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【キヤノン EOS R8」実写レビュー】軽量コンパクトなのに目を見張るAF性能。サブのつもりで買ったらメイン機になりそうな実力派です

キヤノンからフルサイズのミラーレス機「EOS R8」とキットレンズとなるコンパクトな標準ズームレンズ「RF24-50mmF4.5-6.3 IS STM」が本日発売されました!ここでは家電批評5月号の記事に加筆したレビューをお届けします。

キヤノン EOS R8とは?

EOS R8の特徴を簡単にまとめると、EOS RシリーズのエントリーモデルであるEOS RPのボディをベースに、最新のEOS R6 Mark IIと同じ約2420万画素のイメージセンサーと映像エンジンDIGIC X(最新世代)を組み合わせたモデルである、となります。

よりシンプルに言えば、EOS RP譲りのコンパクトなボディに EOS R6 Mark IIのハイスペックな撮影性能を併せ持ったカメラです。例えば、電子シャッター時に最高40コマ/秒となる超高速連写や、進化した被写体検出AFなど、基本的な撮影性能はEOS R6 Mark IIの能力を引き継いでいます。そもそも、EOS R6 Mark II自体が最上位機種であるEOS R3のAFアルゴリズムを継承し、さらにディープラーニング技術によって追尾性能と被写体の検出性能を進化させた機能面で言えばキヤノン機で最も進化したAFを搭載するモデルです。そのEOS R6 Mark Ⅱの撮影性能を継承しているのですからEOS R8は「羊の皮を被った狼」という表現がぴったりと当てはまるでしょう。EOS R6 Mark IIのレビューは以下からどうぞ!

EOS R6 Mark Ⅱ・RPとの比較

もちろんEOS R6 Mark IIと比べると、

  • メカシャッター時は電子先幕シャッターしか選べず、シャッター速度も最高1/4000秒までとなっているほか連写性能が最高約12コマ/秒から最高約6コマ/秒へとスペックダウン

  • バッテリにエントリークラスに用いられる「LP-E17」を採用

  • ボディ内手ブレ補正を持っていない

などのそれなりの差別化が図られていますが、本機のコンセプトとして小型軽量を優先した結果とも理解できます。

ちなみにサイズはEOS RPと比べて高さが1.1mmだけ大きくなっていますがそれ以外のサイズは同一。重量に至っては約24g軽量化されていますので、キヤノンの軽量化に対する意気込みは鬼気迫るものがあります。サイズがほぼ同じということは、つまりEOS RPに対応するエクステンショングリップ「EG-E1」が装着出来るということでもあります。

公式Webページでは本機をミドルクラスという位置付けにしていますが、フルサイズ・ミラーレスのEOSとしては新しい世代のエントリーモデルと言うべきでしょう。

そんな本機の最大のネックは価格。EOS RPに撮影性能の大幅な向上が影響しているのか、公式オンラインショップではボディ単体で26万4000円、RF24-50mmF4.5-6.3 IS STMとの組み合わせになるレンズキットが29万3700円です。ちなみにキットとなっているレンズを単体で購入する場合は5万380円ですので、レンズキットで購入した方がお得に購入できます。
本機のベースとなったEOS RPはボディ単体で13万5300円とちょうど半分の価格。果たして、納得できる価格となっているのか、気になるところです。

【ボディのデザインや操作性】グリップや起動レスポンスはさすがの完成度

基本的な操作デザインはEOS RPを引き継いでいます。具体的にはEOS R6 MarkⅡなどのハイアマチュア向けのモデルにあるボディ背面のサブ電子ダイヤルやマルチコントローラーは備えていませんが、2つの電子ダイヤルを備えていますし、電源操作含めて右手だけで撮影操作が完結できるデザインとなっているので撮影に集中して取り組めます。

マルチコントローラーは非搭載。ただ、小型ボディを考えると納得できる部分です。EOS 5Dや6D系から乗り換えるユーザーは操作性の違いに注意 ©︎fort

またキヤノン機の特徴でもある分かりやすいUIが採用されていることと、上述の通り良好な操作性、指掛かりのよいグリップと軽量なボディで使い心地は上々です。起動や操作に対するレスポンスなどの使用感はEOS R6 Mark IIと同等で非常に印象が良く、覗けばすぐに表示される覗き心地のいいEVFや扱いやすい操作性など、道具としての完成度には眼を見張るものがあります。

グリップに指を引っ掛けるだけでもバランスがとれました ©︎fort

触れた感じはEOS RPの記憶よりも質感が向上しているように感じましたが、20万円台後半のプライスタグからするとチープな感触であることは否めません。とはいえ、「日常使いでも肩肘張らない」と思えばそこまで悪い気はしませんでした。ボディは防塵防滴に配慮された構造となっており、各部にシーリングが施されていますが、具体的な等級については公表されていません。

メディアスロットがバッテリ室に同居するタイプなので、頻繁にメディアを交換するような使い方ではアクセス性の点で若干気になりますが、バッテリ蓋にはバネがついておりチープなつくりではありません。

【実写インプレ】


実写ではスナップ撮影と動物園、鉄道模型、ポートレート、夜間での航空機の離発着を流し撮りしてみました。

スナップシーン

まずスナップシーンでは全域AFの賢さが印象的でした。画角内の距離の把握が的確で「ここが被写体ですね?」と狙い通りにAFしてくれる頻度が非常に高く、任意でAFポイントを指定することなくカメラを信頼して迅速に撮影できたのは素晴らしい体験でした。

RF24-105mm F4-7.1 IS STM 1/125s F8 ISO400 ©︎豊田慶記

また新レンズ「RF24-50mmF4.5-6.3 IS STM」のシャープな写りも魅力的。巨大化の進むフルサイズ用レンズのトレンドに反して、コンパクトながら見事な性能です。ただし、テレ側が50mmと長くはないので、より幅広いシーンに対応したい場合にはRF24-105mmを選択した方がよいかも知れません。ともあれ、本レンズのアドバンテージは圧倒的なコンパクトサイズですので、気軽に持ち歩くことが出来ますし、熟練者のように撮影対象がハッキリしているユーザーの懐刀として、期待に応えてくれる1本という感触があります。

EOS R8+RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM 1/60s F6.3 ISO320 ©︎豊田慶記
EOS R8+RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM 1/200s F10 ISO100 ©︎豊田慶記
RF24-50mmは沈胴式レンズなので撮影時は全長が伸びます©︎fort

セルフィも撮影しやすいカメラです。24-50mmレンズでモデルさんに試してもらったところ「カメラの中心に自分を配置しやすかった」とのこと。逆光のセルフィでこの自動露出は見事ではないでしょうか。

EOS R8 + RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM 1/400s F4.5 ISO100 ©︎大川柚
グリップとレンズの間に距離があることでセルフィー時のフレーミングがしやすいようです。

動物園

動物園ではRF100-400mmF5.6-8 IS STMと組み合わせで撮影しました。被写体認識AFが非常に賢く、特に檻などの障害物の影響が少ない条件では申し分ないAF性能を発揮してくれました。また「自動」でも不都合を感じませんでしたが、背景に他のお客さんが写り込んでしまうようなシーンでは、どうしてもそちらにAFしてしまう頻度が増えました。しかし、ファミリーで動物園を訪れ、動物を撮った後に家族と記念写真、のようなシーンでも「自動」のままで快適に撮れるというメリットがあります。

また動物園で観察することの出来る種族であれば基本的に瞳AFが動作するほどの柔軟性をもっていますので、構図に集中して撮影できます。

EOS R8+RF100-400mm F5.6-8 IS USM 1/800s F9 ISO1000 ©︎豊田慶記
EOS R8+RF100-400mm F5.6-8 IS USM 1/800s F9 ISO1250 ©︎豊田慶記

好印象の一方で、檻と被写体との距離感によっては檻にAFしてしまう頻度が高いことが気になりました。全域AF以外にもスポット1点AFや領域拡大AFなど様々なモードを試しましたが、筆者が試した限りではあまり有効とは言えなかったので、AFが檻などの障害物を掴んでしまった場合には被写体にレンズを向けることを止め、一旦遠くにAFさせてから再度被写体に対してAFし直す、などの使い熟しのコツを把握する必要はありそうです。

とは言え、30万円以下の機種ではベストと言っていいほど快適に撮影することができました。

鉄道模型

屋内での撮影なので薄暗く光量は少なめ、小さな被写体の割に移動量が大きいと言う鉄道模型の特性はカメラが苦手な撮影条件に当てはまります。そういったこともあり、以前のテストではLUMIX S5 IIが苦戦していました。

しかし、EOS R8は難なく対応できていると評価できます。

撮影対象が明確な場合は、検出する被写体を「自動」で撮影するよりも乗り物優先など対象に合わせて設定しておいた方がAFが迷う頻度を下げられました。それでもシビアに評価すれば、10~15%の頻度で上手く検出もしくは追従できない場合がありましたが、視点を変えれば、誰でも最低で70%以上のヒット率で撮影を楽しめる、ということでもあります。

バッファも潤沢で、メカシャッター時にISO12800でRAW+JPEG記録という設定で、一度に70コマまで連写しても息継ぎすることはありませんでした。
AFシステムの実際の動きにEVFやモニターに表示されるAFポイントがしっかり追従できており、遅れは感じられません。ラグがあると撮れているようで撮れていない、撮れていないようで撮れているといった不安定な印象を抱きがちですが、EOS R8は撮影中の信頼感も申し分ありません。

以下すべてRF100-400mm F5.6-8 IS USM 1/500s F8 ISO25600 ©︎豊田慶記

ポートレート

ポートレートシーンでは、モデルさんに大きな動きで飛び回ってもらったり、ドキュメンタリー風に密着しながら撮影してみましたが、非常に高い精度で顔や目にAFしてくれ驚かされました。

このように撮影者もモデルも歩きながら撮影するのも容易です。こうしたシーンではバリアングルモニターが活躍します

ほんの1-2年前まではハイエンドモデルでなければ楽しめなかったような撮影が、EOS R8では手軽に楽しむ事ができます。以下はAFエリアを全域AF(カメラ任せ)、被写体検知は自動にして連写した例です。

EOS R8+RF100-400mm F5.6-8 IS USM 1/800s F9 ISO1000  ©︎豊田慶記
EOS R8+RF100-400mm F5.6-8 IS USM 1/800s F9 ISO1000 ©︎豊田慶記
EOS R8+RF100-400mm F5.6-8 IS USM 1/800s F9 ISO1000  ©︎豊田慶記

もちろん、若干のミスショットはあり、検出する被写体を「自動」のままで撮るよりも「人物」を選択した方が安定性が向上しますが、このように激しく動く人物でも簡単に撮影が可能です。

さらに、グリップがしっかりしているうえボディが軽いので、手を伸ばして不安定な態勢で撮影しても身体への負担は小さいというのも魅力です。普段ハイエンドモデルを使っている人であっても、本機のコンパクトなサイズを活かした撮影用に適性があるように感じました。

EOS R8 + RF50mm F1.8 STM 1/2500s F2 ISO200 ©︎豊田慶記
EOS R8 + RF50mm F1.8 STM 1/4000s F2 ISO200 ©︎豊田慶記

サブ機のつもりで買ってみたらいつの間にかメイン機になっていた、という下剋上が起こりそうなカメラでもあります。

ちなみ、ソニー α7 Ⅳでも同じような撮影をしてみました(R8はピクチャースタイルニュートラル、α7 ⅣはクリエイティブルックPPです)。

α7 Ⅳ + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS 1/640s F6.3 ISO500 ©︎豊田慶記
α7 Ⅳ + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS 1/640s F6.3 ISO800 ©︎豊田慶記

航空機

夕暮れ時の航空機を流し撮りする場合でもEOS R8の好印象は揺らぎませんでした。EVFの表示ラグが非常に少ないので撮影していて違和感が小さいことが理由です。またEVFの表示レートの低下が目立たないという点も好印象です。解像度こそ控えめですが、EOS R8のEVFは本当に実用的です。

EOS R8+RF100-400mm F5.6-8 IS USM 1/640s F8 ISO4000(3/15 17:30ごろ)©︎豊田慶記
EOS R8+RF100-400mm F5.6-8 IS USM 1/30s F8 ISO8000(3/15 18:00ごろ)©︎豊田慶記

レンズの開放F値が暗いこともあり、日没後になるとAFが迷う頻度は増えてしまいましたが、それでも十分に信頼に足る性能があると評価できます。今回組み合わせたRF100-400mmF5.6-8 IS STMは開放F値が暗いので、日中向きのレンズではありましたが、AFのレスポンスが良く写りも良好です。その上、テレ側が400mmという超望遠ズームレンズとしては軽量(約635g)にできていますので、航空機撮影の入門レンズとしても魅力的です。

他のシーンと同じく、検出する被写体は「自動」よりも「乗り物優先」を選択した方がAFの安定性は明らかに上でした。また旅客機の離着陸シーンでであれば電子シャッター時のローリング歪みが気になることはありません。被写体を追いやすいので電子シャッターで撮ると初心者でも流し撮りに気軽に挑戦できます。

飛行機のコクピットを優先的に検知します
コクピットの検知ができない場合は胴体を認識

HDR動体優先

HDR動体優先モードはEOS R6 Mark IIから搭載された新機能のひとつ。通常のHDR撮影では1回の撮影でカメラが自動で露出をずらしながら複数枚の画像を撮影する必要があったが、HDR動体優先では1ショットのみで肉眼に近いダイナミックレンジの画像を生成する機能です。

注意点は(1)ISO感度が800以上の設定となること(2)JPEG記録のみとなること(3)撮影後に処理のため、数秒間BUSYとなることの3つです。

通常撮影(ISO4000)©︎豊田慶記
HDR動体優先(ISO4000)©︎豊田慶記
通常撮影(ISO3200)©︎豊田慶記
HDR動体優先(ISO4000)©︎豊田慶記

HDR動体優先画像では階調豊かになりますがコントラストが少し低く、写真としてのインパクトには欠ける印象。テストは夕方だったので、晴天日中シーンであればもっとことなる印象になった可能性があります。

4K動画

小型軽量で4K60Pの動画も収録できるので、VLOG用途でEOS R8に注目している人もいると思います。そこで気になるのがボディ内手ブレ補正を搭載していないことです。以下はモデルさんも撮影者もゆっくり歩きながら撮影した例と、自撮り動画の例となります。自撮りはVLOGを想定してカメラ任せで撮影しました。

レンズはいずれも手ブレ補正つきのRF24-50mm F4.5-6.3 IS STM。EOS R8の動画電子ISを「強」で有効にしています。補正のためクロップされてしまいますが、手ブレの軽減はしっかりできていることがわかります。

なお、撮影当日は強風でしたので風切音が大きく入っていますが、内蔵マイクで声がどんな感じに入るかの参考にもなるかと思います。

【EOS R8のまとめ】

  • AF性能には眼を見張るものがある

  • 手馴染みのいいグリップと道具としての使い勝手の良さが印象的

  • バッファ性能が潤沢であったこと

といった理由で、EOS R8は軽量コンパクトかつフルサイズの実質的なエントリー機という位置付けに止まらない、それを覆すほどの実力を秘めており、そこにまず驚かされました。

とはいえ、課題もあります。それは、バッテリ消費の激しさです。筆者の撮影スタイルで、連写せず単写のみでEVFと背面モニターの割合が5:5程度の使い方をして、満充電から400ショット時点でバッテリの残量表示が赤色になりました。筆者は撮影枚数が多いほうなので、この結果の80%程度を参考値とするとおそらく一般的な使用条件に近い結果となりそうですので、320コマ程度が安心して撮影できる枚数だと考えています。

たしかにカタログスペック(220枚)を上回ってはいますが、丸一日撮影を楽しんだり、4K60p記録が可能になったことで動画を楽しみたいと考えている場合には予備のバッテリか、USB-PD対応のモバイルバッテリーの準備は必須でしょう。

それ以外には不満らしい不満はありませんでした。撮影前にはプライスタグに不満を覚えましたが、コンパクトさとこの性能であれば納得ができます。今後、供給が安定し価格が落ち着くなどの値動きがあれば、お買い得感がでてきそうです。

EOS R8を買うべき人
・ハイクラス機のサブとして
・EOS 6D/5D系のユーザーが軽量なミラーレス移行したい場合
・予算はあるけれど、何を買えばいいのか分からないユーザー
・動物園で撮影を楽しみたいユーザー
EOS R8を見送るべき人
・メカシャッターでの連写性能を重視するユーザー
・コスパを重視したいユーザー

画質:18/20pt:24MP機としては業界標準。扱いやすいデータ量と必要十分な高感度画質など、トータルバランスに優れています。

機能性:18/20pt:ミドル機としては卓越した性能を持っており、実力的にも頭一つ抜けたAF性能を持っています。メカシャッターのコマ速とボディ内手ブレ補正を持っていないことがそれぞれマイナス。

使い勝手:19/20:バッテリ消費が大きいことが最大のネック。それ以外は非常に高い次元でバランスされています。

サイズ・重量:20/20:キットレンズ装着状態で約671gと非常に軽量なので、毎日持ち歩いても苦になりません。

コスパ:16/20:撮影性能や使い心地からすると妥当な価格ですが、それでもなおインパクトのある価格であることは否定できません。

RF50mmを装着した状態©︎fort
EOS R8 + RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM ©︎豊田慶記
EOS R8 + RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM ©︎豊田慶記

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