なるみ。

日本語教師兼もと介護士です。「介護の日本語会話テキスト」と現場との会話に乖離を感じたの…

なるみ。

日本語教師兼もと介護士です。「介護の日本語会話テキスト」と現場との会話に乖離を感じたので、日本語教師向けに情報発信します。施設数8、介護職員98名、ご利用者様374名とのやりとりをもとに、日本語教育向けに必要な現場情報をまとめました。※注意!「教え方」ではありません。

最近の記事

バイスティックスの7原則「会話例」

はじめに  こちらは日本語教師が外国人介護士さんに資格対策コースなどで指導する際の参考になれば幸いです。バイスティックの7原則をご存じだというテイで実際にあった会話を軽く紹介します。私が現場で体験した会話をもとにあてはめただけですので、あくまでも主観であることをご了承ください。  ただ現場で思ったのは、このバイスティックの7原則を知らないのか理解していないのか全くできない外国人介護士がほとんどでした。たまたま勤務先がそうだったのかもしれませんが、よく日本人職員が「外国人は異

    • みんなの日本語1「介護編」第17課

      ・__ないで ください。 ・__なくても いいです。 場面1 談話室、廊下、食堂などで支払うお金を心配する 【補足】 実際に施設内で利用者様から直接食事代を支払っていただくことはありません。みんなで食事をしたり体操をしたりする時間や職員が多い時間帯はわりと落ち着いていたりしておられますが、人が少なくなったり自分がどこにいたらいいのか分からなくなったり不安になったりしたときにふと食事代の心配をなさることがあります。食事前の準備でスタッフがバタバタしているときもよくあります。

      • 介護の日本語を教える前に~色表現と色を使う場面~

        覚えたほうが便利な色表現 色は8色「赤・青・白・黄・黒・緑・茶・紫」覚えていれば十分だと思います。状況や場面によって使う色がだいたい決まっていますので、各場面ごとに紹介します。施設によっては使う色は異なるかもしれませんが、用途は同じだとお考え下さい。 「あずきいろ」「ねずみいろ」など特殊な表現もあるのでしょうが、現場ではほとんど聞きませんでした。地域性もあるのかもしれませんが、外国人介護士さんがちょっと格好をつけて「介護記録、難しいですよ」「色、たくさんあります。えんじ

        • みんなの日本語1「介護編」第3課

          ・〇〇は/〇〇さんは どこ/どちらですか。 ・これは/それは どこの 〇〇ですか。 場面1 トイレに案内する 【補足】ご自身で歩ける人は自分でトイレに行こうとしてくださいます。施設によって介護士の動きが変わりますが、椅子がガタッと音がした時点ですぐにおそばに行きトイレまで同行するところもあれば、声掛けだけで見守るというところもあります。  毎回「トイレはどこ?」と尋ねる人もいます。「あそこです」「まっすぐいって左ね」など毎回お伝えする会話がどの施設でも毎日あると思います。

        バイスティックスの7原則「会話例」

          自己紹介

           はじめまして。  日本語教師兼もと介護士の「なるみ。」と申します。  日頃は主に課題達成型の日本語教育テキストを使用して定住外国人の授業しておりますので、文型文法積み上げからはしばらく離れております。  ただ現場の会話を分析していくと「みんなの日本語」に沿って分類した方が日本語教師に伝わりやすいと気づき、そうさせていただきました。  日本語教育をおこなっているとテキストのような会話が本当にあるのか知りたくなり、そして介護の日本語を教えていると介護の仕事にも興味がわき、介護

          介護士のできること・できないこと

          はじめに  こちらのNOTEを見つけてくださり、ありがとうございます。  介護の日本語会話練習を実施する上で法を守り、現場でも安心して研修の成果が発揮できるよう研修時の会話導入で気を付けてほしいことがあります。リアルな会話場面を展開しても、それは本当に大丈夫な内容でしょうか。いま一度確認してみてほしいです。    日本語教師兼介護士として両方の視点から感じたことを介護の日本語研修に携わる方用にまとめました。私の経験がいつか巡り巡って介護の世界に良い形でかえってくるのでは?そ

          介護士のできること・できないこと

          介護施設配属前の日本語研修にあるといいな!  ~利用者様とのやりとり編~

          はじめに こちらのNOTEを見つけてくださり、ありがとうございます。  日本語教師兼介護士として両方の視点から感じたことを介護の日本語研修に携わる方用にまとめました。私の経験がいつか巡り巡って介護の世界に良い形でかえってくるのでは?そんな想いから共有いたしました。  「介護の日本語の教え方」ではございません。あくまでも情報共有です。  勤務した施設数は8か所、介助に携わった利用者様374名、お世話になった介護職員の諸先輩方98名とのやりとりをもとに、研修に優先的に盛り込んだ

          介護施設配属前の日本語研修にあるといいな!  ~利用者様とのやりとり編~

          介護施設配属前の日本語研修にあるといいな!  ~職員間のやりとり編~

          はじめに こちらのNOTEを見つけてくださり、ありがとうございます。  日本語教師兼介護士として両方の視点から感じたことを介護の日本語研修に携わる方用にまとめました。私の経験がいつか巡り巡って介護の世界に良い形でかえってくるのでは?そんな想いから共有いたしました。  「介護の日本語の教え方」ではございません。あくまでも情報共有です。  勤務した施設数は8か所、介助に携わった利用者様374名、お世話になった介護職員の諸先輩方98名とのやりとりをもとに、研修に優先的に盛り込んだ

          介護施設配属前の日本語研修にあるといいな!  ~職員間のやりとり編~

          介護の日本語を教える前に~認知症会話~

          1.認知症とは  もともと痴呆症と言われていて、2004年に「認知症」という名称に変更されました。利用者様や一部の職員さんは今でも「痴呆」という言葉を用いることがあります。日本語研修では「認知症」と合わせて「痴呆症」も語彙として入れておいた方がよさそうです。  日本語授業ではクッション言葉があったり、丁寧な言葉を勉強しますが、認知症の利用者様に行動を促したり誘導したりする際、あえて短いフレーズを使います。  「申し訳ないのですができるところまでお願いできますか」「左手で

          介護の日本語を教える前に~認知症会話~

          介護の日本語を教える前に~コミュニケーション~

          1.共感  例えば話者がペットを亡くした話をしているとき、ご本人の話をしっかり聞いていることを伝えるために相槌や頷き、「このように思っているのですね」「~なのですね」と要約したり繰り返したりします。  さらに「それでどう思ったの?」「そのとき何か気になることあった?」などと話を引き出す(話に興味がある、聴いていることがわかる)ように聴くのが「傾聴」です。そして話者(相手)が感じていることをありのままに受け入れ、相手の立場になって感じ、それを伝えていくのが「共感」です。

          介護の日本語を教える前に~コミュニケーション~

          介護の日本語を教える前に~声掛け~

          1.声掛けとその根拠  声掛けをおこなうには必ずその根拠があります。  食後の歯磨き、どうして声掛けを?  なかなか自ら磨こうとする人は少ないです。食堂併設の洗面台があって、そこに口腔ケアセットを置いてあることが多いです。部屋に戻る前に磨いてくれるといいのですが・・・。そのままお部屋へ戻ろうとします。  移動介助が必要なかたはこちらのタイミングで口腔ケアの声掛けをし、誘導します。  口腔内のトラブル予防としてのケアも大事ですが、それ以外の根拠もあります。少しでも食物残

          介護の日本語を教える前に~声掛け~

          介護の日本語を教える前に~語彙~

           介護士として勤務した経験の中で、介護士未経験の日本語教師でも「これを知っていたら教えやすいかも」というものを集めました。 1.介護福祉士とは 【補足】介護施設で働いている介護士さんたちが全員介護福祉士というわけではありません。国家試験に合格し、厚生労働省に登録した人が介護福祉士として名乗れます。  会話テキストでよく目にするのは「介護士」「介護職」「介護職員」「介護スタッフ」など様々です。  現場では介護福祉士という資格のことを「介福」と略して表現する人がほとんどです。

          介護の日本語を教える前に~語彙~

          勤務最初のお仕事

          はじめに  外国人介護士の日本語研修に携わる日本語教師向けの情報共有です。介護の世界は奥が深く幅広いですが、その中でも日本語研修で必要だと感じたもののみピックアップして共有させていただきます。少しでも活用できる内容がありましたら幸いです。 1.利用者様の名前と顔を覚える  1)何度も名前を呼び、特徴や話の内容とともに覚える 【補足】利用者様はご自分の名前を呼ばれると嬉しいです。覚えてくれている、気にかけてくれている、大切にされている、と思うから穏やかな表情をされますし

          勤務最初のお仕事

          みんなの日本語1「介護編」第2課

          ・これ/それ/あれ は 〇〇です。 ・これは なんですか。 ・それは なんの 〇〇ですか。 ・これは だれの ですか。 場面1 居室内の質問「~は・・・ですか」 【補足】ご家族の写真を飾っていることが多いです。認知症の度合いによって症状が異なりますが、写真を見ても「だれ?わかんない」といって写真の説明ができない人もいます。 【実際のイラスト場面】その後すぐにご家族との面会があった日、息子さんの名前を呼んで普通に会話していました。「〇〇、来てくれたんだ~。」「息子ね。」と

          みんなの日本語1「介護編」第2課

          みんなの日本語1「介護編」第1課

          ・わたしは 〇〇です。 ・あなたは 〇〇さんですか。 ・〇〇じゃ ありません。 ・何歳ですか。 はじめに  「みんなの日本語 初級Ⅰ」をお持ちの方でも介護の日本語を教えることができるよう、練習Cを介護の実際の場面に置き換えたようなものだと思っていただけたら使いやすいかと思います。  現場勤務の際にやりとりした実際の会話を盛り込んでいます。  日頃、課題達成型のテキストをメインで使っておりますが、介護現場では初級文型が多く使われており、利用者様にはやさしく伝わりやすい日本語

          みんなの日本語1「介護編」第1課