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「夢を叶えること」を夢にしていないか

『俺が…俺が…追っていたのは…ずっと…”夢を叶える”っていう夢だったんだ』

STAND  UP START 第59話より

最近読んでいる漫画『STAND UP START(スタンドアップスタンド)』のワンシーンです。

夢を叶えることが夢にすり替わってします。

読んでいてこの場面では「ドキッ」としました。なぜなら私はリアルタイムで同じことを思っていたところだったからです。
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STAND UP START

『STAND UP START』は集英社のヤングジャンプで現在連載中の起業支援の漫画です。

主人公は投資家の美星太陽(みほしたいよう)。彼が出会う人々を支援していく話です。オムニバスで進み、話ごとの主人公が登場します。話によっては過去の登場した起業家がタッグ組む展開になっています。

冒頭で紹介したセリフは、漫画家を目指していた主人公・岸の話。

52歳の岸は、ほかの漫画家のアシスタントをしながら漫画家の夢を目指しています。25歳の時に、連載を経験したもののそれ以降は鳴かず飛ばず。いつしか生活のため、アシスタント募集で食いつなぐ日々になります。アシスタントをしたほかの漫画家の先生と揉めた際に頭の中で幼少期の自分に「諦めなければ、漫画家になれるでしょ?」といわれ、自分が実は目指していたものが違ったことに気がつくシーンです。

そしてその場にたまたま居合わせたSTAND UP STARTの主人公・太陽に「スタートアップ(起業)しませんか?」と言われ、起業を行う話です。

プライドだけが高くなっていく

幼少期の漫画家を夢見た岸は、『漫画家になる』という夢を見続けました。しかし、いつしか漫画は書かなくなっていたのです。

頭の中にいる幼少期の自分から、「諦めなければ夢は叶うよ!ね?」「漫画家になりたかったんでしょ?」と問いかけられます。

でも52歳の岸は、すでに漫画家へ夢を諦めていたにもかかわらず、現実を見ることなく「夢を叶える夢」を見続けています。

途中、そのことに薄々気がついている自分はいるものの、52歳にしてまともな仕事をしていない(と感じている)自分に劣等感や情けなさを感じてしまい、見てもぬふりをしているように窺えるシーンもでてきます。

「こんな自分は情けない」
「漫画家になれなかった」
「誰からも必要とされていない」

でも、漫画家を夢見ているのであれば、”その途中には居続けられる”と。

”漫画家にならなければいけない”と過去の自分が求めた夢を叶えるために、毎日必死で努力してきたつもりでも敵わず、月日だけが経ってしまった。経験だけは長くなったしまいプライドだけ高くなってしまった状態です。

自分より短い経験で、自分より若い子が自分より結果を出していることにも耐え難い。そんな岸の気持ちが伝わってきます。

”◯◯にならなけらばいけない”という呪縛

岸のように、夢や目標を目指す途中に”◯◯になれなければいけない”に変わってしまった人は意外に少なくないのではないでしょうか。

その一人でもある私の話をします。

私は2019年にwebライターとして開業しました。このとき、文章を書いて生活できるようになることを夢見た瞬間でした。

文章の勉強をしてきたわけでなく、勉強をしながら仕事をしていく日々は子育てをしながらでは大変ではありましたが、楽しくもありました。

しかし、いつしか、”webライターになる”ことが目標になってしまっていました。

”文章を書いて生活したい”。そう思っていたはずなのに、webライターとして稼ぐことに躍起になっていました。

webライターとして認められるように。webライターとして稼げるようにと。

そう気付いたときには、開業をして3年が経っていました。私より若くても私より稼いでいる人はいっぱいいる。歴だけは長くなっているのに、結果がでていない。そんな現状に悩みました。

途中から夢を履き違えてしまうと、どこかで歪みがでてくるのです。

そのことに気がつき、私は自分の好きな文章を書き始めました。報酬も結果もでていない。でも、毎日”文章を書きたい”気持ちが湧き出てきます。

文章を書いて生活をしたい。そう思ったときも自分の好きなことで稼げるようになりたいと思ったからです。 

肩書きは自分を邪魔する

太陽に「起業しないか?」と誘われていた岸は、自分では漫画家という夢が叶わないと心のどこかでは認めながら、夢を諦めないでもいました。

漫画家という肩書きにこだわっていた岸に対して、太陽はこう言います。

「その時やりたいことをやりたい__って思ってたから、だから___昔俺が書いていた将来の夢って”三星太陽”ですもん!」

自分を夢にしていいのか。もしかしたら岸には、いままでも踏み出す機会があったかもしれません。しかし、その一歩を邪魔していたのは、”漫画家”という肩書きだったのではないでしょうか。

ナレッジキュレーターとして活動している山口周さんのVoicyでこんな回があります。

肩書きをつけると境界領域がはっきりするという事。
肩書きに外側と内側があることを覚えておく必要がある

肩書きがあることで、自分が何者なのかを明確にすることはできます。しかしその肩書きが次に進む一歩を邪魔することもある。

肩書きにこだわらずに、自分の好奇心に次々と手を出していく事が可能性を広げることにつながるということです。

岸は”今は”漫画家になれませんでした。しかし、起業した経験やさまざまな経験を経て、また”漫画”を書くかもしれません。

夢を追いかけることが夢になってしまっていると、可能性が広がりません。

私も”私に文章で生きていく”ために、さまざまな可能性を広げていきたいと夢みています。





最後まで読んで頂きありがとうございます!