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シーソーシークワーサー Ⅱ【62 半分嘘で、半分本音 】

【シーソーシークワサーⅠのあらすじ】

 母を亡くし、その孤独感から、全てを捨てて沖縄から出た凡人(ボンド)こと、元のホストの春未(はるみ)。

 一番に連絡をとったのは、東京の出版社に勤める絢だった。

 絢に会うまでの道のり、人々との出会いで得たことは何だったのだろう。島に帰った凡人は、母亡き後の、半年間時が止まっていた空間に佇みながら、生い立ちを振り返っていた。

 生前の凡人の母、那月は凡人を守って生き抜くためにある決断をしていたのだが……


Ⅱ【62 半分嘘で、半分本音 】


 居心地の良すぎる場所にいると、人間は体が妙にむず痒くなる。好転反応と言うのならばプラスの評価。それを適応障害とならば、マイナスの病だと。あるいは「症」なのだと世の中は言う。「症」は状態のこと。一生付き合うことになる、個体の癖のようなもの。

 母は、神経質で、神経症で、こと細かい人だったの。「質」で済むならば、まだ良かった。

 午後三時、時計の針がやけに遅く進む。時の基準は、一体何を基準にしているのか、那月がそれを知るには、若かった。


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