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君たちはどう生きるか。私は

私は、少し胡散臭さのある自己啓発本とかが苦手だ。高校生ぐらいのときは、自分の意志なんてなかったからそういう本を読み漁ったりもしたけど、たぶんそのときに読んでた本たちがあんまり響かなかったのか、次第に自己啓発本を読まなくなった。

だから、「君たちはどう生きるか」なんてタイトルの本に手を伸ばそうという気にもなれなかった。

ふと家にあったから、なんとなく、暇つぶしに読んでみた。


でも、この本は、そんな暇つぶしで読めるほど簡単な本じゃなかった。


○本の概要○

タイトル「君たちはどう生きるか」

原作:吉野源三郎

漫画:羽賀翔一

吉野源三郎が原作「君たちはどう生きるか」を漫画化。主人公コペル君が、叔父さんとの対話を通して様々なことを思考し、世の真理を発見していく。


○まとめノート○

コペル君は、この広い世の中で「人間は分子」という存在に気づき、叔父さんは、人間は自分を中心に世界の物事を判断していると諭す。

この発見から始まり、二人は全部で7つの発見と思考を繰り返す。



○感想○

7つの思考のうち最も心打たれたのは、偉人の話。

コペル君たちはナポレオンを例に話を進めている。ナポレオンは、貧しい家に育ち境遇はよくなかった。ところが、武装もととのっていない中戦いに勝利。その後も数々の戦いを突破しただけでなく、法律を整え現在までその文化を残している。しかし、次第に権力で世を動かすようになり人民の恨みを買い始めた。ナポレオンが輝いていたのはわずか数年。

まずこの段階で、ナポレオンが偉人と言われる所以を考えてみる。本にもあるが、勇気・決断力・実行力…そういったものだろう。

このとき、コペル君の叔父さんが語りかけたのは

「ナポレオンは、そのすばらしい活動力で、いったい何をなしとげたのか。」

この質問を考えるとき、思い浮かべるべきことも合わせて語っている。

それは、人類の流れ。
何万年にわたる人類の、長い長い歴史。

この悠々とした大きな流れの中で、ナポレオンもまたその中に漂う一人にすぎない。結局、一人の人間がしたことは、その流れとともに生き延びていかない限り亡んでしまう。

ここでナポレオンにもう一度目を向けると、さて偉人とは何か見えてきた気がする。

最後に、叔父さんがあげたエピソードがある。

ナポレオンはとうとう、敵イギリスの囚われの身となった。ずっと無敵に英雄だったナポレオンが捕虜になったのだから、イギリス人からしたら歓喜のこと。港には大勢の見物人がいた。しかしナポレオンはずっと船に閉じこもっていたが、ある日とうとう外に出た。

ずっとナポレオンの姿を待っていた人々は、息を呑んだ。
そして次の瞬間、数万のイギリス人は帽子をとり彼に深い敬意を表した。

ナポレオンは囚われの身となっていながら、少しもみじめな姿を見せず王者の誇りも失わず、堂々と立っていたのだ。
その気魄が、数万人の心をうち頭を下げさせた。


本当に偉人と呼ばれる人は、後世に残す偉業を成し遂げるだけの精神しかない者でも、ただ強い精神があるだけの者でもない。両方を持ち、そしてその両方を一生をかけて貫いていく人なのだ。


この本は、単なる自己啓発ではない。読んだからといって、今すぐ何か行動に移せるわけでもない。
自分の内面に、静かに、深く問いかけてくる本だ。だから読み終えたときの疲労はすさまじいが、思考は止まらなかった。
タイトルでもある問いの答えは、この本には載っていない。しかし、どう生きるか考えるためのヒントは読み取れる。

私は、何を考えてどう生きるか。今の大きなテーマだ。

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