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『HUNTER×HUNTER』や『呪術廻戦』を読みこなす令和の子供たちは上の世代よりマンガを読む力がある。

 こういうポストがあって、

 このようなリプライがついているんですけれど、

 まったく納得がいかないのでちょっとふれておきます。

 いやいやいやいや、この種の言説を語る人って具体的にどのようなマンガを想定しているのでしょうか。

 たとえばいまも昔も最もメジャーで広く読まれているであろう『少年ジャンプ』の掲載作品を例に挙げるとしても、何をどう考えても往年の『北斗の拳』や『ドラゴンボール』あたりより最近の『HUNTER×HUNTER』や『呪術廻戦』のほうが複雑で難解でしょう。

 『ハンタ』の暗黒大陸編なんかぼくでも一回読んだだけでは完全に頭に入ってこないほどで、あれを初見で完全に理解し把握できる読解力があるなら模試の現代文程度は簡単に高得点が取れるだろうと思ってしまうくらい。

 そもそもマンガは単純でわかりやすいものという認識が幻想というか、古くさいものに過ぎないんじゃないかな。

 ぼくはむしろあれだけわけわからん複雑さの『呪術』が大ヒットしてしまういまの世の中を凄いなあと感心するのだけれど、そこについていけない子供もいるのはむしろ当然で、全員が『ハンタ』や『呪術』を完璧に読み込なせるようだったらむしろ怖いですよ。

 おそらくここで想定されているのはしばしばその説明ゼリフが議論の俎上に上がる『鬼滅の刃』あたりのことなのかもしれないけれど、『鬼滅』にしたって「おかゆ」のように易しい話では全然ありませんからね。

 そもそも登場人物の量がかなりのものだし、名前の読み方なんかも難しい。各人の善悪を初めとする倫理的な問題も、善は善、悪は悪という前提があるとはいえ、その枠を超えた複雑さもある。

 もしこういう作品が「おかゆ」なのだったら昔の少年漫画なんてただの水ですよ、水。

 ぼくはこの手の「いまどきの子供たちは読解力が落ちていてマンガも読めなくなっている」的な物言いははっきりとただの老害言説に過ぎないと思う。

 それが良いことなのかどうかは一概にはいえないにせよ、いまの子供たちは昔とは桁外れに膨大な情報を光速で処理して生活しているだろうに、「昔の子供は賢かった」というのは、単にナルシスティックな自画自賛以上のものではないように感じられます。

 また、こういうリプライもありますが、

 コマを読む順番もふつうはいきなりはわかりません。マンガを読みなれていないことが当然の世代や国の人のところにマンガを持って行って読ませてみたらそのことは歴然とするでしょう。

 「マンガを読むのは簡単なはず」というのは、読むのが簡単なマンガだけを想定しているからいえることです。

 まあ、そもそもこれは「オレの友達の友達がいっていたんだけれど……」レベルの都市伝説的な話と思しいのであえて取り上げる意味もないかもしれないけれど、こういったあたかもいまどきの子供たちの知性が劣化しているかのような言説を見ると頭が痛くなるので、言及しておきます。

 エビデンスとまではいわないから、何か具体的な根拠を示してほしい。

 さらにこんなリプライもついていますが、

 うん、まあ、こちらは言及はよしておきましょう。

 やっぱり偏見のレンズを通してある世代を眺めるべきではないと思います。

 ぼくから見るとおそらくいまの若者たちのほうが上の世代よりよほど正気だし優秀だろうと思えるんだけれど、人は自分たちの世代は賢くて、若者たちはダメになっていっていると思いたがるものなんだろうな。

 ほんとにまったくいまどきの大人は!と思ってしまうアラフィフおっさんのぼくなのでありました。身勝手な「俗流子供論」に「否」を突きつけよう!!!

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