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その物語と存在に生かされているのね。

きっと本が好きなら。

いや、本に限ったことではなく音楽でも場所でも、自分にとってこれがあったから生きていける。生きてこれた。

そんな眩しいほどのものが、誰にでもあると思うのです。

だからその存在が脅かされることが万が一でもあろうものなら、自分が悪者になってでも守るために戦う。

それほど愛おしいものなのです。


「スロウハイツの神様/辻村深月」

人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ――あの事件から10年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。



脚本、映画、漫画…何かを「作り出す」人、これから「作りだそう」とする人たち。
20代、30代の男女の葛藤と、青春と。

何かを犠牲にして、身を削らなければ人に届く作品を生み出すことは出来ないのか。

そしてそれは、凄いことなのか。まして偉いことなのか。



上巻は、多くの登場人物の自己紹介のようなお話だったのに下巻から、
え?え?と戸惑っている間に一気にミステリーのような展開に引き込まれていきます。

まさかあの会話が伏線になっているなんて…と驚きの連続。

寝る間も惜しいくらい(実際平日なのに夜更かしして読んでしまいました)続きが気になって仕方ない…の嵐でした。

そして下巻の最終章では全く予期せず涙がとめどなく出てきて自分でもびっくりしました。(この作品って泣くものだったの!?と)

世界がぐるっと変わる感覚。

この人に救われていた。は、逆もあるんですね。
知らない間に誰かを救っていたなんて。

本を読むって、楽しいな。面白いなと素直に心から思える作品でした。

きっと読む人によって、そして読む時期によって誰かを応援したくなる。
なんだか肩入れしたくなる。
そんな眩しく感じる人が誰か見つかるはず。

私が一番すきだなと感じたのは少年漫画家を目指す狩野君です。
彼の優しさは、地味だけどとても必要で。
こんな人間になりたいな、と思えるほどです。

今って、生き方や考え方はもちろん人それぞれで、干渉することはあまりよくないのかもしれません。
でもこの作品の人物は、がんがん他人に干渉するし、説教もします。

信頼しあって、勝手かもしれないけど期待している仲間にはそんなこともして良いのかもですね。
なんだかそんな皆の関係が羨ましく感じます。

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本が好きだと、あれも読みたいなこれも読みたいな。と日々思っているのですが。

なんだか今じゃないな。とか
反対にずっと積んでいたのに、今だ!!と何かに突き動かされるように読み始めることがあったりするものです。

この作品も不思議なもので、

ずっと前から気になってはいたのですが、5月のある時ふと
(あれ?なんだか今読む時かな…)と感じた日がありました。

そうして2~3日後の読書会で、この本を紹介された方がいて、
おすすめで読んでほしいので「貸します!読んでください!」と言ってもらえてお借りしました。


すごいタイミング…!と驚きと同時に、
いまきっと自分に必要だから手元にきたのかなぁとちょっぴり縁を感じて。

そしてやっぱり読んで自分にとって大事な大事な作品になりました。

これまた好きな作品「凍りのくじら」と繋がってたのも嬉しいポイント。


相手を感動させ、心を揺さぶることは、きっとできる。
そうやって生きていこう、自分の信じる、優しい世界を完成させよう。


読んでいただき、ありがとうございました。


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