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春ごとに 花の盛りはありなめど……、お茶室でも同じ

 先日の茶道のお稽古でのこと。客との問答でお茶杓の銘を、先生に褒められた。
客「お茶杓の作は?」
私「鵬雲斎大宗匠にございます」
客「ご銘は?」
私「古今集の読み人知らずの和歌、
 春ごとに 花の盛りは ありなめど
     あいみんことは いのちなりけり
 の句から取りました、花の盛り、にございます」
 そこへ、お点前を見ていて下さった先生から一言。
「とても、いい銘ですね。よく調べましたね」
 と、とても気に入ってくれた様子。
 なんとかお点前もつまりながらも終えて、お稽古の終わりの挨拶の時のこと。
「カゲロウさん。今日はお点前といい、お茶杓の銘といい、いつもよりも力が入ってましたね。今日は綺麗な女性が多かったからか知ら。だとしたら、問題ね」
 その一言に私は、自分の仮面をいきなり剥がされた様に破顔一笑。たまらず大笑いしてしまった。
「はいっ! ダメですか。わかりやすい性格で、いいと思いますが」
「相手によってお点前の良し悪しが出る様では、まだまだですよ」
「以後、気をつけます」
 とはいっても、こればかりは持って生まれた性分。一朝一夕には。治りはしない。いずれにしろ、今日は綺麗なお弟子さんばかりだ、と喜びを表情に表さない様に気をつけよう。難しいだろうが。
 実際のところ、お点前の方は相も変わらずボロボロだった。お点前は「淡々斎好みの加寿美棚の薄茶のお稽古」だった。甘く見ても流れる様なお点前とは、決して言えない。それなのに先生からお褒めの言葉をいただいたのは、「お茶杓の銘」の出来が良かったからに違いない。
 そう言うことに決めて、次回のお稽古のお茶杓の銘は小野小町の句にしようか、それとも西行法師の句にしようかと、先生の喜ぶお顔を想像しながら、心は踊るのでした。(※写真と本文は関係ありません)

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