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女性教員が働きやすい環境へ

年度末は人事異動の季節。2校目となる今の勤務校で働き始めて明日で10年目に入る。9年前の今頃、校長と初めて対面して言われた事は一生忘れない。「あなたみたいな子どもがいる教員はいらない。迷惑だ。なぜもっと長い期間、育児休暇をとって休まないのか。」

私は驚きで声が出なかった。同席していた2名の教頭と事務長に驚きの眼差しを送ったが3人ともタヌキの置物ように黙り込んだままだった。なぜ、私は無給の育児休暇を取ることを強要されているのか。なぜ、私が女性であるというだけで無能扱いされているのか。この人は初対面の私に、何を伝えたいのだろうか。パニック状態のまま、このような人種が今だに日本の教育現場に、しかも校長として君臨している事に驚愕し、落胆し、怒りを覚えた。しかも、この校長とこれから一緒に仕事をして行くのか、という思いが頭をめぐり私は何も言えなかった。そして4月1日に出勤するとその校長は退職しており、新しい校長になっていた。

あの、やり取りはなんだったのか。

9年経った今も、その環境は全く変わっていないと言える。つい先日も同僚の女性の先生は異動先の学校の夜間部で働くことを急に打診され「家庭があるので」と言うと「誰にでも家庭はある」と返されたそう。また、別の女性教員は小さなお子さんがいるのにもかかわらず担任にあてがわれ「今年は修学旅行があるので妊娠はしないように」と言われたそう。そして、それを言ったのがどなたも女性の管理職であることが状況を更に悲劇にしている。

しかし、辛いのはそのような扱いを受けた女性教諭たちがみな「自分が迷惑をかけているので悪い」という態度を少なからずを持っていることである。女性で仕事をしていることは迷惑ではないし、子育てしているのは女性だけではない。しかしそういう当たり前のことに管理職もきっと女性職員も気がついていない。そしてそこに学校側が「自己犠牲をして当たり前」という態度で教員に挑んでくると、女性は「申し訳ない」「私が悪い」「迷惑をかけているのでしょうがない」となり、一気に弱者になる。このパワーバランスが維持されている限り女性教員が働きやすくなることは決してない。

「独身だったら担任でもなんでもするのに」という女性がいるけれど、それも違う。若い先生や独身の先生ばかりが残業をしたり、しんどい部活の顧問をすればいいのでもないからだ。どの先生であっても個人の時間を使う権利がある。しかも今話題になっているように教員の残業は無給だ。もちろん勤務時間を超えても授業準備をしたい人は個人の選択で大いにすれば良いと思う。しかしそれを強要しないで欲しいし、多くの女性教員に「残業できないから迷惑をかけている」と思って欲しくない。

私の知っているママさん先生たちは本当に効率よく働いている。職員室で無駄話をしている先生方をよそに手が止まることはない。朝は5時に起きてお弁当と夕食の支度をしてから出勤する方もいる。ほとんどが昼休みもなくずっと働きっぱなしで、子どもが熱で休んでも次の日にはその分をすぐに取り戻す。中には休日に出勤したり、家で仕事をしたりする方もいるが、みな毎日仕事が終われば保育園や学童にお迎えに走り、夜は家庭のことをしている。そしてまた翌日は同じことの繰り返しだ。

こんなに頑張っている女性教員たちがどうすればもっと働きやすくなるのか、もっと積極的に考えてもいいと思う。どうすれば働きやすくなるかを実践する場があってもいいはずだし、どうすれば勤務を効率的に、少なくても勤務時間内に追われるようにできるか議論があってもいい。「こちらが迷惑をかけて申し訳ない」という態度でいけば波風が立たないのかもしれないけれど、そうでなくてもいいし、そうである必要もないと私は思う。 

女性教諭として今の私ができることは同僚のサポートすること、上記に書いたように考えを周りに伝えること、そして女性が働くことの障害について生徒に話していくことだと今は考えている。

とりあえず、明日は勤務校で10年目に入ったことを祝いたい。よく頑張った私。

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