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【迷8】4年に一度の事だから。

先日、隣町で議員選挙が行われました。
投票率は46%。戦後最低記録を更新しました。

選挙の投票率が下がる原因は、3つあります。
一つは『投票日の天気』です。天気が良いと行楽地に足が伸びます。逆に天気が悪いのもいけません。雨の日は家から出たくないのが人間心理です。天気は曇天の方が良いです。雨が降りそうで降らないのが良いとされています。ちなみに、この日は気温22度の快晴。絶好の行楽日和でした。
もう一つは『候補者が似たりよったりの場合』です。政党も政策も年齢も似たりよったり。こういった場合、組織の強い候補が概ね当選します。前回書き落としましたが「地盤」がしっかりしていれば議員になれます。たとえ雨が降ろうと、お付き合いで一票を投じてくれます。今回も当選した多くの候補は、労働組合や同窓会などの組織がしっかりしていました。
最後の一つは『新住民の存在』です。新しく引っ越してきた人は、その土地をよく知りません。そもそも誰が立候補しようと知ったこっちゃありません。候補者の名前よりご近所さんの名前とゴミの分別法を覚えるので精一杯です。また、新住民にとって全ての立候補者が新人候補です。よほどポリシーが自分と合致しない限り、投票所に足を運ぶことはないです。ちなみに、新住民=無党派層という図式は少し違うと考えます。国政選挙であれば、縁もゆかりもない街に転入しようが影響は少ないです。「与党か野党か」という選択肢に変化がありません。ただ、選挙に関心がないという意味では同じです。

ところで。
肝心の選挙結果ですが、トップ当選はテレビやラジオで活躍しているレポーターでした。2位は地元に本拠地を置くサッカーチームの元選手。知名度が高い候補に票が集まりました。看板で勝った候補者です。学校の生徒会長を決めるような「人気投票」です。それは全ての選挙で同じことが言えます。東京都知事だって、以前はテレビ東京でキャスターを務めた方です。著名人が選挙に立候補してはいけないという決まりはありません。

今回の問題は、そこではありません。
トップ当選をされた人気レポーターは、メディアの取材の中でこう述べておられました。
「これから勉強します」
2位当選だった元サッカー選手も同じように
「1期目は全ての面で精一杯だった。2期目も引き続き頑張りたい」
両者とも、喜びに満ちた顔で堂々と言われていました。

私の個人的心境ですが、どちらも非常に違和感を覚えます。
どの候補も「◯◯市を元気に!」「若い力で◯◯に活力を!」という在り来たりなスローガンを掲げていますが、当選した後に「これから勉強します」というのは強い違和感を覚えてなりません。特にトップ当選であれば一層強く感じます。
2位当選の方も、4年前の初当選の際に同じ事を言っていました。前回は市政初の得票数でのトップ当選。しかし今回は、前回の半分以下の得票しか集まりませんでした。「私が投票しなくても当選するだろう」という候補者にとって一番怖い『安心論』もあったと思いますが、彼の4年間の政治姿勢が有権者に響かなかったんだろうと思います。「一体この人は何をやってきたんだ」という疑問も、票数として現れているんじゃないでしょうか。

当選後に「これから勉強します」という言葉は、どんな規模の選挙でも絶対に言ってはいけないNGワードです。一票を投じてくれた有権者の皆さんに失礼です。多かれ少なかれ必ず「じゃあ何の為に立候補したの?」とツッコミが入ります。こういう発言が結果として、誰に票を入れても世の中は変わらないという『政治や選挙に対する無関心』に繋がっているとも感じます。初めての立候補の時ぐらいは、具体的な目標を一つぐらい準備をするのが大切です。「消費税に反対!」とか「今の政権を変えるべき!」などという地方議会ではどうする事もできない公約ではなく、もっと具体的に「◯◯小学校の通学路に歩道を設ける活動のサポートをしたい」「高すぎる有料ゴミ袋の値段を引き下げる運動を提案したい」という身近な問題を公約に掲げるほうが、次の選挙での有権者の投票行動に繋がると思います。

それらとは逆に、相当な勉強を重ねた上で立候補や立候補寸前までいった方もいます。多くの人が知っているだろう2人のタレントさんです。

一人は素人時代にお笑い番組で人気者となり、その後は俳優として活躍をされた方です。とてもじゃないけど政治の世界とは逆ベクトルにいる方だと思っていました。
しかし、彼には一つのポリシーがありました。それに関して猛勉強を重ね、某選挙に立候補した際は大方の予想に反して当選します。直後には相当な悪口を叩かれていましたが。
議員としての地位から外れた今でも様々なメディアに出演しています。そこで見せる知識量・見解は、ノホホンとお仕事をしている政治家より遥かに上に見えます。初当選時は正面突破の一本槍的な公約・提言でしたが、徐々に訴えるテーマの幅が拡がっていき、今や2人の参議院議員を擁する政党の党首です。政治思考や立ち位置には賛否両論ありますが、俯瞰で見る限りは政治家として凄まじいものがあると感じます。学歴で人を判断するのは宜しくありませんが、とても高校中退とは思えません。

もう一人も芸人さん。大昔に起こった漫才ブームで人気を博した漫才師です。その後はピン芸人となり、主に司会者として活躍されていました。
その彼が司会を務める番組のひとつに、お堅い政治番組がありました。著名で早口なジャーナリストが話題の政治家とサシで討論するという、ヘビーでハイブロウな番組です。当然、目の前で繰り広げられている論戦の内容は、一芸人にとってチンプンカンプンです。しかし彼の隣には、誰もが一目置く大学教授が座っていました。彼は分からない事があると、すかさずその方へ質問をします。同じ関西人である教授は、非常に分かりやすく丁寧に彼に答えを出します。討論を終えたジャーナリストは、必ず司会の彼に「どうだった?今の内容は?」と問い掛けますが、「そうですね。とても重要な問題だと思います」という在り来たりな言葉ではなく、彼なりに考えた事をしっかりと述べていました。これもまた、どこにでもいる芸人さんではないぞと感じました。最終的に、彼は反社会的集団との交流が発覚し芸能界を引退する事になりましたが、それが無ければ「座る椅子」はどうであれ立派なポリシーを持つ政治家になっていたと感じています。彼もまた、一癖も二癖もある人物でしたが。

選挙…特に地方選挙というものは当選してしまえば、何かをしでかさない限り、4年間はそれなりの権威と大金が転がり込んできます。ローカルタレントや元Jリーガーでは考えられないポジション&ギャランティーです。
しかし。首長さんであっても議員さんであっても、地方議会に携わる方々は私達の生活に密着する存在です。しかも、彼らの得る報酬は税金です。
 「その人は当選後に何をやりたいのか」
 「その新人候補者は事前に勉強を重ねた上で立候補しているのか」
 「その現職候補者は4年に1度しか姿を見せない人でないのか」
その3つだけをチェックしてみてください。どの候補者も自分の心に響かない場合は、投票用紙に何も書かなかったり「自分の名前」を書いて投票箱へ入れるのも良いと思います。

「投票率は60%だが、その内の半分が『無効票』だった」

そんな結果でメディアをざわつかせるのも、一種の「意思表示」だと思います。

【参考文献】
・Wikipedia「山本太郎」
・Wikipedia「島田紳助」
・Wikipedia「高坂正堯」
・Wikipedia「サンデープロジェクト」