無色

詩です。



詩集を読んでいるとき、本を開いたまま、
人間は文字を与えなかった音でも発音できるな、
などと思い、天井の木目を見ていると
宇宙から黒色透明の蜜が垂れてくることがある
起き抜けのヒグマのように
のっそのっそ動いているが、
進路は確実に私に向かっている
私は≪女神のよだれ≫とメモに書く
 月のクレーターのフチに
 バーバパパのお風呂用まくらを置いて、
 脚を投げ出し横になっていると
 地平線を覆い尽くしていた夜が流れ込んでくる
 夜は煮込んだ骨のようにとろとろで、
 皮膚に快感を与えながら使い物にならなくする
 
ハチの速度で闇から闇へ移動していったレッドライトは、
地上を駆ける車だろうか、
空を走る流れ星だろうか
太陽が吐いた気焔は、空間でオーケストラのように爆発して
無数のドクターフィッシュになる
魚群にくすぐられ続ける私の
残ったものがあったとしたら、お手数ですが
月曜日に燃えるゴミと袋を分けて出してください



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