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書評:フッ素の特性が織りなす分子変換・材料化学


読んだ本

日本化学会 編、フッ素の特性が織りなす分子変換・材料化学、第1版第1刷、化学同人、2024年、200頁、(CSJカレントレビュー, 47).

分野

フッ素化学全般

対象

フッ素化学に関わる全ての人

評価

全体の評価はできない

内容紹介

最先端で高機能性フッ素系材料の創製や、独創的な合成反応の開発を目指して研究を行っている研究者の成果を集め、系統的に紹介した。(引用:フッ素の特性が織りなす分子変換・材料化学 - 株式会社 化学同人 (kagakudojin.co.jp)

感想

 何回も出版予定日が延長され続け、2024年に入ってようやく出版されたので、かなり待ちぼうけを食らったがようやく手に入れることができた。待たされたものの、錚々たる面々が執筆しているため、間違えても文句は言えない。
 さて、内容の評価に関してだが、学術書にはよくあるものの、各章事に著者が異なるので、全体の評価は難しい。とくにカレントレビューは教科書や参考書ではなく総説なので、日本語の総説の記事がまとまって本になっているというイメージである。それ故、各パート事に感想を述べたいと思う。
 Part I「基礎概念と研究現場」では、恒例の”フロントランナーに聞く”のコーナーがある。これは別に読まなくてもいいが、最前線の大御所たちがどのように考えているのかがわかるので少し面白い。続く2章の”研究の歴史と将来展望”に関しては、頁数が少ないものの、フッ素化学史的に価値の高い内容である。これまでもフッ素化学系の教科書に歴史が載っていることはあったが、当書は日本のフッ素化学の歴史に注目しており、このような切り口の記述はあまり見ないので勉強になった。3章”フッ素化学基礎の基礎”では、フッ素化学の教科書に載っているような、基礎概念について記載されている。無機フッ素、含フッ素高分子に関しては専門外なので、有機フッ素化学だけ軽くみてみたが、内容ばかりか文章もどこかの本で見覚えがある気がするのは私だけだろうか。まあ総説書なので基礎理論目的で読むのはおすすめしない。
 PartII「研究最前線」に関しては、フッ素化学の様々な分野の研究が総説として解説されている。名前を見ればわかる通り、その道のプロ達が書き上げたものであり、これを母国語で読めるのは非常にありがたい。また、フッ素化学はどちらかと言えば応用寄りで、理論面はおざなりになりがちである。しかし、第1~4章は”「フッ素の謎」の解明を目指す物理化学”と題されている通り、かなり理論的な記事が記載されている。特に第1章に関しては、フッ素化学の界隈で前々から噂されていたSDA理論について書かれており、個人的にはこの記事があるだけで当書を手に入れざるを得なかった。普段フッ素化学を扱っている人はあまり理論に触れていないだろうから読むのに抵抗を感じるかもしれないが、だまされたと思ってぜひ読んでみてほしい。

購入

関係者から頂いたもの。ただ忖度なしに感想を述べさせていただいた。

参考サイト

  1. フッ素の特性が織りなす分子変換・材料化学 - 株式会社 化学同人 (kagakudojin.co.jp)

  2. 公益社団法人日本化学会 | 日本化学会編集の刊行物 | [CSJカレントレビュー47]フッ素の特性が織りなす分子変換・材料化学 フッ素化学の新たな飛躍に向けて (chemistry.or.jp)

  3. フッ素の特性が織りなす分子変換・材料化学(CSJカレントレビュー:47) | Chem-Station (ケムステ)


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