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にんきものの ひっそりさん

空が高く、おひさまがキラキラと かがやいている。
きょうは とってもいい天気。
そんな日は、町もいっそう にぎやかだ。 
あっちでは魚屋さん、こっちでは八百屋さん、スーパーもコンビニも、たくさんの人が あつまってくる。
がっこうに行く子どもたちも、ようちえんに行く ちいさな子どもたちも、お家やきんじょであそぶ もっとちいさな子どもたちも、みんなげんきいっぱいだ。みんな そとであそんで きゃーきゃーとたのしそう。

しかし、そんな はれた日でも、げんきじゃない人がいる。この町にすむひっそりさんは いつ見ても げんきに見えないんだ。ひっそりさんというのは、いつもひっそりと、しずかにしているおにいさん。家にいるときは、ものおとひとつ立てず、とってもしずか。ときおり町に出てきても、ひっそりさんが なにかしゃべるまでは、だれもひっそりさんが そこにいることに きがつかないほどだ。

なんで ひっそりさんが ひっそりしているか?
それは ちょっとむかしばなしになるんだけれど…

じつは、子どものころの ひっそりさんは、ぜんぜん ひっそりしていなかった。いつでも、どこにいても、みんなにかこまれているほどの にんきものだったんだ。それはもう、すごいにんきで、大人も、子どもも、どうぶつや虫も、みんなひっそりさんが だいすきだったんだ。ひっそりさんのまわりは、いつもとってもにぎやかだった。

ところが、そんなにんきもののひっそりさんを よく思わなかった この町の町長のむすめが、ひっそりさんに あることを言った。それはなんと、

「みんながばいきんをもっていて、そんなにみんなにかこまれていると いまに おまえはひどーいびょうきになって、しんでしまう」

と言ったんだ。
まだ子どもだったひっそりさん、それはそれはこわがった。お母さんや、お父さんが、いくら「みんなげんきだから、ばいきんなんてもってないよ」といっても、こわくてこわくてしかたがなかった。

それからひっそりさんは、ひそひそしはじめたのだ。
ちょっと外に出ただけで、みんながあつまってきてしまうほどの にんきものだったひっそりさんは、にんじゃのようなうごきを できるようにれんしゅうした。けしきとそっくりな色の ふくをきたり、ものかげにかくれながら いどうしたり。いっしょうけんめい れんしゅうしたひっそりさんはどんどん上手になった。

町長のむすめの うわさをきいた人たちは、「なんてことをしたんだ!あのわがままむすめ!」とおこった。そして、さみしがりながらも、ひっそりさんを とおくから 見まもることにしたのだった。だから、ほんとはときどき、ひっそりさんがいるのに きがついているときもある。ひそひそしていても、やっぱりみんなは ひっそりさんがだいすきだから、見つけてしまうんだ。いまでは、町の人たちは、「ひっそりさんがしゃべる前に、ひっそりさんをみつけると その日は 1日いいことがある」と いわれるようになったんだ。


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