カイ書林 Webマガ Vol 15 No3
このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。
【好評発売中】
筒井孝子・東光久・長谷川友美編集:看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.18
梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか? ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17
■2024年度の第7回Choosing Wisely Japanオンライン・レクチャー
Choosing Wisely Japanがめざす健康リテラシー:「対話」から生まれる「信頼」
小泉俊三先生(Choosing Wisely Japan 代表)
4月4日(木)19:30~21:30
Choosing Wisely (賢明な選択)は、医療者と患者が対話を通じて、科学的な裏付け(エビデンス)があり、患者にとって真に必要で、かつ副作用が少ない医療(検査、治療、処置)を「賢明に選択」することを目指す、国際的なキャンペーン活動です。Choosing Wisely Japanは、日本でChoosing Wisely を推進するため、2016年より活動しています。
今回のレクチャーでは、Choosing Wisely Japanがめざす健康リテラシー:「対話」から生まれる「信頼」と題して、Choosing Wisely Japan代表の小泉俊三先生が講演します。この機会にぜひご参加ください。
主催:Choosing Wisely Japan
参加費:1500円
■全国ジェネラリストリポート
総合内科医→集中治療医というキャリア
相山佑樹 大阪大学医学部附属病院 麻酔・ICU 大学院生
集中治療室では、周術期、ECMO管理を要する重症呼吸不全、重症内科疾患、緩和ケアなど、多様なニーズへの対応が求められる。
2013年に大阪市立大学(現大阪公立大学)を卒業し10年が経った。卒後は、“高齢社会で必要とされる集中治療医になりたい”と考え、総合内科研修、麻酔科研修を修了した。現在は地元のICUで貢献したく、大阪大学ICUで研鑽を積んでいる。これまで、各部署で必要とされる診療を選り好みせず取り組んできた。その際に指導頂いたことは、全て僕にとって宝である。最近は、部下に指導する機会も増え、診療をより明確に言語化する必要があり、無知な点に日々気づかされる。
集中治療医は、関わる患者の重症度は総合内科医と異なるが、求められる役割は非常に似ている。多疾患併存病態の患者では、ICU入室理由に加えて、併存病態・合併症・新規イベントを鑑別する必要がある。“臓器横断的に、中立的な立場で鑑別する習慣”は役に立っている。見逃してはいけない・想定外の病態を認識し議論することで、患者アウトカムに加え、主治医の業務負担軽減にも貢献できると信じている。最近、集中治療室退室後の中長期的アウトカム、患者家族のケアを含めた診療が推奨されているが、これは総合診療医の皆様が日々行っている診療そのものである。
総合診療医のキャリアを進む皆様の中で、重症患者ケアに向き合いたいとお考えの先生がおられましたら、いつかご一緒できれば幸いです。
■マンスリー・ジャーナルクラブ
肝線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)におけるレスメチロムの第3相ランダム化比較試験
S.A. Harrison, P. Bedossa, C.D. Guy, et.al. A Phase 3, Randomized, Controlled Trial of Resmetirom in NASH with Liver Fibrosis. N Engl J Med 2024;390:497-509.
西口 翔、 湘南鎌倉総合病院 総合内科
要旨:
背景
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は進行性肝疾患で、治療法は確立されていない。レスメチロムは経口のβ選択性甲状腺ホルモン受容体作動薬で、肝線維化を伴うNASHの治療薬として開発中である。
方法
生検でNASHと診断された成人を対象とした第3相試験を実施中である(肝線維化0[線維化なし]-4[肝硬変]のうちF1B、F2、F3ステージを選択)。無作為にレスメチロム80㎎:100㎎:プラセボを1:1:1:1で患者を割り付けた。主要エンドポイントは、52週目のNASH消失(非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]スコア2点以上の減少)と減少(NAFLDスコア1点以上)とした。
結果
全966例をレスメチロム80mg群322例、100mgレスメチロム群323例、プラセボ群321例に割り付けた。線維症の悪化を伴わないNASH消失はレスメチロム80mg群の25.9%、レスメチロム100㎎群では29.9%、プラセボ群では9.7%であった(プラセボとの比較は各P<0.001)。NAFLDスコア1点以上の改善はレスメチロム80mg群で24.2%、100mg投与群では25.9%、プラセボ群では14.2%であった(プラセボとの比較は各P<0.001)。24週目のLDL値の変化はレスメチロム80mg群で-13.6%、100mg群で-16.3%、プラセボ群で0.1%であった(プラセボとの比較は各P<0.001)。下痢と吐き気はプラセボ群よりもレスメチロム群で頻度が高かった。重篤な有害事象の発生率は各群間で有意差を認めなかった(レスメチロム80mg群で10.9%、100mg群で12.7%、プラセボ群で11.5%)。
結論
レスメチロム80mg投与群と100mg投与群はプラセボ群より、有意にNASHの消失および肝線維化の少なくとも1段階以上の改善を認めた。(マドリガルファーマシューティカル社より助成;MAESTRO-NASH臨床試験NCT03900429番)。
コメント:
NASH治療薬の第3相試験で、多数の患者に対して有効性、安全性、使用法を確認した。今回の研究をもとに国の審査で承認されれば海外で臨床使用されていくだろう。日本消化器病学会・日本肝臓学会のNAFLD/NASH診療ガイドライン2020では運動療法、ビタミンE、2型糖尿病合併のNASHにチアゾリジン誘導体、高血圧合併のNASHにARB、ACE阻害剤の肝線維化抑制の有益性が言及されている。今回の研究を含めNASHの治療選択肢がさらに増え、NASHの早期診断と介入が今後注目されていくと考えられる。
■カイ書林図書館
Coming soon 草場鉄周先生監修「総合診療・家庭医療のエッセンス 第2版」
2012刊行の初版を全面改訂した第2版が、4月末刊行されます。
第2版の特徴は、
①総合診療・家庭医療の基本的な考え方をわかりやすく解説しています。
②医師や患者との対話を通して研修医が成長していく姿を生き生きと伝えています。
③著者の皆様の長年の活動に裏打ちされた理論と実践(Principle & Practice)が読者の理解を助けます。
ご期待ください。
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