花とエロティシズム

誰かが言っていた。

誰かが書いていたように思う。

生き物の中で、最もエロティシズムを体現しているのは、花だと。

その理由は、おしべとめしべを恥ずかしげもなく堂々とまろびだしていて、種族を超えて惹きつける馨しい匂いを漂わせている、と。

あまつさえ、その花弁の奥には、甘くて蕩けるような蜜を湛えている、と。

なるほど、と思った。

花が咲くというのは、おしべとめしべを、さあ、どうぞ、とお披露目していること。

なんて素晴らしいのだろう。

この上なく官能的で素敵な生き物だと思った。

物言わぬ代わりに、思いを体現するのは、それが、言葉以上に、相手に伝わるからだろう。

行動の生き物。

表現の生き物なのだろう。

可憐で麗しく、気品溢れる佇まい。

淑やかでたおやかな、風に揺れる姿。

凛として、確固として屹立して、姿勢良く。

なのに、誰よりも官能的で、身体中でエロティシズムを体現している。

そんな存在が、他にあるだろうか。

そんな存在が、他にいるだろうか。


花はそこにいるだけで、空気を変える。

空間そのものを変えてしまう。

安らぎ、落ち着き、穏やか…などもさることながら、官能の世界に、変えてしまう。

それは唯一無二のことなのだと思う。


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