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3:赤い大地の夢

どこまでも続く赤い大地。
乾いた空気。
時折風が吹き、砂埃が舞う。

崖のような高い場所で、私と友達は谷のような場所にある細い道を見張るために一緒にいた。

「私」と言っても私ではない私。
「友達」と言ってもいつもの見知った友達ではない友達。

ここは夢の中。
私の中の私がそう感じている。 

夢の中の私の姿はネイティブアメリカンの少女だ。
年齢は15歳くらいだろうか。幼さが残る顔をしている。
髪の毛はおさげで、目は丸く少し吊り目気味、顔立ちやヘアスタイルは至って素朴な感じだが可愛らしい雰囲気をまとっている。
服は麻だろうか、固い布地の服を着て手には小ぶりの弓矢が握られている。

友達の姿もネイティブアメリカンで、私と同じ年頃の少年だ。
肌は黒いと言うか、赤い。全体的に無骨な姿だけど、笑うと屈託のない笑顔がとてもチャーミング。
私達は同年代で兄弟のように育てられたが、この少年のほうが私より少しだけ年上のようだった。 
手にはやはり弓矢が握られており、更に小さい斧のようなものも彼は持っていた。

私達はお互いに名前を呼ぶのだが、そこはよく聞き取れなかった。
と、いうか上手く頭で理解ができなかったのでそれっぽい名前をつけようと思う。

私の名前は「ナヒマナ」
友達の名前は「イクバヤ」とする。

うまく説明ができないのだが、自分の意識はナヒマナの中に確かにあるのに、なぜか三人称視点で眺めているように感じる(見える)ので、私にはナヒマナとイクバヤの顔や服が見えた。
二人は険しい顔で高い場所から眼下の谷にある細い道を見張っている。

しばらく見ていると、すごいスピードで馬を駈けてくる体格の良い白人男性が現れた。
なにやら野蛮で下品な言葉を発しながら、所々で止まって当たりを見回しニヤつきながら空砲を鳴らしている。
まるで絶対に仕留められる弱い動物の狩りにでもきたような雰囲気だ。

白人が馬で駈けて行くその道は私達の村に続く道のようだった。
私達はその道の見張りを自主的にしにきていたのだ。

「あのスペインの豚野郎、また来たか」
イクバヤが立ち上がりながら低い声で私に言う。
「どうする?村に戻る?それとも、あいつを追うの?」
立ち上がったイクバヤが弓をいじっていたので、私は追うのかと思い質問した。
「すぐに村に戻ろう。今の僕たちの力じゃ何もできない。まずは村の人に伝えなければ。命知らずの勇敢さだけで行動しても生き残れない」

私はイクバヤのこういった考え方がとても好きだ。
勇敢なだけでは…名誉だけでは人は生きてはいけないのだ。
ある人は勇気がない弱虫だとか男のくせに腰抜けだと、イクバヤの事を笑って嘲笑していたが、私にとってイクバヤの慎重さは賢人がもつそれにしか感じられなかった。

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