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切迫早産診断から結局予定日超過。そしてついに誕生の瞬間

 妊娠8ヶ月で切迫早産と診断されたにも関わらず、結局予定日を2週間過ぎても生まれなかった為、誘発分娩になった筆者。
 切迫早産と診断された時の話と誘発分娩の話は以下をご覧ください。

 これを乗り切れば最高に幸せな瞬間が待っていると自分を鼓舞しながらも、野獣の様に数時間叫び続ける筆者。

 本当に自分からこんな声が出ているのかと驚愕する程。叫んだところで痛みが軽減するわけではないけれど、自然と出てしまうのです。

 子宮口は幸い順調に開き続け、お昼過ぎにはもはや痛みはピーク。お尻から生まれるんじゃないかと思う程、お腹よりもお尻らへんが痛い不思議。いきみたくなるけど、子宮口が全開になるまでいきんではいけないみたいようで。ハーー、と息をはいていきみ逃しをしなくてはいけないのですが、自然にいきんでしまいそうになるのです。

 そして促進剤投与から6時間程経った午後3時過ぎ、ついに分娩体勢に。

 子宮口は9cm。破水すれば一気にお産が進むと言われていたのですが、中々破水しないので人工的に破水させてもらいました。すると、気絶しそうな痛みに襲われたのです。

 いよいよ我が子が出てこようとしているのがわかりました。赤ちゃんも苦しみながらも出ようと頑張ってくれている。すでに親子共同作業です。

 1時間程地獄の痛みに耐え、そろそろという頃、先生が入って来て看護師さんや助産師さん達が赤ちゃんを取り上げる準備に入りました。もうすぐこの痛みが終わる。赤ちゃんがこの世界の数センチ手前まで来ている。最後の方は不思議と痛みが少し楽になっていき、叫び狂う程ではなくなっていましたが、その代わりに全力でいきんで赤ちゃんを押し出します。

 息を止め、全ての力を振り絞り、下半身に意識を集中。

 全力で力を入れているせいで、耳はキーンとなり、不思議と助産師さんの声以外何も聞こえないのです。本気で目が飛び出そうな程のいきみを何度も繰り返していると、「もう頭見えてるよー!」と助産師さん。苦しいながらもテンションが上がっている自分がいました。

 気絶しそうだったはずなのに、最後に思いっきり頑張る力が湧いてきました。先生にお腹を押してもらって、「次いきんだら出てくるよ!」との言葉に、初めて希望が生まれます。

「出てこい!!!」と心で叫び、息を止めていきみ、頭が出始めた途端、痛みがふわっと飛んで行きました。
「はい、力抜いて!」と言われ、その瞬間、スルン!!と、つっかえが取れてスッキリする感じがしました。

 自分の足越しに、助産師さんの手の中の小さな頭が見えました。そして、バタバタと動く手足。小さな産声が聞こえました。

 私の死角で、へその緒を切ったり、鼻の羊水を吸うなどの処置が行われた後、助産師さんが筆者に見える様に赤ちゃんを掲げてくれました。

 私の赤ちゃんだ!!
 本当に生まれてきてくれた!!!

 すでに目を開け、初めての世界を戸惑った様に不思議そうに見ながら、手足を元気に動かしていた娘。

 その後娘は一旦綺麗にするために小部屋へ連れて行かれ、筆者は産後の処置をしてもらっていたのですが、不思議なことにその時点ですでに、あの地獄の様な痛みをすっかり忘れていました。傷口の縫合も、胎盤を出す処置も、少しも痛いと思いませんでした。

 その時の筆者は、暖かい雲の中に包まれて天へ放たれたような、これまたこの世のものとは思えない幸福に包まれていました。「神秘的」という言葉の意味を、初めて身をもって理解した瞬間でした。

あとがき

 筆者も現在第2子妊娠中ですが、これから初めての出産を控えている方がもしこの記事を読んでくださったなら、少し怖い気持ちにさせてしまったかもしれません。
 もちろん恐怖を植え付けるつもりで書いた訳でも、偉そうに覚悟を決めさせるために書いた訳でもなく、出産はこの世で1番の痛みと、この世で1番の幸せが隣り合った不思議で神秘的な体験であったと、自身の経験を記録しておきたかったからです。

 筆者は、約4年前のこの出来事を改めてここに書き留めるまで、忘れそうになっていました。なぜなら、よく聞くように、生まれた後の方が大変だからです。初めての育児に追われ、幸せで楽しくはありながら、ことあるごとに悩む日々。そんな中で、出産の日の事はたまに思い返す程度で、我が子が生まれた瞬間の感動、愛おしさ、幸せさを忘れて、つい育児の大変さばかりに目がいき、この大きな幸せな毎日に感謝することを忘れてしまいそうになります。

 2回目の出産を控えている今、あの痛みを知ってしまっているが故に、1回目よりも怖い気持ちが正直なところですが、それと同時に、我が子が生まれるあの瞬間の、言葉で言い表せない幸せな気持ちをもう一度経験できる楽しみがあるのも事実なのです。

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