したため 3/23

この7年ほど、比較的田舎の地元を離れ東京、大阪という大変都会的な街の中心で営みを送ってきたことで、街での生活が身に馴染み田舎者然としたシティーボーイかぶれの振る舞いが板に付いてきたという自負がある。

ほんの数年前までは、特に東京に住んでいた頃はこの感覚に大変酔い痴れていたものですからトーキョーモンになりきるために都会仕草を見様見真似でこなし、理由もなく夜の新宿、渋谷を練り歩き、飲み屋をはしごしたりして形だけの都会人をこなすことで自分自身に対する認知に自信をもたせようとしていたのだけれども、三十路を目前としたもう若者でもなく、かと言って中年と自称するには些か威厳と鈍感さが不足している年齢になり、ほんの数年前までのこの振る舞いや心持ちが若干恥ずかしくなってきた。近頃はもう緑の少ない街の様相に辟易するようになったし夥しく居るだけの人のうねりに飲まれることを極力避けようと古ぼけた喫茶店を血眼で探すようになった。

スマホもパソコンも捨てて鍬と鋤を持って土塊を弄りながら泥まみれで日々を過ごしたいと切に願う毎日で、老後は山の麓で昼は畑を耕し夕方になると熱い珈琲とズボンのおしりのポッケに入れて持ち運ぶもんでくちゃくちゃになってしまった文庫本の頁をゆっくり1枚1枚めくりながら訪ね来る近所の老若男女に野菜と珈琲を振る舞いつつ歓談して過ごしたいと思うのだが、虫が大の苦手なので住環境が自然すぎるとそれはそれで虫害に悩まされて困りそうだからきっと老後も中途半端に自然がある町に住んでいるのだろうと思う。植樹された木々を見ながらこれも自然と言い聞かせながら。

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