川上草魚

京都で医学生をしながら漫画、TRPGシナリオを描いています。 作品は以下から見られます…

川上草魚

京都で医学生をしながら漫画、TRPGシナリオを描いています。 作品は以下から見られます: pixiv@kaijarisowgyo booth:https://kaijarisowgyo.booth.pm/

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『アンチ・オイディプス』読了

5月と6月の読書記録。 サティの「ナマコの胎児」を聴く。 楽譜が読み物として面白いらしい。ピアノは弾けないけど、いつか買って読んでみたい。 『ゴッドドクター 徳田虎雄』山岡淳一郎小学館、2020年に電子版を販売。 2017年『神になりたかった男』の加筆訂正。 周囲の人物へのインタビューからつくった、徳田虎雄の一代記小説。徳田虎雄は徳洲会病院グループを作った医師で、離島医療や治療費の一時負担など他にない施策を打ち出し国政進出も果たしたが、スキャンダルと病に倒れた波乱万丈の

    • 四月の読書記録 農村医療回顧録『朝もやついて』など

      久しぶりに鴨川でも走ろうかと怠惰なベッドの上で考えつつ、toe(ポストロックバンド)を聴いた。歌よりはるかに饒舌な演奏が、ともすれば呟きのようなことばに質感を与えている。 松島松翠『朝もやついて』佐久総合病院、2016年。 若月俊一のもとで佐久の健康管理システムをつくりあげた陰の功労者、松島松翠の回顧録。 佐久病院史にかかわる他の書物と比べて、個別具体的なエピソードが多いのが特徴。当時の運動体としての佐久病院を、一人称視点から追体験できるよい本だった。 色平哲郎『農村

      • 2,3月の映画記録『市民ケーン』など

        『市民ケーン』オーソン・ウェルズ監督1941年のアメリカ映画。シナリオ術の本で取り上げられており、いつか見ようと思っていたのを、移動先のホテルで鑑賞。 本で大まかなネタバレを既に食らっている状態で見たが、むしろ解説が予め頭に入っていたので見やすかった。新聞王ケーンの生涯を、周囲の人物の証言から多角的に語る。ケーンに唯一真っ向から対立した親友が、老いぼれて小物になっているのが一番悲しいシーンだった。 『THE BATMANーザ・バットマンー』マット・リーブス監督午後の実習が

        • 2,3月の読書記録「堕落論」再読など

          今月は乱読の月だった。 複数の勉強をすることで基礎代謝をあげていれば、単に国試の勉強をだらだらするよりも総勉強量は増えるはずだ。来るべき日にはこのリソースを国試に集中投下することで本業の医学も捗ろうというもの。そのための暖機運転と思う。 『堕落論』坂口安吾(再読)高校時代に読んだ堕落論の再読。 当然と思っていた体制や権威、平和が崩れる時代。冷戦後の核抑止すらぐらつき、ゼレンスキーが第三次大戦を憂う現在、歴史が繰り返されることを僕たちは否応なく痛感する。戦争の存在感が増す中

        『アンチ・オイディプス』読了

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          1月の映画『ムーンライズ・キングダム』等

          『シン・ゴジラ』庵野秀明監督年末年始の休みでやっと鑑賞。言語情報が多い映画だった。ビームで東京を焼き払うところが爽快。人類と環境の負の遺産としてのゴジラに、人々が知恵で立ち向かう様子がリアルで面白い。 『ムーンライズ・キングダム』ウェス・アンダーソン監督離島に暮らす少年少女が閉塞的な環境からの駆け落ちをはかる。左右対称な構図が絵本のようなコミカルさを生んでいる。子供たちが社会のしがらみから自由を勝ち取って意志を完遂する物語に共感した。 『ニンジャ・アサシン』ジェームズ・マ

          1月の映画『ムーンライズ・キングダム』等

          リプレイにはまった年末年始の読書記録

          読書記録の2022年1月分。 去年のnote運用の反省は、映画一本や本一冊に対して記事一本は荷が重すぎるというものだった。今年は月ごと(あるいは数カ月になるかもしれないが)の読書体験や映画体験、ほかあらゆる体験を振り返って感想の出力機会としたい。 ダブルクロスリプレイ最近ダブルクロス(TRPG)のリプレイを読み漁っている。正直こんなに時間を使ってしまっていいのだろうかと思うくらいだ。ひとつ前の版であるDX2ndのリプレイから読み進めていて、去年はダブルクロス・リプレイ(薬王

          リプレイにはまった年末年始の読書記録

          罪と表現と愛

          作品に罪をみること小山田圭吾の過去にまつわる諸問題を耳にした僕の第一の感想は、「彼の曲を嫌いになりたくない」というものだった。そして僕は、「作品に罪はないから」という考えを付け加えた。感情に後付けする理由はしばしば、立証に必要な根拠というよりも正当化のためのスパイスである。本来こういうものに理由なんてない。 小林賢太郎が退任したときも同様の感想だった。小山田を批判して小林を擁護する人が、好みで人を攻撃しているように見えた。作品が好きだから小林を擁護しているんじゃないのか。作

          罪と表現と愛

          母斑症のまとめ

          母斑症とは神経堤細胞の発生異常(異常増殖)由来の腫瘍性疾患である。多くは常染色体優勢(AD)遺伝である。(例外はLouis-Bar症候群:AR遺伝、Bloch-Sulzberger症候群:XD遺伝、Sturge-Weber症候群:非遺伝性、神経皮膚黒色症:非遺伝性) 発生異常のため、神経堤由来の身体のさまざまな部位で症状が出ることが多い。 神経堤由来の身体組織や細胞としては、 ・メラニン細胞 ・末梢神経(感覚神経節、交感神経および消化管の神経細胞) ・シュワン細胞、神経膠

          母斑症のまとめ

          第五肋間鎖骨中線は聴診の僧帽弁/心尖部領域と心電図の茶色の場所の二つの意味をもつ

          第五肋間鎖骨中線は聴診の僧帽弁/心尖部領域と心電図の茶色の場所の二つの意味をもつ

          問題の解決と医療

           医師は苦痛という問題を解決するために働くが、中には治せない人もいる。 結局、苦痛や問題というのは根本的には解決できない。身体の病気を治すための実践や研究が、どれも今一つ僕の心に響かないのは、呼吸や血圧を管理して命が救われたとて、それがどうした、と心のどこかで思っているからだと思う。僕がなおしたいもの、なおしてほしいもの、なおらないものは、風邪や癌や外傷ではなく、それらとともに来るものではないのか。癌を治して、"それ"がどこかへ行くのか。  社会的な問題に目を向ければ、ある

          問題の解決と医療

          映画感想「叫びとささやき」三女・マリーアの変化に見入る

          スウェーデンの映画監督、イングマール・ベルイマン(1918~2007)による1972年の映画。 北欧の森のなかの赤を基調にした屋敷に、上流階級の三姉妹と一人の侍女が暮らしている。病に伏せる二女・アングネスを三人で看病し、看取り、葬儀を行うなかで、四人の孤独や欲求不満、お互いに対する秘めた感情が露出する。 「アンチ・オイディプス」読書会でレジュメを担当することになり、苦心のレジュメを片手に迷宮のレビューを終えると、M氏から映画会をしないかと誘われた。先週もM氏とゴダールの「

          映画感想「叫びとささやき」三女・マリーアの変化に見入る

          呼気性喘鳴と吸気性喘鳴

           一般に、管のある部位が狭窄/閉塞すると、そこを空気が通るときに音が出る。さらに、気道は吸気相/呼気相によって、上気道と下気道が生理的に狭窄する。健常な気道では、呼吸による生理的な狭窄でいちいち音が出るようなことはないが、疾患によって気道が狭窄ないし閉塞すると、その部位が呼吸によってより狭窄したときに異音、すなわち喘鳴が発生することがある。本記事では喘鳴の種類による気道狭窄の鑑別について整理する。 なぜわかりにくいのか 本項目において重要な点は、内腔が陰圧か陽圧かはその部位

          呼気性喘鳴と吸気性喘鳴