国会答弁で日銀総裁が「賃金と物価の好循環を確認」したのは嘘であったことを黙示的に認めた

日本銀行(以下、日銀)が、①「賃金と物価の好循環を確認」し、②「2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現できることが見通せる状況に至った」ことを理由にして、長年のマイナス金利政策を解除することを2024年3月19日に決定した。
日本はバブルが崩壊してから30年以上が経つが、この30年以上もの間、一貫して賃金が平均的に下がり続け、デフレと言われる物価も低いままの経済低迷状態が続いた。

日本経済は未だにデフレを脱却できておらず、最近は海外から輸入する石油をはじめとする原料や材料系の価格が高騰したことによる物価上昇により、「賃金や給与は低いまま、物の価格だけは上昇する」というダブルパンチを食らうという最悪な状況になった。
経済学的にはこれを、スタグフレーションという。

このようなさらに最悪な状況となったにも関わらず、日銀総裁は「賃金と物価が好循環した」と言ってのけたのだ。
今回はマイナス金利をゼロに戻した程度であり、相変わらずの中小企業や貧困層に対する締め付け政策は不変なため、経済的悪影響は少ないかもしれない。
だが、マイナス金利解除を契機として、更なる弱者蹂躙政策が出てこないとも限らないため、要注意である。

そんな中、2024年4月10日の国会の財務金融委員会で、原口一博議員による日銀総裁に対する答弁の中で、日銀総裁は大多数の国民の賃金は上昇などしておらず、超大手銀行のみが政府主導による賃金上昇を行ったことを理由にして「賃金と物価の好循環を確認した」ことを黙示的に認めた。


そもそも日本がこの30年間、所得が継続的に下がり続けていることに違和感がある国民は居ないだろう。
大企業や外資系企業で高給を取っているような者でさえも、その地位を失えば年収200万円台や300万円台の派遣社員と成り下がることは常識であった。
日銀総裁や財務省官僚が語る経済の話は、単に専門用語を並べ立てて一般人にわかりにくいように話しているだけだが、日常生活に直結するような誰でもわかる話だ。

30年前は平均所得は600万円程度であったが、現在では400万円を切るまでに下がってしまった。
にもかかわらず、様々な税金が重く課されることによって国民の実質可処分所得は落ち込み、世界一のGDP水準であったのが、今や6位まで転落し、一人当たりに換算すれば30位にも満たない水準にある。
この状況をもって、「賃金と物価の好循環」などは起きていないことなど、明らかだ。
日銀総裁が根拠としている、「賃金が継続的に上昇する好循環に入った」と言う根拠は、政府が超大手金融機関に対して、「今後は年間2%の給与の上昇をしろ」と強制的に命令し、それらの金融機関がそれに従ったからである。
これを「経済的好循環による賃金上昇」と言えるのだろうか?

ほとんど全ての日本人の賃金は上昇していない。
にもかかわらず、日銀総裁が公言するように、日本経済全体が「賃金と物価の好循環」が達成できたことを前提にされてしまった場合、増税の正当化根拠を与えてしまいかねない。
日銀総裁が今回の国会答弁で、賃金が継続的に上昇する経済的好循環に入ったというのは嘘であったことを黙示に認めたわけだが、これを正式に認めさせなければ、更なる増税等によって国民は息の根を止められてしまうのである。

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