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キャラクターに説明セリフを言わせつつキャラの生の台詞を引き出すのが異様に上手い「ZONE OF THE ENDERS ANUBIS」の話

最近、PS2ゲームであるANUBISのムービーをよく見る。

まぁ~上手いのだ。説明セリフがとにかく上手い。

僕も短編小説を書いていた時期があるが、この説明セリフというのはとにかく厄介。

観客に情報を伝達する以上、どうしても説明はしなきゃいけんのだが、説明をすると当然ながら不自然になる。

例えば僕なら

バーのシーンで旧友2人が会話をするシーンで「俺達、高校時代はサッカー部でいいトコまで行ったよな・・・」→「そうだな、全国大会で優勝目前まで行って・・・お前はシュートを外した」→「それは言うなって・・・」

みたいな風に書く。

これ、最悪である。

まず冷静に考えて、こんな台詞は絶対に言わない。だって、この2人が元サッカー部である事はお互いに知っているし、過去の思い出をまるでそこに存在しない赤の他人に説明するようにくどくどまた言うワケが無いのである。

ANUBISはとにかくこの説明セリフがも~上手い。


実はANUBISのセリフの9割は説明セリフ。

何せジャンルはSF。世界観。人物。全てが架空。それらを全て知らない観客に、世界観とキャラクターと物語と目的全部を説明しなきゃいけない。

しかし、この説明セリフに行くまでの流れが本当に上手い。

説明しろ!と主人公が説明を求め、我々観客も説明を求めるというタイミングになると、スッと説明セリフのパートへと移行していく。

それが終わると、またスッとキャラクターが生のセリフを言うダイアログへと戻っていくのだ。

説明セリフを喋るタイミングと、キャラクターに自由にセリフを言わせるシーン。それを的確に切り替えている。

それがとにかく「上手いなぁ・・・」となるのだ。

特にキャラクターが生のセリフを喋っている事で活きているシーンといえばはいだらー!のシーン

目的を質問する主人公。

主人公の事を単なる採掘工じゃないと返答する彼女。

そこを通せ!・・・とここまでなら普通のセリフ。

でもここで彼女は「はいだらー!」である。

彼女はこれから殺そうとする相手との対話など無視して、自分を奮い立たせる意味の無い言葉を叫ぶ。

ここに彼女の臆病さが発露しているし、そもそもこれから殺そうという敵と対話をする意味など無い。自分を鼓舞する言葉を放って戦闘開始!ここのリアリティに感銘を受けた。

つまり生のセリフは必要なのである。作家はキャラクターから言葉を出さなければならない。生の本物の言葉だ。でもその一方で観客がいる以上、説明しなければ物語が伝わらない。

このバランス感覚が本当に難しいのだ。僕が小説っていう概念に挫折してしまったポイントの大きな1つでもある。だからこそ、ANUBISの説明セリフの上手さにはとにかくシビレているのである。

と、こんな感じで最近はANUBISのムービー集を見っぱなしだ。(もちろんSteam版は買っている)

説明セリフ。キャラクターの生のセリフ。それらを的確に切り替える技法。それらの教科書のような作品。ANUBISの「説明セリフの効能・タイミング」の超絶技巧を体感して欲しい。


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