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認知症介護ガジェット:カレンダーが読めなくなってもキングジムの電波時計なら理解できるかも

ウチのおかんがボケちゃいまして」とは…… 突然認知症の親を介護することになったライター岡野学さんが、認知症介護の先輩でもある介護作家・工藤広伸(くどひろ)さんのアドバイスを受けつつ、モノやサービスを使って介護をラクにできないか模索する介護実践記です。家電だけでなく、日用品、生活雑貨、食品など、便利そうなものはなんでも試していきます!

本記事の初出は家電批評2021年6月号です。
執筆:岡野学/協力:工藤広伸/編集:家電批評編集部(商品紹介のリンクはアフィリエイトを含みません)

認知症介護の悩み:曜日感覚がなくなったおかんに「今日がいつか?」を教えたい

カレンダーのどこが「今日」なのかわからない!
僕たちが普段生活をしていても、GWやお正月といった長期の休み中だと、たまに「あれ? 今日って何曜日だっけ?」と、曜日がわからなくなることってありますよね。でも、カレンダーを見たり、行動をたどったり、あるいはテレビをつけてみたりすれば、パッと思い出せます。

ところが、認知症の人だとそうもいきません。昨日や一昨日が何月何日だったのか、自分は昨日何をしたのかなどを思い出せなくなるので、カレンダーを見ても「今日がいつなのか?」がわかりません。これは、「見当識障害」という認知症の代表的な症状のひとつですが、月日がわからないので当然曜日もわかりません。朝なのか夜なのか、どの季節なのかの感覚もなくなっていきます。

岡野家・工藤家で見当識障害によりおきた困りごとの例
◯ゴミ出しの日を間違える
◯週2回ある趣味の集いに行けないこともある
◯来るはずのないデイサービスの送迎を、真冬や真夏に外で待ち続ける

家電批評2021年6月号

最悪命にかかわることだってある
曜日がわからないぐらいどうってことないと思っていたら大間違い。くどひろさんのケースのように、最悪命にかかわることだってあるんです。おかんも、月日や曜日の感覚がまったくありません。僕が原稿を書いている今は4月ですが、何月か聞いてみたら「2月でしょ?」と返ってきました。ただ、これは“電話で話しているとき”の反応。実は、直接会って同じことを聞くと、おかんはケータイで日付や曜日を確認して、正確に答えてくれます。

これを読んで「なんだ、ケータイで確認できるなら大丈夫じゃん」と思った人もいるかもしれません。実際、僕もそうでした。でも、不思議なことに実家でおかんと同居している兄から「おかんがゴミ捨ての日を間違えて近所の人に注意されたっぽい」「ここ数週間(趣味で週2回通っている)グラウンド・ゴルフに行けてなそう」といったLINEがちょいちょい届きます。

「いったいなんで?」と思いながらも、何か対策は必要だと考え、くどひろさんに相談すると「イヤでも目に入る、曜日と日にちの表示がめちゃくちゃデカい電波時計がありますよ」とのこと。くどひろさんの実家にはすでに導入済みで、曜日間違いもかなり少なくなったんだとか。これはかなり期待が持てそうです!

電波時計3製品をテストしてみました

現在、曜日表示の大きな電波時計はアデッソとキングジムの2社から販売されています。アデッソはメガサイズ曜日表示のパイオニア、キングジムは高齢者向けブランド「arema」の製品です。

今回はこの2つにAmazonの売れ筋ランキングで1位(取材時)だったセイコーの曜日表示機能付きの電波時計を加え「曜日がわかるまでどれくらい時間がかかるのか」をテストしてみました。

テストした電波時計のラインナップ

テストは、おかんがケータイで曜日を確認できないように通話で実施。すぐ発見されてしまうと比較にならないので、視界に入らなそうなベッド脇に時計を置きました。そのうえで「今日は何曜日?」と聞き、正しい曜日を言えるまでの時間を測定。当てずっぽうで言う可能性もあるので、見守りカメラで映像を見ながらテストしました。

テスト1:視認性

サイズの違いはご覧の通りです
曜日のサイズとして記載している寸法は実測です。表示される曜日によって若干異なる場合があります
  • セイコー:日時、曜日、温度、湿度など情報が多いので、曜日表示もかなり小さいです

  • アデッソ:日にちと曜日が大きい電波時計の元祖。遠くからでもわかりやすいサイズ

  • キングジム:後発のキングジムの曜日表示は、本体の大きさを生かした特大サイズです

テスト2:今日は何曜日?と聞いて時計に気づくまでの時間

セイコーは認知症に関係なく「小さく見づらい」。アデッソは軽度の認知症 なら十分な サイズかも。キングジムは存在感ありあり で邪魔と 感じるかもしれません
  • セイコー:曜日を聞いてもカレンダーを見るばかりで時計には目を向けず。「テーブルの時計に……」と言ってようやく発見

  • アデッソ:最初の反応はセイコーと同じ。ただ「部屋をよく見渡してみな」と言ったところ、すぐに曜日を発見できました

  • キングジム:やはり最初はカレンダーを見ましたが、その後ノーヒントで曜日を発見。大きすぎる本体の存在感が効いたのかも!?

テスト結果はキングジムの圧勝

幅40cmオーバーの“見逃せない” デカさ!

テスト結果は上に示したとおり、キングジムの圧勝。キングジムの勝因は、曜日表示の大きさもさることながら、本体自体の大きさにもありそうです。というのも、キングジムは一度「邪魔」という理由でおかんに片付けられてしまい、テストに失敗したんですよね。この感覚が残っていたから、自然と目が向き、曜日の発見につながったように感じました。ちなみに、実際に使うときには、壁掛けしてカレンダーの横に設置しようと思います!

なお、ケータイで曜日を確認できるのに間違う理由については、テスト中におかんが「曜日なんて、カレンダー見りゃわかる」と言うのを聞いて、なんとなく理解できた気がしました。おそらく、おかん自身は今でも月日や曜日の感覚があると思っていて、誰かに聞かれでもしない限りはカレンダーだけ見て行動していたんでしょうね。

カレンダー、アナログ時計、電波時計の3点セットが理想的な使い方

本連載を監修しているくどひろさんが実践している使い方がこちら。曜日を知るための電波時計は、予定を書き込んだカレンダーの近くに置いておくと、すぐに見比べられるので効果がアップします。さらに、見慣れたアナログ時計を近くに設置しておくことで、時間を把握しやすくしておくのもポイントです。

このように巨大表示で曜日を確認できる電波時計は、認知症の介護に役立つ可能性があります。デカさこそ正義! ただし、設置場所には工夫が必要かもしれません。

執筆・検証:岡野学
認知症の母親をもつ40代ライター(都内在住)。実家から徒歩15分の距離に住み、日々リモート介護に役立つものを物色
監修:介護作家・ブロガー工藤広伸
ガジェットを使ったリモート介護を実践する介護作家。音声メディア「Voicy」初となる介護チャンネルにて、介護に役立つ情報を発信中

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