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国内医師の3人に1人が参加するプラットフォームを提供するメドピア株式会社〜医療・介護系企業分析シリーズ⑩〜

11/14に決算発表されたメドピア。決算発表後一気に株価が25%以上上がりましたね!
今回はそんな医療業界のメドピアについて見ていきます!

サマリー:医師を支援し、患者を救うことをミッションとするメドピアでは、製薬企業を主な顧客とした医師会員集合知プラットフォーム事業と、生活習慣改善事業の2つの事業がある。売上、利益は両事業とも伸びており、財務状況も健全である。現状および将来の見通しも良好。いかにこの成長市場の中でアクティブな医師会員のシェアを拡大できるかが鍵。
記事の構成:
1.会社概要
  - 1_a 歴史
  - 1_b 事業内容
  - 1_c 業績推移
2.ドクタープラットフォーム事業の分析
  - 2_a 事業内容と収益モデル
  - 2_b 自社分析(売上・利益、KPI)
  - 2_c 市場分析
  - 2_d 競合と自社ポジションの分析
3.ヘルスケアソリューション事業の分析
  - 3_a 事業内容と収益モデル
  - 3_b 自社分析(売上・利益、KPI)
  - 3_c 市場分析
  - 3_d 競合と自社ポジションの分析
  - 3_e 今後の戦略 
4.簡易財務分析
5.評価
  - 5_a 現状に対する評価
  - 5_b 将来に対する評価
  - 5_c 今後取るべき戦略の提案

1. 会社概要

1_a 歴史
2004年、オンラインの医師向け情報提供サービスを事業目的として創業。2007年に現在も基盤事業となっている医師専用コミュニティサイト「Next Doctors」(現MedPeer)の運用を開始。
その後、様々な機能の追加やや業務提携、サービス拡大などを経て2014年に東証マザーズに上場。
2016年にはMediplat、フィッツプラスの2社を子会社化し、
2018年にはスギホールディングスと業務資本提携契約を締結し、現在に至る。

1_b 事業内容
医師の支援と患者を救うことをミッションとしている。
【ドクタープラットフォーム事業】:医師同士のコミュニティ形成事業
・MedPeer:「医師による」「医師のための」User Generated Contents Media
【ヘルスケアソリューション事業】:生活習慣病予防事業
・first call:医師によるオンライン健康相談サービス
・Diet Plus:管理栄養士による食事トレーニングサービス
・スギサポ(11/12にスギサポ deliリリース):生活習慣改善サービス

1_c 業績推移
【売上】【営業利益率】
FY2016までは単体での決算で、FY2017以降はドクタープラットフォーム事業とヘルスケアソリューション事業を合わせた決算。
ドクタープラットフォーム事業・ヘルスケアソリューション事業ともに売上増加。売上構成費はドクタープラットフォーム事業80%、ヘルスケアソリューション事業20%で前年度から変わらず。
営業利益は今期最高益を達成し、営業利益率はV字回復。ドクタープラットフォーム事業の利益率向上と、ヘルスケアソリューション事業が軌道に乗ってきたのが一番の要因。

2. ドクタープラットフォーム事業の分析

2_a 事業内容と収益モデル
事業内容および収益モデルは以下のようになっている。

2_b 自社分析
売上、営業利益率
売上、営業利益率は共に増加。売上はFY2016→FY2017で+30%、FY2017→FY2018で+40%と大きく成長しており、営業利益率も売上の増加に伴い増加している。一社当たりの契約額が増加しているのではないかと推測。


KPI分析 
製薬会社との関係性の強化により、1人あたりのマネタイズ力(売上÷医師会員数)が増加。
結果として売上は+40%と大きく増加。医師会員数に関しては今期では増加しなかったものの、11月に株式会社プラメドと提携したことにより、12万人に増加したため、今後さらに売上は伸びることが期待できる。

2_c 市場分析
市場規模
現在の市場は、約400億円と推測(エムスリーが350億円、メドピアが18億円)

潜在市場規模
国内で販売している製薬会社が300社、医療機器会社が600社。中でも100億円以上の売上を上げる企業は、製薬会社が100社、医療機器会社が66社。

単価は現在のトップ企業単価9億円がMAXの単価とすると、最大で
(100社+66社)×9憶=1494億円の市場になりえる。
(平成28年度医薬品・医療機器産業実態調査より)


2_d 競合と自社ポジションの分析

医師会員数で競合と比較する。

メドピアは業界3位であり、医師目線のサービスであることが特徴。エムスリーはポイント制度の充実と圧倒的会員数がウリ、日経メディカルは記事が充実している。

3.ヘルスケアソリューション事業の分析

3_a 事業内容と収益モデル
first call
事業内容は以下のようになっている。

マネタイズは以下の2つが主である。
・個人向けのチャット型医療相談サービスで月額課金
・法人向けのオンライン産業医サービスによる月額課金


Diet Plus
事業内容は以下のようになっている。

マネタイズは以下の3つが主である。
・メディアの広告枠
・アプリ上での管理栄養士からのオンラインアドバイス回数券
・オフライン店舗での目的に応じた月額制食事コーディネートプラン


スギサポ
事業内容は以下のようになっている。

マネタイズは以下の二つが主である。
・スギサポdeliの月額制ミールデリバリーサービス
・スギサポプレミアムによる月額制オンライン栄養・健康相談サービス

3_b 自社分析
売上、営業利益
売上は+40%、利益も赤字ではあるが徐々に改善されてきている模様。


3_c 市場分析(2018年3Qより)
市場規模、潜在市場規模
ターゲットセグメントは特定健診に引っかかり、特定保健指導を受ける必要のある方々である。
特定健診と特定保健指導とは、2008年から行われていたが、今年に検診項目が見直しされ、厚労省が力を入れている施策であり、メタボリックシンドロームに着目した検診(特定検診)に引っかかった生活習慣病の発症リスクの高い方を対象に、保健師や管理栄養士などが生活習慣を改善するためのサポートを行うというものである。

市場規模:190億円
潜在市場規模:1,100億円
自社事業の売上が4億円であることを踏まえるとまだまだ成長の余地あり。


3_d 競合と自社ポジションの分析
市場規模が190億円、自社事業売上が4億円なのでシェアは約2.1%である。
競合としてはFiNCやMTI、SMSなど様々な企業が参入し始めているが、未だ圧倒的な勝者はいない印象。ただ、健康保険組合から業務委託されて行うサービスのため、健康保険組合との繋がりが強い企業が優勢になっていくのではないか。

3_e 今後の戦略
シェア拡大の施策として以下の3つの施策を掲げている。
1. IT利活用による保険者/事業所側の負担軽減への注力
2. 重症化支援プログラム連携などによるサービス高度化
3. 管理栄養士採用・育成基盤の構築

4.簡易財務分析

推移を見てみると、財務状況はどれも前年度より改善されており、より健全になってきている。

5.評価

5_a 現状に対する評価
非常に良い。

全体の売上や営業利益率は前年度から大幅に伸びている。また、事業毎に見てもそれぞれで前年度から大幅に伸びている。また、財務状況も前年度から大きく改善されており、より安全性が高まっている。


5_b 将来に対する評価
どちらの事業も大きく成長が期待できる。

ドクタープラットフォーム事業もヘルスケアソリューション事業も潜在市場規模は現状の数倍あり、まだまだ成長の余地は十分ある。

ドクタープラットフォーム事業では現在アンテリオやプラメドとの業務提携を進めており、それにより来年度の会員数や各種サービス充実度は向上すると予想される。今後も更に提携が増えればより期待出来る。また、医師会員数の向上だけでなく、薬剤師会員を集めた新プラットフォームを横展開し、製薬企業に対する価値をさらに高めていく計画だ。

ヘルスケアソリューション事業では3つのサービスを提供しているのでそれぞれ見ていく。いずれも成長が十分期待しうる領域の事業だが、まだまだスタートしたばかりであり、成功確度は未知数。

first call:ドクタープラットフォーム事業の医師会員プラットフォームを上手く生かしており、今後も成長が期待できそう。
Diet Plus:メディア→アプリ→店舗の流れが構築されており、メディアのPV数と各ステップへのCV率(コンバージョン率)が重要になる。
スギサポ:新規に始めた事業であり、スギHDの資金力と保有データ、さらにメドピアの医師、管理栄養士の基盤を生かして大きく成長が期待できそう。
Diet Plusとスギサポについてはアプリがあり、その利用率は非常に重要になってくると考えられる。現状はアプリのUI, UXは改善の余地があるが、すでにエンジニアの採用に力を入れ始めているため、近い将来には改善されていくと予想される。


5_c 今後取るべき戦略の提案
財務状況を見るとかなり自己資本比率は高いが、サービス系の事業が主体なので多額の現金をすぐに必要とすることはないため、もう少しリスクを取ることができると考えられる。借り入れなどを行いレバレッジをかけつつ投資をすると新規事業を含め、各事業の成長速度が加速するのではないだろうか。他社より早い成長によりシェアを奪えるかが鍵。

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