書評:フッ素系生理活性物質の開発と応用
読んだ本
石川延男 監修、フッ素系生理活性物質の開発と応用、普及版第1刷、シーエムシー、1999年
分野
フッ素化学、薬学、創薬、含フッ素医薬品
対象
創薬に関する人、有機フッ素化学に関する人
評価
難易度:易 ★★★☆☆ 難
文体:易 ★★★☆☆ 難
内容:悪 ★★★☆☆ 良
総合評価:★★★☆☆
フッ素化学の中でも創薬方面に特化したマニアック本
内容紹介
実用的な立場にたって、現在までに開発され、市場化されているものを中心として、フッ素系生理活性物質の現状を概観する。90年刊「90年代のフッ素系生理活性物質」の普及版。(引用:フッ素系生理活性物質の開発と応用 | 石川延男 |本 | 通販 | Amazon)
感想
フッ素化学に関する書物と言えば、『フッ素の化合物』や『フッ素化学入門2010』などがある。特に後者は手に入れにくいものの、フッ素化学入門としてはこれ以上にない名著である。しかし、前述した2つの書籍はともにフッ素化学の総論的書物であり、例えば有機フッ素化学を勉強したい人にとって、無機フッ素化学の頁は読まずに終わることが多い。一方、当書は有機フッ素化学の中でもさらに細分化された、創薬有機フッ素化学とでもいうべき分野に絞った、とてつもなくマニアックな書籍である。従って、創薬に関連した事項のみ読みたい読者に対してクリーンヒットする書籍である。
特にこの本の特筆すべき点として、含フッ素農薬品に関する内容に多くのページを割いている点にある。どちらかというと、農薬品より医薬品のほうが”王道”なので(個人的見解)、中々含フッ素農薬品について頁を増やしにくいのかもしれない。例えば『フッ素化学入門2010』では含フッ素医薬品に関する項が28頁なのに対して、含フッ素農薬品に関する項は6頁しかないという、”含フッ素農薬差別”とでもいうべき状況である。しかし当書では、含フッ素医薬品に関する項が45頁なのに対して、含フッ素農薬品に関する項は35頁と、和書の中ではかなり多い頁数をさいている。
ここで少し気づいた方もいるかと思うが、創薬関連の頁数を合算すると、『フッ素化学入門2010』が計34頁なのに対して、当書は計80頁となっている。増えてはいるものの、微妙な増加量だ。というのも、実は第1編が含フッ素化合物の合成法について書かれている。私としては、合成法がのっている本などいくらでもあるのだから、せっかくならマニアック本に振り切ってほしかった。もし合成を省いて創薬に全てのページをさいていたら、星4, 5の評価を与えただろう。
購入
もはやどこで、いつ購入したのかは定かではない。現在の中古市場を見る限り、価格は暴落して数百円程度で買えるようだ。創薬フッ素化学に関連した研究をしている人はコスパの観点から絶対買うべきだろう。
参考サイト
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