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それでも君がいい(Ⅱ)


〇:今から文化祭にうちのクラスがやることを決めたいと思います

河田さんは人前に出るのが苦手らしく、僕が司会をして河田さんは意見を黒板に書いていくことになった。

〇:まず、展示品にするか出し物にするかを決めて、、、

「やっぱメイドカフェっしょ!」

「男子のメイド姿なんて見たくないわ!」

〇:河田さんはなにかやりたいこととかある?
陽:私は特にないかな、、、笑
〇:そっか笑

様々な意見が飛び交った末、、、



〇:えーっと、話し合いの結果、僕らは演劇をすることになりました

ありがちではあるが『ロミオとジュリエット』をやることになった。

ロミオ役はクラスのおちゃらけキャラの子になり、ジュリエット役は小坂さんにやってもらうことにした。

〇:準備とか色々大変だと思うけどみんなでいいものにしましょう!

そう言って話し合いは終わった。

その休み時間。

〇:とりあえず決まってよかったね
陽:うん!
〇:これから忙しくなりそう笑
陽:だね笑



それから僕らは放課後はほぼ毎日残って衣装や小道具を作っていった。

〇:今日はこのくらいでいいかな〜
陽:そーだね!
〇:結構できてきた感ある?
陽:もうほぼ完成だね!
〇:あとはセリフか、、、

出演者たちには既に台本は配っているので、あとは覚えてくれれば大丈夫といったところだ。

〇:まぁ、とりあえず今日は帰りますか
陽:帰ろ〜



あの日から僕らは一緒に帰ることが当たり前になっていた。

特に話すことはないのであまり話はしないが、なぜだか心地良い。

〇:はい、どーぞ
陽:ありがと、、、美味しい!

そして、いつもコンビニで唐揚げを買って2人で食べながら帰る。

側から見たらカップル同然だろう。

そう考える度にあの日の言葉が毎回頭によぎる。

『〇〇くんは勘違いされたくなかった、、、?』

〇:、、、
陽:どーしたの?
〇:いや、なんでも
陽:怪し〜な〜
〇:ほんとになんもないって笑

そんなこんなで最寄りまでやってきて、さよならをする。

〇:じゃあ、また明日ね
陽:え?明日学校行くの?
〇:え?逆に行かないの?
陽:だって明日土曜日だよ?笑
〇:あ、間違えた笑

なんだか河田さんの前だと気が緩んでしまう。

陽:、、、じゃあ、さ
〇:うん?

河田さんが何か言いたそうにモジモジする。

陽:明日、ほんとに会わない?
〇:えっ?
陽:遊ぼうよ!
〇:いいけど、2人で?
陽:〇〇くんが嫌じゃなければ、、、
〇:嫌なんて、そんなわけないっすよ
陽:じゃあ決まり!場所と時間はあとで連絡する!
〇:うん、わかった、じゃあ、また明日
陽:ばいばーい!

河田さんからの誘いとはいえほんとにいいのかという不安も大いにあった。

しかし、断る理由なんてなかった。

なぜなら、僕は河田さんのことが好きだから。



次の日、、、

陽:お待たせ〜
〇:おはよう

僕らはいつもさよならをする最寄り駅で待ち合わせをしていた。

普段は制服姿しか見たことなかったが、私服になると破壊力が半端じゃない。

〇:じゃあ、行こっか
陽:うん!

2人で電車に乗りいつも降りる学校の最寄りでは降りずに一つ先の駅で降りる。

単純にそっちの駅周辺の方が栄えているということもあるが、学校周辺となると友達に会う可能性もあるからだ。



目的の駅に着き2人で歩く。

〇:なんか不思議な感じ
陽:なにが?
〇:普段あんまり来ないところを河田さんと歩いてること
陽:たしかに!

他愛もない話をしながら駅を出る。

〇:あっつ〜

夏真っ只中ということで気温は高く、額に汗が身染み出るほど暑かった。

〇:とりあえずどこ行くんだっけ?

今日は河田さんが行きたいところに行くことになっていた。

陽:じゃあ、まずご飯食べ行こ!
〇:はーい

河田さんが先導してくれるのでついていく。



陽:ここです!

河田さんに連れてこられやって来たのは外観が味のある定食屋さん。

陽:ごめんくださ〜い

「いらっしゃい!」

威勢のいい大将が厨房の中からお出迎えしてくれた。

「好きな席どうぞ〜」

時間的にはお昼時だがお客さんは少なく、僕らは窓際のテーブル席に座ることにした。

「暑い中来てくれてありがとね〜」

物腰の優しそうな女将さんがお冷を運んできてくれた。

「決まったらまた呼んでね」

そう言い女将さんは厨房へ戻って行った。

〇:雰囲気いいお店だね
陽:前に家族で来たことがあって、ここの唐揚げ定食がすごい美味しかったの!だから〇〇くんともう一回食べたくて!
〇:僕と?

その質問は河田さんの耳には届いていなかった。

陽:〇〇くん何にする?
〇:どーしよーかな、河田さん唐揚げ以外に食べたいものある?
陽:うーん、このハンバーグも気になってる
〇:じゃあ、それにしようかな、そしたらハンバーグも食べれるでしょ?
陽:えっ、いいの!?
〇:もちろん
陽:じゃあ、陽菜の唐揚げもあげるね!
〇:ありがと笑、すいませーん

女将さんを呼んで僕らは唐揚げ定食とハンバーグ定食を注文した。

〇:ってか、さっき自分のこと陽菜って言ってたね
陽:うそ!?恥ずかしい、、、
〇:別に変じゃないのに笑
陽:安心すると陽菜って言っちゃうんだよね〜

それって、僕といると安心するってこと?なんて聞けなかった。



「お待ちどおさま〜」

〇:でか!

頼んだ定食が運ばれて来て、まずそのボリュームに驚いた。

〇:河田さん食べきれる?
陽:余裕です!
〇:心配だ、、、笑

「「いただきまーす」」

〇:美味っ!
陽:唐揚げも美味しい!

びっくりするほどの美味しさにかなりのペースで食べ進めてしまう。

〇:あっ、そいえば、はいこれ

そう言ってハンバーグを切り分ける。

〇:食べたいって言ってた
陽:やった〜!

といいつつも河田さんは手をつけない。

〇:食べないの?
陽:、、、あーんして?

上目遣いでおねだりされる。もちろん効果は抜群だ。

〇:あ、あーん
陽:んっ!美味しい!

正直とてつもなく可愛い。

ってかこれ、やってることカップルじゃん?

陽:じゃあ、陽菜の唐揚げあげるね!
〇:う、うん

河田さんは唐揚げをお箸で掴み僕のお皿に乗せた。

〇:ん、ん?

どうやら僕は勝手にあーんし返してくれるものだと思っていたので拍子抜けしてしまった。

陽:ん?どーしたの?あ、もしかして、陽菜が食べさせてくれると思った?
〇:そんなことないです〜
陽:〇〇くん面白いね笑
〇:、、、

内心ムッとしながら唐揚げを頬張る。

〇:美味しい!

その味は想像を遥かに超えていた。



「「ごちそうさまでした」」

かなりボリュームはあったがペロリと平らげお会計をする。

〇:ごちそうさまでした、美味しかったです
陽:美味しかったです!

「ありがとね〜、また来てね〜」

女将さんがお釣りを差し出す。

「また来てくれよ!いい食いっぷりでお似合いのカップルだな!」

厨房の中から大将がニッコニコで爆弾発言をぶっ放した。

〇:、、、ごちそうさまでした、、笑
陽:、、笑

僕らはぎこちなく店を後にした。

陽:カップルだって、、、
〇:ね、、笑



それから僕らはかき氷屋さんに行ったり、近くにある植物園をお散歩したりして自宅の最寄りまで帰ってきた。

〇:今日はありがと、楽しかった
陽:こちらこそ、私の行きたいところばっかでごめんね?
〇:全然!ほんとに楽しかった、また遊ぼうよ
陽:、、、うん!

ぱぁっと河田さんの顔が明るくなった。

〇:じゃあ、また月曜学校で
陽:うん!またね!

僕らはいつも通りそれぞれの道を帰った。



その日の夜、、、

ピロン、

メッセージの着信音が鳴り確認する。

〇:河田さんだ

陽:「今日は楽しかった!また遊ぼうね!」

というメッセージと共に

ピロン、

植物園で一緒に撮った写真が送られて来た。

〇:「こちらこそ、また遊ぼうね」

そう返信して、送られて来た写真を保存した。



つづく。

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