神代も知らず

水平線に沈む夕陽を見たことはあるだろう。

地平線に沈む夕陽を見たこともあるだろう。

ビルの谷間に、屋根の向こうに、煙突の向こうに、沈む夕陽を見たこともあるだろう。

島の向こうに沈む夕陽を見たことはあるだろうか。

この物語は、夕陽が島の向こうに沈む町に住む少年と少女の物語だ。

と…書いて、筆を置いた。

原稿用紙で300を超えている。

ラストの手前。あとほんの少し。

さてと…そろそろ伯父さんが現れるかと思いきや、こんな時に限って現れない。

どうしたものか。

僕はグラスに氷を入れて神の河をグラスに注ぎ、一口だけ飲んだ。

読みたいという人が現れたら幸いだが、そんな奇特な人はいないだろう。

今夜は伯父さんは現れなさそうだ。

僕は筆をなぞり、硯箱を閉じた。

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