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りんご3個分のぼやき

仲の悪い女子はコンテンツである。

「本当は仲悪いんでしょ?」
「あの人嫌いだわとか女の子ばっかだと本当はあるんじゃないの?」


元バイト先の同僚はほぼ女子だったので、酔っ払ったおじさんによくこんなことを聞かれた。大抵好奇の目を向けながら聞いてくる。同僚は本当にいい人たちしかいなかったので否定しても、「うそだ〜女の子しかいないのに?」と言われてしまう。こんなことを言われた時、私、ほんとにみんなが好きなのに…と心の中で一人メンヘラになりつつもその質問の魂胆は嫌なほどわかっていた。心の黒い部分から湧き出てくる嫌な好奇心がゴシップを欲するからだ。女子の不仲を聞きたいのだ、週刊誌を見て「女子怖〜」と言うように。適当に空いたジョッキを片付けつつ、こんなぬるい会話から逃げ出すことは何度かあった。

割と斜に構えた性格なので考えすぎなのかもしれない。女子ばかりの集まりは確かに修羅と化す場合もあるので質問の意図はわかるのだが、仲が良いと言っても「またまた〜!!」と続く。こういう人たちは性格の悪い女子を成敗するありがちな無料漫画でも愛読しているのだろうか。

自分の好奇心を満たすための道具としてありもしない「女子だけのドロドロした修羅場」をコンテンツとして求めていることに気づき疲弊した。


もう一つエピソードがある。

バイト先でおじさんから体重を聞かれることが多かった。りんご3個分ですと答えるサービス精神も持ち合わせていなければ、見た目と大抵比例する体重を隠す必要性もわからなかったので「大体こんぐらいっすね」と二つ返事で体重を答えていたが、特に会話は広がらなかった。むしろお客さんはつまらなそうな顔をしているのだった。聞いてくる割に話は広げないのかよと毎度思っていたが何回かこのくだりをするうちに気がついた。

もしかして、「ええ〜恥ずかしいから言いたくないですよ〜」「いいじゃん別に、どうせ重くないだから〜」というまるで生産性がない会話を望んでいる…?!

そうか、体重クイズもコンテンツだったのか…!!!!

考えすぎだと言えば考えすぎなのはわかっている。それでも、「えぇ恥ずかしいです」的な戯れになることが多い体重クイズをわざわざ展開してくるのは、それがしたいからなのではないかと勘繰り、思い出すとイライラしてしまう。そもそも見た目で人を評価することがセンスがないし失礼だと思っているのでこの会話は個人的に好きではないのだが。


私が女子修羅と体重クイズのコンテンツが嫌いなのは単にこのつまらないコンテンツに何度も巻き込まれ、「消費される」ことに疲れてしまったからかもしれない。りんご3個分だなんて面白いことが私も言えたら楽なんだろうか。何度も言うが、私が考えすぎなのかもしれない。

どうせ生産性のない会話をするのなら、一番好きなひらがなは何か、とかそういう楽しくて多分誰も嫌な思いをしない会話がしたい。私の一番好きなひらがなは「ゆ」だな、私は「ぬ」かななんていう至極柔らかいキャッチボールがしたい。誰の心も疲弊しないコンテンツである。私が働いていたバイト先はガールズバーではないもののそれに近いものを求めてやってくる人も多かったから、こんな風に消費されることは「仕方がない」ことだったと言われてしまうかもしれない。でも、そういう風に女を消費するコンテンツを振りかざして楽しむことはいかがなものだろうか。

接客業も辞め、酔っ払いのおじさんと関わることもなくなったので備忘録的にりんご3個分の深夜のぼやきを書き留めておく。



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