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今日はたいせつ

昨夜は中々眠れなかった。彼の弟が泊まりに来ていたからだろうと思う。いつもと違う状況だとあまり眠れない。当然、夜中も何度も目覚めて、朝は普通絶対止められない目覚ましも止められてしまったくらい早く起きた。

彼は会社の鍵当番(本当に謎な制度だとつくづく思う)で早く家を出たので、早朝を持て余して、ひとり白湯を飲んでぼーっと過ごした。彼の弟はというと、必修だとかいう授業の開始時間が迫ってきているというのにすうすうと眠っていた。もう3度起こしているけれど起きない。「一度でも欠席したら単位が貰えない。文系とは違うんだよ(出席とかないし必修も4年間で2つしかなかったよ、と言った私に対して)」なんて息巻いて言ってきたくせに、なんだこの眠りっぷりは。法学部は出席がない分テスト100%だったんだよ頭よかったからそれでも余裕で単位とれてたんだよ(大嘘である。実際はめちゃくちゃ頭のいい友達に頼ってきたおかげ)、なんて昨日飲み込んだ言葉を眠っているヤツめがけて心の中で投げた。結局弟はタクシーに乗って大学へ行かなきゃいけないほどぎりぎりまで寝て布団も畳まずに目の前を通り過ぎる新快速みたいにばびゅんと風を起こして家を出て行った。全くだ。

洗濯機を2回回して、弟の寝ていた客用布団も干して、最近ハマっている運動アプリで軽くストレッチなんかをして、午前を過ごした。午後はお昼を食べてソファーに座ったら眠くなってしまって、抗わずにアラームをかけてさっさと寝た。起きたら2時間経っていて、2つもセットしていたアラームは綺麗に止められていた。最近昼寝をしようと思うと平気で数時間は眠ってしまうから怖い。一昨日なんて4時間も寝ていた。なんでこんなに眠ってしまうんだろう。いつも昼寝から起きると心臓の鼓動がすごいことになっている。体全部が心臓みたいにどくんどくん跳ねる。体温もかなり高い。平熱が35.4℃の私からしたら微熱レベルである。とてつもなく喉が渇いて、冷蔵庫を開ける。麦茶の隣にあった牛乳になぜか手が伸びた。飲むと、熱を帯びた口内をキン、と冷やす。2杯目の牛乳を片手に、ベランダを覗く。もう洗濯物も乾いているに違いない。ベランダで洗濯物を入れていると、どこかで風鈴が揺れた。もう、そんな季節か。手荒く洗濯物をベッドに投げ、適当に畳んで、部屋着を脱ぐ。今日は彼と映画デートなのである。18時半に待ち合わせしてるから、もう出ないと遅刻する。のに、まだ着替えも化粧も終わっていない。適当でいいやと思ったのに、久しぶりに外で待ち合わせるデートに心が踊ってついつい力が入ってしまう。

早足で駅に向かい、電車に乗った。話し相手もいないからただ流れていく町を見る。時々町の景色を奪って凄い速度ですれ違う電車にびっくりする。いつも私だけ。皆大人だ。スマホを見ると、母からLINEがきていた。今日が誕生日の母におめでとうと送った返信だった。友達にプレゼントを貰ったりランチに連れていってもらっていたりと幸せそうだった。良かった。私がいなくても大丈夫みたいだ。今からディナーに行くみたいだったから、楽しんでね、と打ってスマホをバッグに閉まった。

母が生まれてなかったら私だって生まれてなかった。母が生まれた日の、わたしのなんでもない日常。今日は大切な日。

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