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初めて裁判傍聴をした話と、裁判傍聴のススメ


1.はじめに

日本で行われる裁判って基本的にはオープンなもので、誰でも見に行けるという事は知ってる人も多いかと思います。かくいう私も高校の授業かなんかでその話を聞いて、いずれ行ってみたいなぁと思いつつ機会もなくて行けてませんでした。
ただ、重い腰を上げてというわけでもないですが、「学生で長期休暇があるうちに行かないと本当に行く機会がなくなってしまう」と思い立ち、東京地方/高等裁判所に傍聴に行ってきました。

霞ヶ関にある東京地方/高等裁判所



まず感想を簡単に述べるなら、(この表現が適切かはわからないけれど)とても面白かったです。自分の人生を豊かにしてくれるものがあったと思いますし、また時間を見つけて訪れたいなと思いました。

そんな傍聴の中でも印象に残った3つを記録として残しつつ、これから行ってみたいという人へのアドバイス的なものができたらなと思ってます。
前半のレポ部分がいらないよって人は裁判傍聴のススメまで飛ばしてもらって大丈夫です。

2.印象に残った公判

①再犯を繰り返す覚せい剤取締法違反者

被告人は50代男性で、(おそらく)20代のころに交通事故を起こし有罪判決を受けたようで、そのトラウマから逃げようと覚せい剤に手を出し常習、八度目の公判ということだったみたいです。
まぁそれだけ聞いたらただ単にクスリ止められない常習犯って話なんですが、ちょっと心を打たれたというか心に残るものがあったので書き留めておきます。

もともと、私は朝に行われたこの公判を目当てに今回裁判所に行きました。というのもこれが第一回の公判という事だったのですが、「薬物系の第一回はわかりやすくてよい」という話を事前に聞いていたからです。

それで心に残った理由というのが、「薬物依存から抜け出すことの難しさ」と、「支えてくれる周りの存在がいかに大切か」という事を強く感じたからです。

前者に関しては言うまでもないかもしれませんが、おそらく覚せい剤周りだけで7回もの公判になっているという事に加え、今回のこの公判は前回の服役およそ4年を満期で終了した後二か月足らずでの再犯ということが恐ろしい話だと思います。見た感じの印象にはなりますが、この方は依存症に苦しんでいるというわけではなさそうだったんですが、一度現実から逃げる方法として使ってしまうと繰り返すことになってしまうのでしょう。薬物依存症の恐ろしさは何度も受けたセミナーのようなもので理解していましたが、これほどまでとは思いませんでした。被告の方は次の出所後からは病院のカウンセリングを受けることも検討してるようです。そこまでしないと難しいんだという恐ろしさを改めて感じました。

そして、特に心に残ったのが後者の方です。この公判では情状証人(情状酌量の余地があるんだという事を話に来る友人や家族といった感じのようです)として被告の友人がいらっしゃってました。詳細書き出すとキリがないので軽くだけなんですが、「住むあてもなさそうだったので家に住まわせてあげていた。自分の方から仕事を斡旋することもできたが、それは本人に押し付けることになってしまうのであくまで本人に自由にさせていた。もちろんこいつが悪いことをしたことに間違いはないが、自分ももっと何かしてあげられれば」という旨のことを話されてました。ここまでしてくれる素敵なご友人だなと思ってたのですが、それに対しての最後の被告人からの言葉が忘れられません。

「これまでこうして誰かが情状証人に来てくれたことは一度もなかったし、出所時に迎えに来てくれた人がいたのも前回の時が初めてだった。こんなにも頼れる友人がいたことに初めて気づいたし、次に出てきたときにはもっと頼っていきたい。本当に申し訳ないことをした」(意訳)

薬物依存から抜け出すのは本人の意思ももちろん必要です。けれど、それと同じくらい周りに支えてくれる人間がいるかどうかという点が大切なんだなと思いました。
常習性もあり短期間での再犯、きっと罪は重たいものとなるでしょう。前回の4年弱という年月についても長いと思いますし、それによって被告の方はコロナ渦というものを体感せずだったそうです。加えて年齢も高い方だったので仕事が見つからずまた薬物に、とのことでした。
私は偶然その公判を目にしたものにしかすぎません。ただ、被告の方の未来にどうか光があることを望んでいます。

②裁判員制度の裁判での判決と、被告人の家族

裁判員制度、知っている方も多いと思います。ランダムに選ばれた条件を満たしている国民たちが刑事裁判に参加するというものです。私も選ばれたらぜひとは思っていますが、この制度の適応をなされた裁判の判決の公判を見てきました。

事件自体はかなり重たいもので、要約すると以下の通りです:
・被告人(20代に見えた)は闇バイトで検索したどり着いた闇バイトで(おそらく)国外のリーダー格からの指示で複数の人による集団で2軒の住宅に宅配員を装い侵入、居住者に暴行を加え金銭などを強奪、ほか空き家1軒に侵入・窃盗
・負わせた傷は全治2週間の打撲程度のものから、レンチで後頭部を強打し重度の後遺症を残したものまでさまざま
・強奪された金銭及び金品は時価でおよそ5000~6000万円にのぼる

これに対しての判決は以下の通りでした:
・検察側からの要求刑は懲役25年で、内容としてはそれに相当するものだった(集団の中でも準リーダー格であり罪は重ためだそう)
・しかし一部とはいえ金銭の返却を行っていること、多少であれど反省の意が見えること、すべての公判を見届けに来てくれていた両親及び姉がおり社会復帰時の教育はしっかりと行えそうなことなどを考慮し、最終的な裁判所の判断は懲役20年の実刑判決

重たい事件だなぁ、と思って聞いていたのですが、その後裁判員たちからのコメント的なものがありました。細かくまで覚えていませんが、最後に口にされた「いずれ社会に復帰した時は、無事社会に戻れましたと報告をしてくださいね」(意訳)という言葉が印象的でした。裁判員制度ってそういうこともするんだなぁ、と新しい一面を知ることができました。
そして、裁判員制度適応の裁判は詳しくない人間がかかわることもあり全体的に説明が丁寧でわかりやすかったです。

そして判決の言い渡しも終わり閉廷となった後の出来事が、私の脳裏に深く刻まれています。
閉廷後、力なくどこか虚ろに写った目でじっと家族の方を見つめる被告人。
手錠をかけられ連れていかれる被告人に対し「○○、頑張れよ」と力強く声をかけ、同じく法廷に訪れていた被害を受けた方及びその親族と思われる方に「この度は本当にすみません」と頭を下げられていた父親。
嗚咽しながら涙をハンカチで拭き、法廷を後にする母親と姉。
この時の感情を私はどう言い表せばいいのか分かりません。なんというか、まるでドラマでも見ているかのようなことが現実でも起きるんだという非現実感のようなものに包まれていました。
その何と言っていいかわからない感情とともに、とても忘れられない光景となって深く記憶に残っています。

③ドロドロとした人間関係の見えてくる民事裁判

これまであげた二つはどっちも刑事裁判といって法を犯した人を裁くものでしたが、こっちは人と人(ないし会社や国、自治体など)同士での問題の解決を行う方です。多分あってるはず。
ちょうど見ていた証人尋問の公判は、何ともドロッとしたものでした。
中華圏から来られ日本で暮らす(帰化されてるのかも?)女性AとBの間での問題のようでした。AさんとCさんは結婚していたものの、BさんとCさんが仲良くなり云々…といったいわゆるな問題ではあったものの、なんというか人間関係って本当に怖いなと思うような内容でした。
これに関しては意訳での説明も難しいのであれなんですが、民事裁判の恐ろしいところを垣間見たような気がしています。刑事裁判に比べ分かりにくいところはあるんですが、こちらも聞いていて興味深いものだなと思った公判でした。ただ、こうやって文章に起こすには向いてないな…


他にもいろいろ見たので恐らく10は超える公判を見てきました。どの件も非日常の話で新しい見分になりましたが、特にこの3つが印象に残っています。
後は細かいんですが、海外出身の方で日本語が十分でない人が対象となる公判だと同時通訳がついているところも見られて「そりゃ当たり前なんだけどちゃんとしてるんだなぁ」と謎に感心したりなどもしました。

3.裁判傍聴のススメ

さて、裁判の傍聴は人生観を広げるし非常に面白いものだというのは冒頭でも書いたので、同じように見に行ってみようかなと思っている方に知識0から行った私から何点か「裁判傍聴のススメ」として挙げられればなと思っています。
なお今回は言った場所の関係上東京地方/高等裁判所での知識のみで語ってます。地方によっては違うとかあるかもしれませんがあしからず。
あと今回一回行っただけの印象なので実際と違うこといってるかもしれません。ゆるして。

・服装と持ち物

服装はラフなもので大丈夫だと思います。私は今回白パーカーにジーパンという非常にラフな格好で行きましたが別に怒られたりとかなかったので大丈夫です。当たり前ですがスーツ姿の人も多いですが気にしなくてヨシ。
持ち物に関してですが筆記用具と小さなメモ帳があると便利だと思います。というのも使い方は後述しますがどんな公判が具体的に行われているのかというのを確認する術は入り口付近にあるタブレットからのみで、それも撮影禁止ですしそもそも法廷内ではスマホの電源を切っておく必要があります。なので、「何時からのこれが気になるなぁ」というのを事前にある程度メモしておいて行く方が効率的に見ることができると思います。というか東京のはでかいからいちいちエレベーターで一階戻ってとかやってられません

・ルールとか

まぁ細かくは実際に行ってもらえば各法廷の前に「傍聴についての注意書き」的なものがあると思うのでそちらを見てもらえばいいと思いますが、重要っぽいことだけいくつか。
まずスマホやカメラ、録音機等は使うことができません。なので中で起きた出来事を記録したい場合はメモ用紙に手書きすることになります。まぁ法学部の学生とかでもない限りメモする内容そんなにあんのかって思わなくもないですけど
後は各裁判につき2回起立を求められます。始まる前に裁判官が入場してきたときと、公判終了時(閉廷時)の2回です。ただこちらも基本的には「ご起立願います」等アナウンスがあるので大丈夫だと思います。なぁにほかに人がいるなら合わせておけばいい

・どれを見るのがいい?

いろいろ見ててわかりやすいなぁって思ったのは刑事裁判の判決言い渡しです。事件の概要から判決の年数がなぜこうなったのかの詳細な理由までを説明してくれるので、どんな事件があってこのくらいの刑罰が下されるんだな、というのがすぐわかっていいです。あと時間も短めで15分とか。
あとは刑事裁判の「新件」というやつです。事件内容の確認、被告人質問、(あれば)情状証人などが見られていわゆる裁判っぽさがありわかりやすさがありました。検察からの求刑はこのくらいを求めますみたいなのはあったかちょっと記憶が怪しいですが…。
また、特に刑事裁判は裁判員制度が適応されているものはより説明を易しくしてくれることもありわかりやすかったです。ただ、普通のものより時間は長くかかります。
民事裁判の方だと証人尋問的なのがお互いの言い分を言っていく感じがあってわかりやすい感じはありました。ただ民事は人と人との解決っていうのもあって複雑な感じを受けました。というか分かりやすさだけでいうと民事よくわかんにゃいってなりますのでいまいちまであるかも

逆におすすめできない…とまではいいませんがあんまりかも?なのは刑事裁判の「審理」と民事の第一回及び判決です。
前者は多分進捗確認みたいなやつなのかな?時間も長くないのでサクッとは見れますが何か大きく動いたりというのはなさそうな感じがしました。裁判時間かかるんだなーっていう実感は得れましたけれどね。
後者の民事の方はそもそも民事自体「分かりやすさ」には欠けるなぁと思いました。なので見るならさっき上げた尋問的なやつでしょうか。こっちの判決言い渡しはなんか被告っぽい人いなかったりなんだりあってちょっとわかりにくかったです。懲役何年!とか出るわけでもないので…。
ちなみに第一回はいまいちらしいのはネットの拾った知識ですが実際どうなんですかね

・どこで裁判の内容確認できるの?

入り口にタブレットがあるのでそこから見れます。
地裁刑事事件、地裁民事事件などと分類されているのでそこから詳細検索していくだけです。個人的におすすめなのは「開廷時間・審理予定」というタブでの検索で、時間と内容で検索ができます。例えば判決言い渡し見たいなーって思ったら「判決」のところにチェック入れて検索すればOKです。
…まぁ実際こう説明しても理解は難しいとは思うんですが館内写真NGなので写真使って説明とかできないんですよね。詳しくは現地に行ってみてくれ!(投げやり)

4.おわりに

ようやく足を運ぶことができた裁判の傍聴でしたが、かなり興味深いものでしたし自分の人生観や知見が広がったと感じました。
あと意外だったのは、自分と同じくらいに見える20代前半の人たちもそこそこいました。数人で来て「どれ見ようかー」などと話してる姿が見えて、そういう楽しみ方(という表現が適切かはさておき)もあるのだなぁと思いました。
余談ですが私はその後献血をして帰りました。もう5回目らしいです。めちゃくちゃ簡単にできる社会貢献なのでみんなも献血しよう!

さて、やや話がそれましたが、一度は体験として行っておくといいんじゃないかな?と個人的には思います。平日限定だったりで難しいところもあるかもしれませんが、是非行ってみてください。
そして、このnoteがそういう人たちの何か役に立てたのであれば幸いです。


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