迷子の花
迷子とは、道に迷った子供。連れにはぐれた子供。
花は子供ではないけれど、迷子の花がいる。
迷子とは、自分が今何処にいるのか、保護者が今何処にいるのか、分からなくなること。
帰る場所に、行き先に辿り着けない、そんな困難な状況に陥った子供のこと。
だから、迷子になってしまった花もいる。
迷子の花は、ひとりぼっちで泣いている。
そんな花に出逢ったら…
もう、大丈夫だよ、と声をかけようと思う。
今まで、心細かったね、不安だったね、怖かったね、と声をかけようと思う。
涙が止まるまで、泣き止んむまで、しゃくりあげる花の涙が止まるまで、傍に寄り添おうと思う。
もう、心配しなくても大丈夫だからね、と。
どうして、花も迷子になるのだろう。
どうして、大切な人を見失ったのだろう。
どうして、花の傍についていないのだろう。
どうして、花は大切な人と逸れたのだろう。
理由は尋ねない。
迷子になってしまった花に、そんなことは聞けやしない。
泣いている花を、さらに傷つけてしまうことになるから。
ただ、花の気持ちが落ち着くまで、心が穏やかに安らげるようになるまで、傍にいる。
花にとって大切な人が現れたら、良かったね、と言って、花の背中を押してその人のところに。
もう、迷ったりするんじゃないよ、と声をかけよう。
花にとって大切な人には、二度と花の傍から離れないように、と声をかけよう。
花にとって大切な人が現れなかったら、連れて帰ろう。
花が幸せになるよう、花守として慈しもう。
そして、花が二度と迷子にならないように、傍にずっと傍にいよう。
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