【詩】はさみ

月光に月より月をかんじてしまうのは、にん
げんは光しかみえないから。月が、月が、と
言うときに必要なのは光だけで、かわいたほ
しじゃない。そらとそらの、間にあるぎん色
の埃が、月と地球のあいだにある連結に、ゆ
っくりと力を加えて分かつ。緩やかなだんれ
つは、心地よくてさみしい。
 
ぎん色のかがやきはほねをかくしている。錆
びはそのかがやきをかくしている。大粒の雨
でなにもかも錆びた街。鉄は一千度で撲殺さ
れる。ゆめもさんそも叩きだされて、かわい
たほねだけになるから、ぎん色はかがやく。
そのかがやきをかくすから、錆びはうつくし
い。
死をかかえているきみが好きだ。たぶんにん
げんとして。男としてとか女としてとかよく
わからないから。こんどお茶しよう。どうし
てお酒のまないのなんて聞かないでね。
 
ナイフでつけられた傷は勲章になる。ナイキ
のロゴみたいな。でも幸福でつけられた傷は、
ユーチューブだったらモザイク処理の、規制
対象な傷痕。ふてきせつなこんてんつです。
わたしの人生は。
じょきりじょきりがとおり過ぎたあとの、星
月夜とぎん色の海。

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