得意分野を持っている。社会に必要な多様性の中の、本当に貴重な人材の一人になるだろう。他の子たちも同様だ。一人一人、その子に合った仕方で大切に育てられれば、それが明日の社会の実力になる。治安や豊かさにつながる。
 教育は、本来その子のためにあるもので、社会の側の都合で行うものではないけれど、それはすぐに私達自身に返ってくる。被虐待児を取り巻く環境は過酷だ。人手も予算も制度も、足りないものだらけである。でも、逆に言えば、できることは沢山ある。一冊の数学の本を寄付するだけでも、それを糧に人生を切り拓いてくれる子だっているかもしれないのだ。すべての子供を大切に育てられる社会になってほしい。

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