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公務員必読「イノベーションの普及」

コロナに始まりコロナに終わりそうな2020年。「これまでとは異なる暮らし方」を強いられて社会全体がストレスフルな1年となった。そんな中、デジタル化を含む社会全体のイノベーションが期待されるようになったことで、ぼくも、古典と言われる「イノベーションの普及/エベレット・ロジャース」を手にすることにした。

本書で有名なのはイノベーションの採用者をカテゴライズした下記の表だろう。ぼくも、なんとなく知っていたし、この表をベースに新たな技術の普及をモデル化した「キャズム理論」(ジェフリー・ムーアの提唱)のことも知っていた。しかし、このモデルは本書の魅力のごく一部でしかない。

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 *(上図はwikipediaから拝借)
イノベーションを採用する人を、個々人の「革新性」に注目してカテゴライズしたもの。新しいアイデアや技術が次々と採用される(青字)につれ、普及率はいずれ飽和する(黄色)。採用の時期(青字)によって、最も早く取り入れるイノベータ(左端)から最も遅いラガード(右端)までを分類したことにより、分析やターゲティングが容易になった。

本書の素晴らしさは「これまでにない新しいアイデアや技術(イノベーション)を普及させること」の全体像について、明確に定義付けし、また可能な限りその効果を測定し、体系化したことだろう。

自分にとっては、これまで仕事を通じて感じてきたことが言語化がされ、また全体の繋がりが体系化されたことで、自分が「これから何をすべきか」が非常にクリアになったと感じている。

言ってみれば、行政の役割の9割は「イノベーションの普及」なのである。

イノベーションとは、デジタルやロボットなどの技術イノベーションだけではなく、道路や交通といった社会インフラ、医療や福祉といった公共サービス、あるいはSDGsやダイバーシティと言った新たな価値観まで含む。たとえば、行政が喫煙に対する健康被害に着目し、啓発や規制といった手法によって住民の健康が改善されるといったことはイノベーションに他ならない。

つまり行政は、地域の中にあって、その時代の最先端のアイデアや技術を、地域住民のためにいかに深く理解し、そして地域に合った手法で(本書では再発明と定義される)普及させるか、が最重要の役割なんじゃなかろうか。本書でいうところのチェンジ・エージェントやん。いやあ、なんだかもうスッキリ感がハンパないわ。

それにしても、本書は学術書ということもあって難解でわかりづらい。もともと読むスピードがそれほど早くない私ではあるが、それにしたって前半は1時間に20ページくらいしか読み進められなくて(メモを取ったり考え込んだりしちゃって)読み終われるか絶望的な気分になった(少しずつ文体に慣れてきた後半は1時間50ページぐらいまでスピードアップしたが 笑)。無事、読了できて良かった(苦笑)

本書の初版は1962年。新しい知見を採用しながら改訂を重ねたが、著者が亡くなったことで2003年発行の第5版が最終版となっている。

当然、それ以降も社会のあらゆる分野でイノベーションは進んでいるし、普及に関する知見もより広がっている。新しい時代に合った「イノベーションの普及」は、これから自分たちがつくっていかなくてはならないのだなあ。

だからこそ、ああ本を書かなくては、と改めて思う年の瀬なのであるー。

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