孤独とアイ②

いつも履いているスニーカーに穴が空いている。案外気に入ってたんだけどなぁと思いつつも、今日は雨が降ってないから履いていこうと思い、紺のラメが付いているスニーカーに足をのばす。今度はよろけなかった。

オレンジのクロスバイクに乗って風を真正面から受ける。時々空を見上げる。雲が時々淡いイチゴのような形をしていて、私の気持ちが温かくなるのを感じる。しかし、その温かさは秒速の速さで消えてしまう。もう、私の中にイチゴはない。熟したイチゴももう少しで食べ頃を迎えそうな若いイチゴも存在しない。私の中には、食べ残してしまった形の悪いイチゴしか存在しない。もしかしたら、ハエがくっついてしまっているかもしれないな。チューチューと赤いイチゴが色味をなくしていくのを観察している私を想像した。
無表情なタイヤを見ていたら、イチゴの雲は分散してしまった。もう雲はない、真っ青な空だった。

ああ、あの人だ。どうしよう、会いたくないけど会いたい。私はどうしてしまったのだろう。糸は途中で無情にもちぎってしまったのに、その糸を再び繋ごうとしている。消えてくれ、私の意識よ消えてくれ。アイを消してくれ。念じるようにあの人の後ろ姿を見てしまった。するとあの人の横に赤いピアスが現れた。綺麗な人だった。鼻がまっすぐで耳の形のキレイな人だ。その小さな赤いピアスが大きく揺れると、彼女の喜びの生命体が大きくなるのをこの距離からでも感じた。誰もいないけど誰かに話しかける。これでも見たくなるってね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?