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Where are you from? [海外編]

"Where are you from?"
"I'm from Japan"

今年はいったい何回この会話を繰り返しただろうか。
一人旅では多くの人と会話をする機会に恵まれるが、
必ずこの会話だけは通ってきた。

この会話をこなした数は、出会いの数といっても過言ではないくらい、
相手を知ったり、仲良くなったりと、人間関係の入り口になる定番中の定番のやり取りだ。

海外に出て、見知らぬ観光客の方とお話する際には必ず聞かれるし、私も聞く、” Where are you from?”
日本で生まれ育った私はもちろん、"I'm from Japan"と答えるのだが、
その先が少しもどかしい。

” Tokyo?”
少しでも日本を知って下さっている方は、次は必ずこう聞いてくれる。
いや、ちょっと違うんよ、近いけど。惜しい。

会話の続きを綴ろう。

"(Are you from) Tokyo?"と聞かれるのに対し、
初期の頃の私の回答は、"No, I'm from Kanagawa prefecture."

正確な単語、文法、情報。だけど何か殺伐としていて面白味がないし、
神奈川を知らない人には何も伝わらない。

日本をさらに知っている方だと、
"OH! So, you are from Yokohama!"と言ってくれるんだけど、
いや、そこもちょっと違うんよ。だいぶ近いけど。

東京都は日本の首都だけあって、知っている方もいるけれど、
神奈川県なんて誰も知らんやんってケースがほとんどだった。
だんだん説明するのを諦めて、"Near Tokyo"などと答えたり、ジョーク的な意味で、"Nothing special to see in my hometown"なんで答えたりする時もあった。
"Near Tokyo"と答えると、地理的に伝わりやすくはあるのだが、自分としてはしっくりこないし、自分の地域に何もないって言ってしまう、自分の地域の魅力を語れない自分に、少しの後ろめたさを感じていた。

それに気づいた時から、私は第一文で相手がなるべくスムーズに私の出身地を理解できるように、
” Actually, I'm from Kanagawa prefecture which is next to Tokyo. It takes 30 minutes to get to Tokyo from my hometown” と、
回答内容をアップデートさせた。
ここまで表現すると、立地の想像はつくみたいだ。
”じゃあ東京で働いているの?”などと会話を広げてくれる人もいる。

フランス出身の方に、”パリから来たの?”
イタリア出身の方に、”ローマから来たの?”
台湾出身の方に、”台北から来たの?”
と聞いてしまうことと同じように、
日本が特別大好き!な方や、一度旅行で渡日された方などは除き、
お互いにとっての他国で出会う場合には、相手は日本のことを知らなくて当然だ。東京を知ってくれているだけ会話がしやすい方だと思う。

それでも初対面の方とこの会話を繰り返す中で、
私は、自分の育った国、地域を、
もっと相手に知ってもらいたいし、それを知ってもらうことで、私のことも知ってもらいたいと感じた。

それは第一に、国際的な場所で自身を表現する際、自分の出身地という情報は、大きな役割を果たしてくれると感じ取ったこと、
第二に、自分は何者なのか、を日本よりもずっと深い意味で問われ続ける国際的な場所でも、誇りと豊富な知識を持って自分の出身地について語れるようになることで、自身を定義づけ、しっかりと存在できるようになりたいという少し抽象的な、でも確かな目標が裏づいていることに気づいた。

自分の育った地域に大きな愛着があるわけでもないし、
日本で観光するなら私の地域に来て!って言えるほどの魅力があるかって言われると、、、
正直なところ知り合いもいないのにわざわざ来るほどの場所ではない。

それでも、
用水路に並ぶ、淡いピンク色に染まっていく、桜並木。
天気のいい日に河川敷から見える、大きな夕焼け空。
葉の落ちきった木々の間から差し込む、あたたかい冬の太陽光。
あとは家から30分ほど歩くと、緑を感じられる公園。
草の匂いや空の広さを全身で感じられる緑の広がるこの公園は、
何度通っても懐かしさを感じる、小さい頃から大好きで、落ち着く場所だ。

メジャーな観光地でもないのに、家を出てものの5分で、四季やちょっとした自然を感じられる私の育った場所は、十分に海外の方に自慢できる、美しい場所のではないかと、考えられるようになった。

河川敷から見える夕焼け空
冬の晴れた空。木々の間から陽が差し込む瞬間。
夏の夕方。多分17:30頃。用水路と並木に囲まれていて、意外と涼しい。

そして何より、自分がそんな美しさを感じられる瞬間とは、実は日常の中に溢れていたのだ。

この景色を美しいと感じられる、この美しさを見つけられる、
そんな私で、これからも居たいと思うし、
まだ次の渡航の予定はないけれど、
私の育った場所の美しい瞬間を、日本を知らない人に共有していくことが、
今から少し楽しみでもある。





Where are you from?
そう聞かれるたびに、自分の地域には何もないと思っていた。

"Where are you from?"
でも、実は何もないことなんてなくて。

"Where are you from?"
出身地を説明するために用いりがちな、
有名な温泉や、農作物の産地、世界遺産のように名高いお城に神社にお寺。
必ずしも、そういったイメージしやすいものを伝えなければいけないわけではないのだ。

"Where are you from?"
"Near Tokyo"
おそらく最もシンプルで、イメージしてもらいやすい回答だろう。
でも私はそれだけではなくて、
これまで自分が見て、触れて、感じてきた、私の日常の中にある美しさを、
こんな場所で私は育ったんだと伝えたい。

"Where are you from?"
だからもう、何もないなんて言わない。

"Where are you from?"
これからは自分のホームタウン、そこで私が感じてきた美しさを、
自信を持って伝えたいと思う。

Where are you from?
これに対する回答は、ただ生まれ育った地名を伝えることだけでなく、
私たちがどんな環境で育ち、どんな瞬間に安らぎを感じ、何を美しいと思ってきたかを、日本をよく知らない他国の方に共有できる一つの機会。
自分の育った場所は、そんな美的感覚の基準となる場所だと私は思う。

"Where are you from?"
この会話を通して、
少なからず自身の人となりを伝えられたり、
育った場所に誇りを持てたり、
自分自身を紐解くきっかけになったり。

そんな意義を持たせられるようになりたいと思う。




"Where are you from?"
あなたの育った場所は、どんなところですか?

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